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未来への光を抱いて

青森駅に降り立った瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。



(……香織……あれからもう、十数年か……)



隣には、もう子どもではない愛華が立っていた。



愛華は、香織と同じ大学を受け、香織と亮介さんと同じく医師を目指して頑張っている。



愛華は、黒髪を後ろで束ね、


落ち着いた表情で周囲を見渡している。



「パパ、行こっか!」



その声は、香織にそっくりだった。



ぼくは頷き、二人で駅を出た。



タクシーの窓から見える青森の街並みは、


あの日と同じで、でもどこか違って見えた。



愛華は窓の外を見ながら言った。



「パパ……


ママ、ここに来た時……


 どんな顔してた?」



ぼくは少し笑った。



「あの時、愛華も一緒に来たんだけどな。小さかったから覚えてないのも当然か。」



「ママ、すごく楽しそうだったよ。


 ねぶたの光見て、


 子どもみたいに目を輝かせてた」



愛華は微笑んだ。



「……なんか、分かる気がする。


 私も今、ちょっとワクワクしてる」



その横顔が、


香織に重なって見えた。



海に着くと、風が強く吹いていた。



愛華は胸元の鈴をそっと握った。


あの日、香織が持っていた鈴。


今も愛華の大切な宝物。




チリン……


チリン……



風に揺れて、


優しい音が響く。



「パパ……


 ママ、ここにいたんだよね」



「うん。


 ここで笑ってた。


 ここで……幸せそうだった」



愛華は海に向かって、


静かに目を閉じた。



「……ママ。


 私、20歳になったよ。


 パパと二人で、ちゃんと生きてきたよ。


 ママがいなくても……


 ちゃんと笑えるようになったよ」



ぼくは言葉が出なかった。



愛華は続けた。



「パパがね……


 ずっと守ってくれたんだよ。


 ママが選んだ人は……


 本当にすごい人だったよ」



胸が熱くなった。



(……香織……


 聞いてるか……


 愛華は……


 こんなに強くなったよ……)




夕方、


ぼくたちはあの海上運行を見た場所へ向かった。



夕日が海に沈みかけていて、


空が金色に染まっている。



愛華は海に向かって、


ゆっくりと手を伸ばした。



「ママ……


 ありがとう。


 私を産んでくれて。


 パパに出会わせてくれて。


 ここに連れてきてくれて。


 全部……ありがとう」



風が吹いて、


鈴が鳴った。




チリン……


チリン……



その音は、


まるで香織が微笑んでいるようだった。



ぼくはポケットから、香織の高校時代のラブレターを取り出した。



愛華が言った。




「パパ……読んでいい?」



ぼくは頷いた。



愛華は便箋を開き、


静かに読み始めた。



読み進めるにつれ、愛華の目に涙が溜まっていく。



「……ママ……


 こんなに……


 パパのこと……」



声が震えた。



「……こんなに……


 好きだったんだね……」



ぼくは愛華の肩に手を置いた。



「そうだよ。


 香織……


 ママは‥‥


 ずっとぼくを想ってくれてた。


 そして……


 愛華のことも……


 ずっと守ろうとしてた」



愛華は涙を拭き、空を見上げた。



「ママ……


 私ね……


 パパの娘でよかったよ。


 ママの娘でよかったよ」



夕日が沈む瞬間、


空が金色に輝いた。



(……香織……


 ありがとう……


 あなたが残してくれた光は……


 今もちゃんとここにあるよ……)




帰りの電車の中で、


愛華は窓の外を見ながら言った。



「パパ……


 また来ようね。


 今度は……


 私が連れてくるよ。


 パパを。


 ママの好きだった場所に」



ぼくは微笑んだ。



「うん……


 来よう。


 何度でも……」



愛華は続けた。




「パパ……


 ありがとう。


 私を育ててくれて。


 ママの代わりに……


 ずっとそばにいてくれて」



ぼくは愛華の手を握った。



「ありがとうって言うのは……


 ぼくの方だよ。


 愛華がいてくれたから……


 ぼくは生きてこれたんだ」



電車の揺れが心地よくて、


ぼくは静かに目を閉じた。



(……香織……


 見ててくれ……


 ぼくたちの未来を……


 あなたが残した光を抱えて……


 これからも生きていくよ……)



香織と亮介さんが笑っている、そんな気がした。





—————完——————




あとがき


長編となった本作をお読み頂き、ありがとうございました。


ようやく、これで物語りが完結となりました。


この物語は、作者がずっと温めていた物語を30年という歳月を経て書き上げた物です。初めて小説を書いたのが、こんな長編・・・。


何て無謀な事を・・と自分でも思いました(笑)


ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。次作も現在細々と書いております。また、UPした際はお付き合い頂ければ幸いです。




                               ゆじーぼ

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