抱きつき拒否
達哉の体調が戻り2人で駅前まで買い物に来ていた。
今度、春菜の誕生日があるから一緒に選んで欲しい!という名目で、本当は達哉が選んだ物を渡すつもりだ。
「何が良いかな?春菜髪の毛伸びてきてるしヘア系……って、どうしたの?」
「あれ……」
立ち止まる達哉の視線の先を見ると、壮真が立っていた。
そしてその傍らには以前見た女性が、壮真と腕を組んで歩いている。
壮真の表情は見えないけど女性は楽しそうに笑っている。
何より壮真が拒否しないのが光希にとってショック以外の何物でもない。
前は自分達を優先してくれた。なのに今は……と以前壮真が言っていた言葉を思い出す。
「人は変わる……」
「光希?」
「壮真くん、人は変わるって……私たちも変わってくって……そうなの?」
3人の関係は変わりたくなんてないのに、今と昔を比べると随分と変わっていってしまっている。
違うと言って欲しいのに、達哉は無言のまま光希の頭をポンポンと撫でるだけだ。
その役目だって以前は壮真だった。
自分が目を逸らしているうちに皆がどんどん離れていってしまう。
「今日はもう帰ろう」
落ち込む光希は力なく頷き、何の目的も達成出来ないままトボトボと帰っていった。
***
***
そんな日から1週間。
持ち前の明るさのお陰か、悩んでいてもしょうがない!と意欲を沸かす。
気合いを入れて夕方の練習をこなし、1人で帰ってきた時、黒川家玄関に壮真がいることに気が付いた。
パッと表情を輝かせ近寄る。
ついでに……と、駅前で見た女性のように腕に抱き付こうとする。
気が付かないように背後から忍び寄っていたのに、物凄い形相で振り返られビクッと肩を震わせる。
「お前……今何をしようとした」
警戒するようにジリジリと距離を取り、ゆっくりと声を出す壮真の口調は鋭く冷たい。
「腕に……抱き付こうと……」
「下らねぇことやってねぇで、とっとと帰れ」
「下らなくなんてないもん……この間は女の人にさせてたのに!」
女性は良かったのに、こうもあからさまに拒否されてしまうと目に涙が浮かんでくる。
「アイツとお前は違う。お前はダメだ」
「どうして?……あの人が、好きなの……?」
長年の片想いの終止符はこんな所で終わってしまうのか。
そう思いながら聞くと、壮真は首を横に振った。
「違う」
そして苦悩の表情を見せ、ため息を吐いて光希の頭をがしりと掴んだ。
「考えなしの能天気。いつまでも俺を気にするお人好しが。ガキの癖にませやがって」
「なんで急に悪口!?」
「うるせぇ。俺の邪魔ばかりしやがって目障りなんだよ。少しはその無い脳みそ働かせろよ」
「邪魔なんてしてない!」
「はぁ!?好きだ心配しろだの、どう見ても邪魔してんだろ!?」
「こ、告白が邪魔なの……?」
「ああ、邪魔でしかないな」
苦悩した表情で吐き捨てるように言った壮真は光希から手を離す。
腕組みをして睨む壮真に何か言い返したいけど言い返せない。
「だって、壮真くんが好きだもん。大好きなの……」
「……もしかして修羅場?」
「っ!」
素直な気持ちだけでも伝えたい……と告げていると、駅前で見た女性が怪訝な表情で立っていた。
女性は壮真と同じ高校の制服を着ていて、恐らく同い年だと思われた。
そんな人に告白を聞かれてしまった。しかも腕を組むことを許されている相手に。
グルグルと嫌な気持ちが湧いてくる。
何か言いたげな女性と、不機嫌そうにしている壮真に何の挨拶もせず飛び出す。
そのまま目の前の自宅に入り、バタバタと自分の部屋に閉じこもった。
壮真は光希が去った方向をじっと眺める。
女性はそんな壮真に苦笑いをして、大丈夫?と問い掛けた。
「限界かもな」
「それはどっちが?」
「両方だ」
腕組みをしながら難しい表情をしている壮真は、ずっと光希の家を眺めていた。




