39.決意
「みんな!深海の悪魔に深追いは禁物よ!
一定の距離を保って場所の探索を始めてちょうだい!」
「ヤツのことはいいのか?」
「いいわけないわ。でも、それでも私達にはやらなければならないことがある。
そして、それは彼の意志でもあるわ。」
「そうか。」
深海の悪魔は既にこの海域から姿を消そうとしていた。
「そろそろ聞いてもいいか?お前らは何を探しているんだ?」
「そういえば言ってなかったわね。私たちは初代様の残したと言われる手記を探しているわ。」
「そんなものがわざわざ海に隠されてるってのか?」
「一族に伝承として残っていてね。曰くそれを見つけるのは彼からの試験のようなものよ。
何が書かれているのかわからない。場所のヒントもないわ。
今の一族の力でできる探査はすべてやってきたつもり。
それでも見つからないというのは、特定の条件下でしか辿り着けないような場所にあると考えられる。」
「それが深海の悪魔の出現というわけか?」
「ええ。初代様の時代には魔法があった。
どういう手段で深海の悪魔を掻い潜ったのかはわからないけど。
悪魔の海流操作によってこの海域に特異な地形変化が起きてるはず。」
暫くして探査隊より未知の洞窟の発見の報告が入る。
「よくやったわ!目的の場所はそれほど大きくないようね。
人数を絞って中に入るわ。残りは周辺の警戒を。何人かでキースの探索を行ってちょうだい。
護衛としてあなた達3人にも来てもらうわ。」
一行が向かった先は洞窟というより洞穴といった感じでかなり小さかった。
その中にポツンと箱が置かれていた。
「やってくれたわね。こんなに小さな場所なんて。
恐らく魔法的な偽装も施してあっただろうし。道理で見つからなかったわけね。」
周りの者は周囲を警戒しつつカルアの行動を見守った。
カルアは箱を開けると一冊の手記を取り出して目を通していく。
「言ってくれるじゃないの。ほんとに。ほんとうに。。。」
涙を流しながらカルアは手記を読み続けた。
そんななかディオとシバが後方から気配を感じて振り返り構えると、3兄弟に支えられたキースが姿を現す。
「てめえ、生きてやがったのか。」
「当たり前だ。俺がこの歴史的瞬間を逃すわけがなかろう。殺すぞ!」
「無事でよかった。」
「私もあの時はさすがに肝を冷やしたぞ。」
(うっ、なんてタイミングだ!この状況で突っ込む空気じゃねえってのに!)
キースに肩を貸す長男ゴズ。その両脇には大量の海藻を頭に巻き付けた3男ポワソンと、股間にモザイクのかかった2男メズがいる。
「ついに見つけたんだな。」
カルアを見つめながらキースが言葉を続ける。
「お嬢は一族を背負う重圧に擦り切れていた。
一族をまとめ上げる手腕は誰もが認めている。が、本人は進まない未知の探査に頭を悩ましていた。
俺は内地の人間に手を借りるという提案をしたことがある。
どんなに崇高な考えも本人が潰れては意味がないからな。
だがお嬢はそれをよしとはしなかった。
そこで俺は今回お嬢と賭けをしたわけだ。
今後の一族の生末を。
結果は言うまでもないな。まあ、当然だ。
軽はずみに安易な道を選ばないその崇高さこそお嬢が頭であることの証明なのだから。」
カルアが手記を静かに閉じる。その目には既に涙はない。
「キース。賭けは私の勝ちね。明日からまた忙しくなるわよ。覚悟なさい。」
「ああ、俺たちはこれからもお嬢についてくだけだ。」
「うおおおおおおおおー!」
歓声が上がる中カルアは決意に満ちた目をしながら笑みを浮かべた。
初代の手記に何が書かれていたのか。
それはカルアだけが知っている。




