02また会ったね
01|ソウル・午前8時20分
秋の朝、空気には少し冷たさが感じられた。
ユン・ソヨンはバス停の前に立ち、まだ飲み終えていないコーヒーを手に持っていた。彼女は携帯電話を見下ろした。画面には、数日前にパク・ソンミンから届いたメッセージが、まだ表示されたままだった。
「最近、元気にしてる?」 「時間があったら、一緒にご飯でもどう?」
彼女は返信していなかった。
バスが到着すると、彼女は携帯電話をしまい、乗り込んで窓際の席を探した。
窓の外の街並みが、次々と後ろへ流れていく。
彼女はもう長い間、あの人のことを思い出していなかった。
少なくとも、ずっとそう自分に言い聞かせていた。
02|カン家・午前10時15分
カン・テジュンは高級マンションのダイニングテーブルに座っていた。テーブルの上には、手つかずの朝食が置かれていた。
携帯電話が鳴った。
兄のカン・テヒョクからだった。
「昨日もまた家に帰らなかったのか?」
「何か用?」
「父さんがお前のことを聞いていた。」
テジュンはコーヒーを手に取り、気だるそうな口調で答えた。
「兄さんはいつも父さんのそばにいるんだろ?代わりに答えておけばいいじゃないか。」
電話の向こう側で、少し沈黙が流れた。
「テジュン、お前はいつまでもこのままではいられないだろ。」
「じゃあ、兄さんは俺にどうしてほしいんだ?」
テヒョクはすぐには答えなかった。
「せめて、毎回母さんに心配をかけるのはやめてくれ。」
テジュンは窓の外に目を向けた。
「わかった。」
彼は電話を切り、リビングのテーブルに置かれた白いチューリップに視線を落とした。
花びらは、少しずつ開き始めていた。
彼は携帯電話を手に取り、近くの花屋を検索した。
そして、あの女性のことを思い出した。
03|花屋・午後2時36分
店のドアに付いたベルが鳴った。
ソヨンは下を向き、花材を整理していた。
「いらっしゃいませ。」
彼女は顔を上げなかった。
「今日は白いチューリップはありますか?」
聞き覚えのある声に、彼女の手が止まった。
顔を上げる。
そこにいたのは、数日前、自分のために花を買っていったあの男だった。
「またあなたですか。」
テジュンは少し笑った。
「覚えていてくれたんですか?」
「自分のために花を買う人は、あまりいませんから。」
「だから覚えていたんですか?」
「ただ、不思議だと思っただけです。」
テジュンは花棚のそばまで歩き、今日並んでいる花を眺めた。
「それなら、今日は何がおすすめですか?」
ソヨンは淡いピンク色のトルコキキョウを一束手に取った。
「これです。」
「どうして?」
「特に理由はありません。ただ、今日の花はあなたに似合う気がしたんです。」
テジュンは花を受け取り、しばらく見下ろしていた。
「毎日、お客さんにこうやって花を選んでいるんですか?」
「お客さんが聞いてくれるなら。」
「じゃあ、僕は聞きたいです。」
ソヨンは何も答えず、ただ彼のために花を包み始めた。
04|ひとつの名前・午後2時52分
テジュンはカウンターの前に立ち、ソヨンが慣れた手つきで包装紙を整える様子を見ていた。
「前に、次に来たときに名前を教えるって言っていましたよね。」
ソヨンの手が少し止まった。
「覚えていたんですか?」
「記憶力は悪くないので。」
「それで今日は、わざわざ名前を聞きに来たんですか?」
「それだけでもありません。」
彼女は顔を上げた。
「他に何かあるんですか?」
テジュンは彼女を見つめた。
「もう一度、あなたに会いたかったんです。」
花屋の中に、数秒の静寂が流れた。
ソヨンは視線を落とし、再び花を包み始めた。
「お客様、そんなことを言うと誤解されますよ。」
「じゃあ、誤解しましたか?」
「していません。」
「本当に?」
「本当です。」
彼女は花束をカウンターの上に置いた。
「三万二千ウォンです。」
テジュンは支払いを済ませたが、すぐには帰ろうとしなかった。
「カン・テジュン。」
ソヨンは彼を見た。
「何ですか?」
「僕の名前です。あなたが先に教えてくれないなら、僕から自己紹介します。」
彼女は数秒間、彼を見つめた。
「ユン・ソヨン。」
「ソヨン。」
彼はその名前をそっと一度口にした。
「いい名前ですね。」
「ありがとうございます。お気をつけて。」
05|閉店後・午後7時18分
花屋は閉店の準備に入っていた。
ソヨンがカウンターを片付けていると、突然、携帯電話の画面が光った。
知らない番号からメッセージが届いていた。
「今日の花、とてもきれいでした。」
彼女が少し眉をひそめると、続けて二通目のメッセージが届いた。
「カン・テジュンです。」
ソヨンは画面を見つめ、すぐには返信しなかった。
数分後、彼女は一行だけ文字を打った。
「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております。」
メッセージを送信した。
一方、テジュンは車の中で、携帯電話に届いた返信を見つめていた。
思わず笑みがこぼれた。
「またのご来店をお待ちしております、か?」
運転手はバックミラー越しに彼を見た。
「坊ちゃま、ご自宅に戻られますか?」
「先に食事に行こう。」
「どちらへ行きますか?」
テジュンは少し考えた。
「適当に一軒探して。」
彼は携帯電話を横に置いた。
今度は、すぐに次のメッセージを送ろうとはしなかった。
06|深夜・午後11時46分
ソヨンは自分の小さなワンルームに帰ってきた。
シャワーを浴び終え、ベッドの端に座って髪を拭いていると、携帯電話の画面が再び光った。
カン・テジュンからメッセージが届いていた。
「今日はお疲れさま。早く休んでね。」
彼女はその一行を見つめた。
華やかなプレゼントも、わざとらしい誘いもない。
ただ、ごく普通の挨拶だった。
少し考えたあと、彼女は最後にこう返信した。
「あなたも。」
メッセージを送信すると、彼女は携帯電話をベッドサイドに置いた。
彼が一体どんな人なのかも、なぜ自分に興味を持っているのかも、彼女にはわからなかった。
ただ一つわかっているのは、もう二度と恋愛のせいで、自分のこれまでの生活を失いたくないということだった。
一方、その頃。
カン・テジュンは彼女からの返信を見つめていた。
彼はそれ以上メッセージを送らなかった。
ただ携帯電話を置き、ソファにもたれかかった。
テーブルの上では、ピンク色のトルコキキョウが、灯りの下で静かに咲いていた。
彼は明日が来るのを楽しみにし始めていた。




