10.老夫婦の想い
「あんがとな、これは礼だ。」
「あ?ああ、毎度。じゃあ、俺は行くな。」
王都に入り馬車を降りると一行は若干不思議そうな顔した行商人と別れる。
「おい、場所はどっちだ。」
「確か広場の噴水前で公開試験をやるはずですじゃ。」
「あなた、間に合うかしら。」
王都だけあってここはかなり大きい。
住んでいる人口も多い。
それに加えて試験の見物のためなのか、街中は異常なほど混雑を見せていた。
広場の噴水まで結構な距離もある。
「なんとかするしかねえな。
俺が先頭きって道を開く。
全員はぐれずついて来いよ。」
一行は噴水に向かって走り出した。
噴水付近に着くと見物客が集まっていた。
噴水はその周辺から円状に外周に向かう上り階段になっているため、一番外周にいるディオたちにも見下ろす形でなんとか噴水周りが見えている。
周りの見物客の話に耳を傾けると、何人かの試験はすでに終わっているらしい。
そんな中二人の神官に見守られて一人の女性が噴水前に立つ。
「傭兵さん!孫ですじゃ!」
「ふぃ~。ギリギリセーフってとこだな。」
老夫婦の孫は目を閉じ祈るような体勢で何か言葉を紡いでいく。
試験がはじまったらしい。
それを老夫婦は温かい目で見守っている。
そんな二人をディオは優し気な目でみつめた。
試験が終わったであろうその瞬間に事は起きた。
「なんだ!いったいどうなってんだ!」
ディオの叫び声は試験終了と同時に沸き起こる歓声に掻き消されている。
今この場にいるもので異変に気づいているのは、ディオ、シバ、試験監である神官二人そして、、
老夫婦の孫である女性はこちらに目を向けた後泣き崩れた。
老夫婦は青白い炎に包まれていた。
シバは動揺するディオを左手を挙げて制する。
老夫婦は女性に申し訳なさそうな表情を向けた後、同じ顔でディオを見る。
「やっぱり傭兵さんは気づいておらなんだか。」
その言葉を聞いたディオは平静さを取り戻し、彼らに出会った時からの記憶を掘り起こし違和感に気づく。
その一つ一つを積み上げ答えに辿り着いた。
「おい、まさか。。」
「そう。彼らはレイスだ。肉体は既にない。」
「なんだか恩人を騙したようで申し訳ないですじゃ。」
「いや、俺がマヌケを晒しただけだ。気にすんな。」
「坊やもごめんなさいね。」
「俺は何もしていない。」
「そんなことないわ。ありがとう。」
「なあ。爺さん。これでよかったのか?」
「ああ、二人には感謝してもしきれんわい。なあ、婆さん。」
「ええ、あの子の立派な姿が見れました。そして成仏させてもらいましたから。」
「思い残すことはもうない。二人ともほんとにありがとう。」
二人の老夫婦は頭を深々と下げたまま青白い炎が燃え尽きたと同時に消えていった。




