12話
sideシデン
「へっ、ロードの言った通りだな。」
シデンとアリスはロードが言っていた少しハグれたゴブリンを見つける。
「当然よ、ロードの魔力探知は宮廷魔術師にだって負けないわよ!」
と自分の事かのように胸を張るアリスを怪訝な目で見るシデン。
「別にお前を褒めた訳じゃないんだがな。なんでお前が胸を張るんだよ。」
「ロードの手柄は私の手柄だからだわ!」
「俺は今ほどロードに同情したことは無いぜ。」
そう言ったシデンは腰から木刀を抜き、構える。
「そういやお前は聖魔術以外何が出来るんだ?」
「ふふん、これよ!」
そう言って手に持ったのは右手にモーニングスター、左手に丸い盾だった。
「殴るわ!」
「マジかよ。」
「大マジよ!」
見た目と反して余りにも殺傷能力が高い武器に、思わず目眩を起こそうとする自分を奮い立たせて前を見る。
「んじゃ行くかァ!」
「行くわよ!」
ハグれたゴブリンへ飛び出していくシデンはすぐさま木刀で首に一撃。
「グゲッ」
「まずは1匹ぃィ!」
戦場が開かれた。
side ロード
木の影に隠れながら接近したロードは、向こうが動き出したのを確認して自分もハグれたゴブリンに接近する。
(魔道具使うか貰った剣でやるか悩んだけど、魔道具は音が鳴るし、後ろから剣で...。)
ロードの持っている魔道具は魔道具にある残存魔力が尽きない限り、聖属性を除く、各属性の3階位魔術『バレット』をそれぞれ選び放てるという優れものだ。今回は魔道具が一旦邪魔になるため影に置き、腰に差しいる昔使っていた魔術杖を撫でた。
(よし!)
久々の冒険って事もあり少し浮かれる自分と恐怖に震える自分を何とか押し殺し、不格好ながらゴブリンに近づく。
(剣の振り方は、さっき"視た"!!)
先程のシデンの型をなぞる用に、筋肉の使い方、体の動き、力の抜き方を一瞬で記憶してそれを実行しようとするが
(っ、ズレた!)
「グギャッ!」
芯から少しズレはしたが、首半分ほど斬っることに成功した。
(ふー、よかった。)
ゴブリンは血を流し起き上がることはなかった。そしてロードは理解していた。
(シデンとは筋肉の付き方から違うし、体の動かし方にズレがあった。シデンはまるで体全体を使って木刀を振ってる。僕に1番足りてないのは多分、僕自身の体の動かし方の感覚だ。)
そうしてシデンの方に視線を向ければ走りながら次々とゴブリンを屠る姿が映る。全ての動きが連動し、斬る事だけを最適化したそれは、雷の如く迸る。
「ハッハッハァ!!こんなもんかよォ!」
「ちょっとぉ!私の分も残しなさいよ!」
「・・・凄いな。」
素直に感嘆の声が漏れた。それほどシデンの動きが凄まじかったからだ。
(あれなら一人で任して大丈夫かな)
そう考えたロードは魔力探知に集中した。そこで見つけてしまう。
(なに、これ。魔力がどんどん膨れ上がって・・・)
探知した場所にロードは視線を寄せた。1匹のゴブリンが木の影に隠れ、青白い大きな熊を無我夢中に喰らっていた。
「皆!今すぐ徹───」
「ガァアアアアアアアアアアア!!!!!」
そのロードの声は無慈悲に、現れた異物の森全体が揺れる様な産声によって掻き消された。




