閑話 古き魔族の王のぼやき
魔族の国。
その十一代目の王。
実はこの王は別の世界から魔法を使って別の世界からやってきた者。
それどころか、グワラニーをはじめとした現在この世界にいる者たちを導いた魔導書の作成者でもある。
そして、計量の単位や基準を設定したことから「単位王」と呼ばれたこの王の時代から始まった規範や慣習、その多くは別の世界に存在するモラルに準じているのだが、とにかく、現在でも引き継がれているそのようなそのような規範や慣習のひとつがこれである。
戦場に立つのは純魔族のみ。
この時代にはすでに存在していた人間の特徴を色濃く現した「人間種」と呼ばれる魔族。
彼らを戦場に立たせない。
もちろん彼以前にはそのようなことはなかった。
それどころか、純魔族に比べて圧倒的に低い戦闘力しかない人間種の魔族は、囮、または弾除けとして大規模な盗賊狩りの際には便利な道具として盛んに利用、消費されていたのだが、王はこう言ってそれを禁じる。
「日頃、我々は人間の血が入る劣等種と違うなどと威張りながら、肝心なときになると馬鹿にしていた劣等種を盾にしてその影に隠れるなど誇り高き者のやることではない」
軍幹部の面々の前でそう言い放った王は続いてこのような布告をする。
いかなる戦闘においても戦場に立つのは上位種にあたる純魔族の者だけとする。
つまり、人間種の魔族を戦場に立たせたいのであれば、差別をなくし同等とみなさなければならないというわけである。
現在は純魔族とはいえ、もともとは人間であった彼としてはその差別は気分の良いものではなく改善すべきもののひとつと考えていた。
だから、そのお触れとは、本来その差罰をなくすことが目的だった。
だが、結局そちらは進むことなく、当時はもちろん、現在もその命令を守ることが純魔族のアイデンティティであるかのように魔族たちは人間種を背にして戦場に立ち続けているのである。
もちろん、それは彼にとっては想定外。
純魔族の男たちだけが戦場に向かう姿を見ながら、苦笑いし、こう呟いた。
……これは驚き。差別がなくなればと思ったのが、まさかこうなるとは。
……人間種を軍から排除しては将来必ず起きる人間たちの本格的な戦闘では数の差が個々の力では覆せないくらいに大きくなり、不利になるのはあきらか。
……だが、それが彼らの選択なら仕方がない。




