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太田君の彼女は妖精さん⁈  作者: 本田 そう
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竹◯事変 その3

「大平さんを助ける?俺が‥‥‥」

言っている意味がわからなくもう一度千晶さんに聞いてみた。


「大平さんを助けるってどういう事かな?」


千晶さんは大平さんを見て

「沙也加、話してもいいわよね?」


「‥‥けど‥」


「沙也加‥‥悩んでる時間はないのよ!」


「‥‥う、うん‥‥わかってるわ。けど‥」


「沙也加!」


するとカンナは突然口を開く。


「‥‥‥お腹の子ですよね」

カンナのそのセリフにヒロは「えっ?」と感じ

カンナにもう一度ど確認した。


「カンナ、もう一度言ってくれ」


「大平さんのお腹には‥‥赤ちゃんが居ます」


大平さんと千晶さんは突然のカンナの発言に驚き、千晶さんは

「ど、どうしてその事を‥‥」


「ごめんなさい。さっき向こうで話していた事を聞いてしまったので」

謝るカンナ。ヒロはその時、さっきのカンナのもの言いそうな事はこのことだったのかと悟った。


「えっ?あんな所からどうやって‥‥」

と千晶さんは言いかけたのでヒロは大平さんに


「大平さん、本当なの?」


「‥‥‥‥‥‥うん‥」


ヒロは大平さんの返事になんて答えていいかわからなく


「そ、そうなんだ‥‥」

と言うのが精一杯だった。


暫し沈黙の後、青葉が


「時間がないと言ってましたけど、どう言う事なんでしょうか?」と。


大平さんと千晶さんは黙ってしまったが‥‥千晶さんが口を開く。


「‥‥人工中絶‥‥するの‥‥」

千晶さんは下を向きながら何かに申し訳ないような感じで話した。


「「えっ?‥‥人工中絶‥‥」」

ヒロと青葉は驚くが‥‥カンナは何のことかわからなくヒロに聞いてきた。


「‥‥‥授かった小さな命を‥‥‥親の手で立つ事だよ‥‥‥」


「‥‥えっ?‥‥それって‥‥」


「ああ、人殺しさ。まだこの世に生まれてないから人と呼べるか‥‥だがな」

ヒロは険しい表情で言った。


カンナは大平さんの前に立つと大平さんの両肩に手を乗せて揺さぶり

「ねえ!なんで、なんで、そんな事をするの?ねえ!なんで!」


カンナはなぜか目に涙を浮かべながら大平さんを揺すっていた。

大平さんもいつの間にか涙が頬をつたい泣いていた。それを見た千晶さんが大平さんをなだめる。


「カンナ‥‥」


「ねえ!なんで!」


「‥‥カンナ!!」

ヒロはカンナに怒鳴った。


カンナは泣きながら大平さんの前から離れようとはしない。それを見たヒロはカンナのそばに行き優しく抱きしめた。


「カンナ、この世界はカンナが思っているほど優しい世界ではないんだよ」


「優しい世界ではないの?」


「そう。大平さんに赤ん坊を育てる力があれば育てられるだろう。けど今の大平さんにはそれがない。むしろ自分が生きるので精一杯のはずだ」


「けど‥」


「だったら仮に今から手を貸そうとするが、赤ん坊は1日や2日で育つものじゃない。動物の様に生まれて直ぐに立って歩く事も出来ない。十何年間掛かってようやく一人前になるんだ。人間は動物の中で一番優れた生き物だと言うけど動物から見たら一番最弱な生き物なんだよ」


「けど‥けど‥グスン(涙)」


「カンナは優しいなあ」

ヒロはカンナの頭をなでてあげた。


「大平‥‥さん。覚悟はできているんでしょ?」


「うん‥」と頷く大平さん。


「‥‥一生‥‥十字架を背負って生きていく事も」


「‥‥はい」

と大平さんはお腹をさすりながら返事をした。その顔はお腹の中の命を守る事が出来なかった無能さとこれから一生背負うことへの罪の重さからくる表情にも見えた。




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