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新たなる甲殻

しばらく更新が止まっていてすみません。


 別に遊んでいたわけではなくて、(人生は遊びみたいなものですが)新しい鎧の設計と作成を行っている最中でございます。


 今回はなぜ新しいものを作ることになったのかという事から、お話を始めたいと思います。


 その鎧を作り始めるきっかけは、ネットオークションで変な鉄板を見つけたからだった。


 それは400×900ミリの長方形の形をした鉄板で、変な色に焼けていた。その色が目に留まったのだった。


 説明欄を見ても鉄板としか書いていない。怪しいと思った。


 普通、日本工業規格なら、ss400であるとか、s45cだとかSPCCだとか規格があるので、それを明記して売るのが普通です。


 鉄は作り方によって特性が異なるため、柔らかいのもあれば、ガチガチに固いのもあって、設計者はその特性を活かして機械を作ります。


 それなのに表示していない。それがどうにも気になって出品者に直接問い合わせたところ『知らない』の一点張り。


 鉄板の焼けた部分は横一列均等に入っていて、それがレーザーによる切断跡だと分かった。出品者はそれがなんなのか知っているはずなのです。物を知らないで切れば、大事故に繋がる案件です。


 どう言うことだと思った。そしてふと、材料名を書けない理由があるのではないか、と思った。


 これがもう天才。自分を誉めたい。勝利確定でございます。BGMを流してくれ。


 材料名がわからない上、錆が浮いていたそれに、結局誰も入札せず、私一人が一般的な鉄の販売価格の半分で落札したそれを、昔のツテを使ってビッカース固さ試験にかけてみた。


 そしたら、もう、笑っちゃった。



 めちゃくちゃ硬いんですよ。こういう鉄板で必要な硬さの遥か上の固さという結果が出てきました。



 自分、結構設計しているので分かってしまうのです。


 そういう鉄板が使われる用途は日本でほぼ、一つだけ。


 装甲車のために使われる鉄板です。


 人生で一度しか、しかも試験の場でしかお目にかかれたことのない非常に珍しいものと特徴が一致したのだった。


 多分これが謎の鉄板の正体である、というのも、国防に関わるものをオークションに出すわけにもいかず、製造を委託された企業は、余った材料を常に抱えた状態にあったわけです。それを不況の影響か、それともミスか、オークションに流してしまった。その内の3枚を私が手に入れたと言うことです。


 まあ、べつにこれで人を殺すためには投げつけたりしないといけないただの鉄板ですので、なんの問題も無いかと思いますが、たまたま、本当にたまたま私は設計者で、しかも鎧を作って着るという趣味を持っていた。



 へへへへへ。運命の出会いって信じるかい? 多分これがそうなのだ。


 問題はこんなに硬い鉄板はどこの業者も加工を引き受けてくれないということだった。


 試しにシャーで切ろうとしたが、僅か5センチ切っただけで、合金の刃がズルムケになった。


 防弾性能は一級品。でも加工しにくさも一級品。



 腕がなるじゃないですか。私は設計者だが、自分で物も作れる設計者だ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに運命 [気になる点] ……大丈夫なの? 手に入れて…… [一言] トンデモナイものが転がっているのがオークション。 とある土地で祀られていたものすらも売りに出される……購入者がどう…
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