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記憶喪失の転生者  作者: 川咲鋏
第4章
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忍び寄る悪魔


「ッ……!!ここどこ……!?」


目を覚ますと、見知らぬベッドで寝かされていた。

頭はぼーっとするものの、さっき血を吐いた時よりは少しマシだ。


「もう起きられる?」

「は、はい…すみません…ご迷惑をおかけし………て………!?」


ベッドから起き上がった私は、目ん玉が飛び出るかと思った。


(嘘でしょ!?なんでカルミアがいるんだ!?)


私を助けてくれた優しい女性は、まさかのカルミアだった。

アレキサンドラルートのバッドエンドで、ミーシャと同年代ぐらい若々しく見えるロリバ…的な魔性の魅力を使い、アレキサンドラを誘惑する形で薬を勧めて堕落させ、ヒロインの自殺を手伝うこととなる女が、何故私を助けたんだろう。


(本当にぱっと見は同い年ぐらいの美少女なんだよなあ…本当にミーシャ・グレイスより5歳年上か…?ってそれより、カルミアとこんなに早く接触するなんて想定外なんだけど!こっからどうなるの!?)


もしかしてゲームとは違い、本当にアレキサンドラの愛妾になりたくなったため、助けたのは実はフリで本当は邪魔な私を始末するのが目的なのだろうか。

そうであれば、とうとう私に死ぬ時が来てしまったということだ。


(ああ…サラにグレイ、柚莉奈、アリス、フェリシア、ライヤ、ついでにアレキサンドラ、今までありがとう。私のことは忘れないでください…)


別れの言葉を頭の中で呟きながら、私はカルミアの行動に構えながら目をぎゅっと瞑った。


「もう少し休んだ方が良いわ、まだ顔色が戻りきってないようだし。一応ここで医者として仕事もしてるから、何かあったら言ってちょうだい。私はカルミアよ」

「あ、ありがとう…ございます。私は…ミーシャ・グレイスです」

殺されると思っていたら、カルミアは体調が良くなるまでここに居ても良いと言ってくれた。

私を始末しようとしてるのではと考えてしまった自分が恥ずかしい。心配してくれていたのに疑う自分は最低だ。

「にしても…血を吐いていた時のことはどうも気になるわね。もしかして貴女、前に何回か血を吐いたことある?」

「な、なんで分かったんですか…?」

「血を吐いたのが初めてだったらもっと取り乱すはずよ。いつからそうなったのか教えて?」

「………つい先月、初めて葡萄酒を飲んだんですけど…その翌週ぐらいから血の味がする咳が出るようになって…最初はそんなに口から出るほどじゃなかったから特に気にしてなかったんです…」

医者だから当然とはいえ、初めて誰かに血を吐く悩みを打ち明けられた。少しだけだが、気は楽になっていく。

「……初めて飲んだ時の喉焼けの感覚はどのくらい?」

初めて酒を飲んだため、当然喉が焼ける感覚はかなり強かった。前世の家族の中で一番酒に強かった翔兄ちゃんは、ワインの喉焼けの感覚に慣れるには何回か飲まないとダメだと言っていた。だからこそ、特段聞く必要はないはずだ。しかし、聞かれた以上、答えた方が良さそうだ。

「喉が焼ける感覚はかなり強かったと思います…でも最初はみんなそうだと思うんですけど…」

「……その次に飲んだのはいつ?」

「2回目は初めて飲んだ日の翌週ぐらいで、その日は…ち、知人が別で取っておいてくれた葡萄酒を酔っ払うぐらい飲んでしまいました。その後からかなり咳き込むことが増えて…多分、2回目の直後も血を吐いていたと思います」

改めて話していると、誰かがワインに細工したことよりも、普通に自分の飲み過ぎが原因で体調不良となっているだけなのではと思えてきた。

しかし、最近はあの飲み過ぎに懲りてできるだけ飲まないようにしている。しかし、避けるようになってからの方が口から溢れるほど血を吐くことが増えているのはどうもおかしい。

「多分…慣れてないうちからの飲み過ぎが原因ですよね…?」

「………血を吐くようになったのはあの人のせいかと思ったけど、貴女の場合はもっと別の理由もありそうね。ただ、それについては結核とか肺炎みたいな病気ではなさそうなのが不思議だけど…」

「?どういうことですか?それに…あの人のせいって…?」


私が血を吐いたのは、葡萄酒の飲み過ぎによる体調不良ではなく、もっと別の理由があることをカルミアから意味ありげに知らされた。

しかし、私は血を吐いてしまう別の理由を考えるよりも、誰かが葡萄酒に細工をしたという事実を匂わされたことが気になってしまう。カルミアが言っていたあの人とは違うみたいだが、カルミアに頼っていないだけで別に犯人がいる可能性も否定できない。

アレキサンドラの愛妾であることへの妬みならたくさん受けてきたが、先に陰口集団の筆頭アメリとマティルダを分からせたおかげで、陰口程度で済んでいた。その集団が、今更血を吐くような目に遭わせるほど本気で妬んでるようには思えない。

私が最初に飲んだワインに原因があることを中心に考えると、初めて飲んだ時に何故かグランディエに話しかけられたのは違和感がある。それと何か関係があるのだろうか。


(兄の愛妾になった逆恨みとかならグランディエを疑うべきだけど…あいつが私を殺すなんて有り得ない…あくまで私じゃなくて"ミーシャ"を好きだって言ってるんだから…さすがにそこまではしないよな…)


グランディエの可能性は劇的に低い。よく考えたら本当に私に話しかける機会を伺い続けて、やっと声をかけられたという感じだった。


(ならその妻のルイーズ??グランディエのことで嫉妬して…?でも私とグランディエのやり取りを知られていたら今頃ルイーズに問い詰められているはずだから…多分違うかも)


心当たりのあるグランディエ夫妻のことを考えてみるも、どちらも可能性が低い。二人のうちのどちらかが人を使ってカルミアからワインに細工できるものを買わせたとも考えられるが、そもそもあの二人は証拠が残りやすかったり、私以外の誰かに誤って影響を与える可能性のあるやり方をするほどの馬鹿ではない。


それならと、記憶が戻る前から私をいじめていたアメリとマティルダを疑ってみる。


(マティルダにそんな度胸はないよな…完全に成敗してからは謹慎が解けた今でもほとんど引きこもってるし…それにアメリのおまけ腰巾着なだけあって、アメリ本人がいないと何もできない女だ)


アメリの腰巾着(マティルダ)は、アレキサンドラの目の前で恥をかかされた恥が相当強かったのか、今ではアメリにとってほとんど役に立たない状態だ。ワインに何か細工をすることすら思いつく余裕もないだろう。


(アメリか…!?謹慎が解けた直後は大人しかったのに私がアレキサンドラに近づかなくなってから急に元気になってたし…それに私が咳してた時も仮病だって言って笑ってた…!)


アメリは、私に強い恨みを持つ一人だ。マティルダに比べれば、あの女は実行する可能性が高い。証拠が残りやすく、私以外の誰かに誤って影響を与えるやり方を考え無しに行っていても納得がいく。おまけに、問い詰められたらカルミアから代わりに買わせた人間を平気で売る卑劣な女だ。


絶対に許さない。今度こそ成敗してやろうと、私はベッドの上で策を練り始めた。



ガチャッ…


「……あら、随分早いうちから来たのね」


私が考えあぐねている所で、誰かが入ってきた。

そこにいたのは、見覚えのあるフードを深く被った背の高い人だ。


(ああ、あの時カルミアから何か買ってた使用人っぽい人か…またご主人を壊した人間に何かするのかな…?)


どんな怪しいやり取りが行われるかが気になり、なるべく気配を消して見守ろうとした。


「ッ……!!何故お前がここにいるのッ!?この()()ァッ!!!!」


だが、その人のヒステリックな怒声がこちらに向けられ、()()と呼ばれた瞬間、一気に全身が震え出した。


「ッ……………!!ッ〜〜〜〜〜!?」


あまりに怖くて、声すらも出ない。

記憶の中で封じられていた恐怖の日々が、脳内で一気に流れ出す。


養父のレオンさんが亡くなった後、私を引き取ったトニーから受けた性的虐待。トニーに悪魔に取り憑かれたと言われ、冷たい目をしたトニーの侍女に食べさせられた薬草まみれの食事。

アレキサンドラが助けに来てくれなければ、私は今頃死んでいるか、生きていてもトニーの元でぼろぼろになっていた。

ミカエラから聞かされた時は、単なる事実として受け流していた。しかし、ヒステリックな声と悪魔という罵倒をされただけで、まるで今現実で起こっているかのように当時の恐怖と苦痛が襲いかかってくる。


私にそんな恐怖を与えた一人である"カンナ"が、眼鏡の奥にあるルビー色の目で、私への憎悪を込めて睨みつけていた。


第二章でトニーと同じぐらいトラウマを植え付けた恐ろしい女が、ここで再登場しました。

個人的に、冷酷でヒステリックなB専系美女、メスガキ以下の小物令嬢とそのおまけ腰巾着令嬢などの悪女三人衆(※現段階)は実際に登場させなくても書くの楽しいです笑

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