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クワセモノ ― 漂白される理想郷と、胎動する泥濘 ―  作者: くろーばー
第四章:『M48:新緑の散開、泥を縒り合わせる翠の糸』
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第十五話『M48:酒と涙と新緑の男女(おとめ)』

「ウホッ、良い男。泥臭くて可愛いじゃない、タイプだわ」

その言葉を発したのは新緑を宿したようなフェードツイストが似合う二メートルはあるガタイのいい巨漢。

言葉に詰まり、唖然としているとリセが割って入って来た。


「そのくらいにしときなよ、ユキ姉」


「あら、リセちゃんたら相変わらずいい女!テキーラ持ってきて!」

居酒屋の奥にいるオカマ仲間?の店員に指示するユキ姉と呼ばれていた男(?)


「はいよー!テキーラいちょぉぉぉ!!」

ドスの利いた声で応答する赤髪の男。


「おや、悪いねえ」


「いいのよ遠慮しなくって!リセちゃんと私の仲じゃない!」

手を口に当て、んもぉ~と談笑してるこの不気味な男?

困惑して立ち尽くしているとリセが説明してくれた


「この人は、鎖角ユキオ。見ての通り歴とした男女(おとめ)さね」

……説明を聞いて余計に分からなくなった。

そもそも何でこんなことになったんだっけ?


◆◆◆


「街に行こう?そりゃまたどうして」

雷牙暴猪ボルトタスク』との戦いから約一週間。

戦いで受けた傷もあばら骨以外治りかけてきたころ、リセが突然切り出した。


「まあまあ、落ち着きなさいな。街に行くのはある人に会いに行くためさね」

落ち着きがあるのによく通る声、やっぱりいいなと聞き入ってたが、質問に集中した。


「ある人?」


「そう、私の古い友人でね。スバルのあばら骨と修行を見てもらおうと思って」

その時は気にしていなかったが、それがユキオ改めユキ姉なのである。


◆◆◆

そして今に至る。


先ほどの赤髪の男(?)に案内され席に三人で付いた。

この居酒屋は、漂白された神都とは違い「生きた」温かさが感じられた。

酒を仰ぎながら男泣きするオカマ、料理をつまみながら談笑するオカマ、吞み比べをしているオカマ三人組に……ん?

――妙だな。

落ち着きながら、それでいて素早く前後左右を確認する。

うん、オカマしかいない。むしろ俺たちが浮いてる……?


「ああ、説明不足だったわねスバルちゃん」

困惑していたのが顔に出たのか、ユキさんが補足しようと口を開く。


「スバル…ちゃん…?」


「あひゃっひゃw、スバルちゃんw、スバルちゃんだってww~」

突然大声を出して笑いだすリセ。


「リセ、お前どうした?」

この異様な光景に中てられておかしくなったか?と思ったが、どうやら違うらしく


「もう、リセちゃんったらお酒弱いのに二杯三杯って一気に飲むから~」


「ん~?ふふふ、おさ、け……ふーふー」

静かに目を瞑って机に突っ伏して寝始めるリセ


「言わんこっちゃない、まったくリセちゃんのお茶目さん♪」

明るくユキ姉は言うが、スバルからしたら得体の知れない巨漢とサシでやらなければいけない状態になり固まる


「さて、さっきの話の続きなのだけど、この居酒屋はそこの赤髪の子、ナツちゃんの経営してるお店で私等みたいなのが良く来る店なの。びっくりしちゃったわよね」

明るく装っているが、目の奥に少しだけ寂しさを感じたスバルは


「確かに突然連れてこられた時はびっくりしましたけど、ユキさんも話してみたら気さくないい人だし

ここの雰囲気からして、皆温かい人達なんだなって思いました。

だから…そんな寂しい目をしないでください!」

今できる最大限の笑顔でそう告げた。


ユキは肩をフルフルと震わせながら下を向いている。

――怒らせてしまっただろうか? だとしたらすぐに謝ろう。


「あの、ユキs――」


「もう!スバルちゃんの女誑し!そんなこと言われても何も出てこないわよ!リンゴジュースでいい?」

みると男泣きした後が頬に残っていたが触れないことにした。


「はい、それで!」

見ると周りの人達も皆こっちを見ていた。…なんだ?

そう思い耽っていたが、その疑問を晴らすように見てきていた人の一人が口を開いた。


「す、」


「す?」


「素敵!!何この子ちょっともー」

さっきまで酒を仰いで男泣きしていた人だ。

見るとその人だけではなく周りの人も歓声なのか奇声なのか良く分からない声を上げていた。


「ちょっとダメよ~この子はリセちゃんの連れなんだから、いくら皆が良い男女(おとめ)だからって勝手にひっかけたりしちゃ」

ユキさんがそういうと皆リセの事を知ってるのか


「流石にリセちゃんの子に、ちょっかい掛けたりしないわよ!ユキ姉!」

と冗談めかしく告げた。

それからどれくらい時間が経っただろうか、入ったのは昼間だったハズなのに気づけば街頭に明かりが灯ってるではないか


「スバルちゃん吞んでるー?」

ユキ姉も随分と酔っている様子だった


「頂いてます!リンゴジュースですけど!てか奢ってもらっちゃって、すいませんユキさん」


「もーユキさんだなんて堅苦しい呼び方しなくてもいいのよ!皆みたいにユキ姉って呼んでくれると嬉しいわ」

その目は責めるものではなく、底なしに優しく慈愛に満ちた目と声色だった。

リセが勧めるのもわかる。滅茶苦茶面倒見がいいし底抜けて明るいムードメーカーでもある。

彼女(?)が笑う度、店内に活気と笑いが伝わっていく。


「分かりまし、いや。わかったよユキ姉!」

ユキ姉は満足げにニカッと笑って見せた。


「そろそろリセちゃんを連れて宿に行った方が良いわ、明日またこの居酒屋に来て頂戴。

そこで色々話すわ、今日は疲れてるだろうしゆっくり休むのよ?リセちゃんによろしく!」

またニカッと笑うユキ姉。ああ、暖かいな。

そんな気持ちになったのは何年ぶりだろうか?久しぶりに触れた人の暖かさに涙腺を刺激されがぐっとこらえた。


きっとこの居酒屋の空気を作ってるのはユキ姉なんだろう

そう思いながらリセを背負い、居酒屋を後にした。



◆◆◆

宿に付くと、リセをベットに荷物を床に降ろし気が付いたら呟いていた。


「酒弱いなら少しは自重しろよな……、まったく」

朝起きたら文句の一つでも言ってやろうと思ったが、彼女の寝顔を見たらその気も失せてしまった。


「……ユキ姉に合わせてくれてありがとうなリセ、お休み」

スバルはリセの部屋を後にし、自室に戻った。

第十五話を拝読いただき、ありがとうございました!


本日は同時投稿だったので、理由は割愛

基本的に章が動くと新キャラが登場します。

今回はオネエだっただけで、一応四章も修行パートの延長線上にいます。

新キャラ書く時に何が困るって、ビジュアルなんですよね。

性格とかを考えるのはそこまで難しくないんですけど、髪の色とか目の色でいつも悩んでます。


おかげさまで累計4万文字に到達しました。

泥にまみれた『クワセモノ』が、本物の夜明けを掴むための第一歩。

ユキ姉のみどりの糸が、スバルの運命をどう縒り合わせるのか。

もし少しでも熱い、あるいはニヤリとしたら、【リアクション】や【ブクマ】でスバルの背中を押し上げてください!

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