①
空気に線香の匂いがまじりその匂いが鼻をくすぐる
最初はこの霊園独特の匂いが臭いと思ったが…
いい加減慣れた
「先輩!おはよーございます!!」
そういうとボクは墓の前で足を止めた
《浅倉家乃墓》
ここにはボクの先輩である浅倉薫先輩が眠ってる
ボクの先輩であり…
初恋の先輩である…
「はぁー…相変わらず先輩の墓はぼーぼーー…ボクがこないと伸ばし放題ですね(笑)いつか埋もれますよ?(笑)」
そういうとボクはそそくさと準備をし
掃除を開始する
「先輩聞いてくださいよー…今日また告白されちゃいました(笑)――…」
月に1回そんなたわいもない話をしながら先輩の墓を掃除する
「ふぅ…終わった!!うん、我ながら完璧だよ!!…疲れたー…」
「ここ座っていいのかな?…まぁ誰かきたらどけばいいんですよね(笑)」
そう言ってボクは墓石の前に腰を降ろした
《君は人の許可を取るまえに行動するよね(笑)》
ふと先輩の声が頭を過ぎった…
「あは…そいえばそんなことも叱られてた…。」
毎回掃除が終わったあとは想い出を頭に浮かべ
想い出に浸るのがお約束。
「ねぇ。先輩?ボクが先輩に告白したの覚えてます?」
そう言いながらボクは頭から想い出を一つ取り出した
――2008年[3年前]―
「先輩おはようございます!!」
『ん?おはよー後輩!!』
「…後輩って…普通言いませんよ?」
『みんなと一緒なんてつまらないでしょ?』
そう笑う先輩を見て自分の顔が熱くなるのがわかる
「かわいい…」
『ん?どした?後輩』
「だーから!後輩ってのはやめてください!!」
『かわいいのに…後輩…』
「そいえば先輩――…」
通学路が同じのボクは毎朝先輩と話ながら学校へと向かう…
この時間が何よりスキだ
でも先輩は知らない…
ボクの家から学校に行くのに先輩の通学路は通らない
そう…
ボクと先輩の通学路が同じなのは《偶然》じゃなくてボクが《グウゼン》にしただけ
その日の放課後
ボクは先輩に告白した
「先輩!!ボクと付き合ってください!!」
『あはははは!!!!』
「ちょっと!なんで笑うんですかー!!!」
『あぁ…ごめんごめん…今日は無口だなって思ったら告白されたからびっくりしちゃって』
「はぁー…告白が…」
『ごめんね。私は年上としか付き合わないの』
そう言って先輩は笑った
「…笑われた上にふられるなんて…」
ボクがわざと下を向くと
先輩は慌ててボクにちかづいた
『あぁ!!だからごめんってばー!!お詫びになんかおごるよー!!あっ!君はよく肉まんスキって言ってたから肉まん食べよ!!』
慌てる先輩を見るとつい笑ってしまう
「あははは!!もういいですよ。ただし!!肉まん!5コは奢ってもらいますからね!!」
『5コ??!君は本当に遠慮がないねー…』
お財布を見つめ先輩は深いため息をついた
「人の淡い告白を台なしにした代償は大きいです!!」
それから…一週間後…
~♪~♪
急の着信にボクは飛び起きた
「???!!!!こんな時間に誰だよ…」
《浅倉薫》
(先輩…?)
日頃滅多に電話しない先輩からの着信
それに加え時間は23時を回っていた
ボクはいや予感がした
「…もしもし…」
『*****――…』
声が思いのほか小さく聞こえなかった…
けどなにかあったことは伝わってきた
「どうしました?」
『…会いにきて』
「えっ?!
『今学校の校門…』
そう言うと電話が切れた
ボクは急いで学校に向かった
学校に着くと校門の前に誰かが座っていた
「先輩…?浅倉先輩?」
ボクの声が聞こえたのか先輩が顔をあげた
酷い顔だった…
涙で化粧は落ち
目は腫れ…
なにより…顔が死んでいた
『早かった…ね。やっぱそっちの道の方が近いんだね…』
「知ってたんですね…そんなことよりどうしました?」
『彼氏に振られちゃった…』
カ…レシ…?
ボクは耳を疑った…
「彼氏いたんですか…」
『内緒にしてて…ごめん…実はいたんだ…もう半年前からかな』
そう言った途端の目から涙が零れた…
『あのね…私…いらないんだって…』
「いらない…?」
先輩の目からとめどなく涙が溢れ始めた…
『彼氏が…私に飽きたんだって…可愛いのは外だけだって…』
そう言うと先輩は笑いはじめた
『あはははは!!そうだよね!料理もお菓子もできなくて!!がさつで言葉遣いも変だし!!!そりゃー女の子らしくないよね!!』
あまりの光景にボクはなにも言えなかった
『ねぇ…前に君は好きと言ってくれたね?私のどこがスキ?』
急に投げられた問い掛け
「……顔です。」
『やっぱり君も顔――…』