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Free job online ~祝育士としての日常~  作者: 八神 憂
海の街と新規さん
63/69

新規プレイヤー 1日前 昼2-6

 新しい修道服を貰ってログアウトする。ただそれだけのお話です。

「うわっ広いなー倍以上あるんじゃな……?」


 扉を開けてすぐにある広い礼拝堂を見てそんな事を呟くアリア。入り口から数歩歩いた所で周りのプレイヤーからの視線と声で自身の服装の自覚を持つ。


「あ、そう言えば巫女だった」


 自身が(不本意ながらも)名の知れているプレイヤーだという意識があるにはあるアリアが教会に来たという事は、他の者にとって意味する事は1つしか無いのである。


「あの!すいません!祝育士のアリアさんですよね!私達のパーティに加護をお願いしたいのですが!」

「あ、抜け駆けはずるいぞ。ソロの俺から手短にすましてくれませんか!」

「自分もお願いします」


 そして教会に居るプレイヤーからの加護くれの大合唱。ほぼタダ同然でしている故か割と遠慮がないプレイヤー達に道を塞がれ、珍しく苦い顔をする。


「服受け取りに来ただけなんだけどなぁ」


 などとボヤくが時すでに遅し。広い礼拝堂の3分の1程を埋めるプレイヤーを無視できる訳もなく更には……


「あ、シスター服じゃないけどシスターさん居るじゃん。この街にも来るようになったんだ」

「加護貰いに行こうぜ」


 などと外から訪れるプレイヤーも現れる。掲示板の書き込み通りある種の時限イベント扱いされているアリアの存在は見つけ次第に加護貰っとけという謎の共通認識がある。

 やんややんやと囲まれるアリアは仕方なく覚悟を決めて笑顔と共にいつもの言葉を告げる。


「わかりましたから並んで下さい」


 この一言と共にアリアのお仕事が始まるのであった。そしてこの街へ現れたという事のもう一つの意味を先頭のプレイヤーに尋ねられる。


「シスターさんはもう上位職になったんですか?」

「先程、祝育官になりましたよ」


 そう告げた瞬間に沸き立つプレイヤー達。そうしてジョブの確認をするとともに注文される加護は1つしかなかった。


「じゃあ二重の促育と祝育でお願いします」

「了解しました。あ、皆さんに尋ねますが」


 加護を始める前にアリアがプレイヤー全員に先に聞く。


「促育と祝育でしたら前と同じと言って下さい。別の加護でしたらその都度かけますので。ではいきます」


 時短の為に最低限の注文でお願いする様に指示を出して加護をかける。そうして加護をかけ続ける事20分。


「貴方で最後ですね。前の方と同じですか?」

「あっはい」

「わかりました」


 顔は笑顔であるもののギルドへの誘いが散々あったためいちいち断っていた結果、終盤には面倒さや雑さが顕著に出ていたのは見て分かった。相手もそれが分かっているため下手なことは言えずに一言二言で会話が終わる。


「終わりましたよ」

「ありがとう。これお礼」

「ありがとうございます」


 途中まで言っていた「良き旅を」を完全に言わなくなった辺りでプレイヤーが察してお布施を渡した後は早次に教会を去る。ちなみにその心境を察したプレイヤー達がお布施に少し色を付けた事をアリアは知らない。


「はぁ疲れた……ボス戦より遥かに疲れた。早く貰ってログアウトしよう」


 祝育官のレベルが上がった事を気にせずに礼拝堂の石像前に居る神父に話しかける。


「お騒がせしてすいません。この教会の神父さんですよね」

「いかにもそうだが。何か用かね?」

「こちらに来れば新しい修道服を貰えると聞いたのですが……こちらヴォルケ神父からの手紙です」

「ヴォルケからか。しばし待て」


 手紙を渡すと中を確認し。ふむふむと頷いて「了解した」と奥の扉に引っ込む。このあたりのリアクションは余り変わらないなーと思いながら待つと、新たな修道服を携えてやって来る。


「こちらが君の新たな修道服だ。これからも教会の発展に貢献してくれたまえ」

「ありがとうございます」


 渡される修道服を手に取り確認する。見習いのやつよりも手触りが良く色が少し濃い。そして袖の縫い方や使われている糸も違い、アクセサリーである十字架も鉄から銀色に替わっている。


「その修道服には新たな機能として訪れた教会間への移動魔法が備わっている。活用したまえ」

「ワープ機能ですか!?それはありがたい機能です!」

「喜んでもらえて何よりだ」


 クリスタルでの移動があるものの自分で移動魔法が使えるというのはやはり嬉しいもので素直に感謝を告げる。がまだ話が途中であると咳払いする。


「そして君にはこれとは別にもう一つ渡すものがある」

「なんでしょうか?」

「これだ」


 手渡されるのは礼拝堂にある共通の石像を手乗りサイズにした物である。手に乗せるが重さはそれ程ない。使い道がわからず見つめていると説明が入る。


「それはプレイヤーギルドか教会が無い町での教会の運営権だ」

「運営……?」

「そうだ。この石像を置いた建物は教会として扱われ加護が発生する……だが初めのうちは加護も弱い」

「つまり現存する教会の様に魔力の消費が半分では無いと」

「その通り。だが魔力を消費していけば像が吸収し加護が強くなっていく。また場所によっては修道服が変化する事もある。どこで運営するかは君の判断に任せよう」

「なるほど」


 話の流れが見えてきたアリアは石像の使い道を考えながらも大事に使わせていただきます、と石像と修道服をアイテムボックに収めて後程とその場でログアウトするのであった。

 何かのサイトでこの小説の感動詞ええとかうわっとかの頻度がめっちゃ高いと解析されてました。台詞の度に入れてた気がするのでそりゃそうだと笑いました。

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