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ろくじう、さん。
「――五十嵐? 五十嵐!?」
通信が一方的に遮断された。ノイズしか聞こえない。端末が映す映像を見ても、確かに五十嵐は白目をむいて悶絶している。
対して少年は五体満足に、空中で周囲を見回している。
「だから油断するなと言ったのに、あの男……!」
く、と黒木は歯噛みした。現場から数キロ離れた地点だ。黒木は三人の中でも補佐要員であり、戦闘能力がないための位置取りだ。周囲に端末をいくつも同時展開して状況を追っていたのだが、
『なに、五十嵐の奴やられたの?』
「死んではいません。ですが戦闘不能は確かです」
淡々と黒木は言う。冷静さを失ってはいけない。生きているのなら、後で回収するだけの話だ。失敗は、全滅するまで在り得ない。
黒木はただ、任務を遂行するだけだ。
だから、
『――撃っていい?』
わくわくと心躍るような声音で問うてくる木村に、
「許可します。――目標以外を殲滅しなさい」




