この優勝はどのペアか?
最終話です。
本編のネタバレを含みます。
この話はつながっていないので、この話のみを見る場合、問題はありません。
「我、全話既読ナリ」
「へっ! ネタバレ上等!」
「べつにへーきですよー」
という方はどうぞ、ご覧ください。
「やあやあ、真斗くん。――突然ですが、クイズです!」
人のいなくなった放課後の教室で彼女が声をかけた。
「なんの脈絡もないなぁ……」
文庫本を読んでいた彼がうんざり顔で返した。
「僕、これからエビヤくんちに勉強しに行く予定があるから、あんまり付き合えないんだけど」
「だいじょぶじょーぶ。そんなに難問じゃないし、時間がかかるクイズじゃないから」
彼女が出題する。
「つい先日、川沿いのテニスコートにて、第一回性別年齢無差別ペア対抗ラリー合戦が開催されました」
「なんだって?」
「ラリー合戦。ペアを作って球を打ちあって、より多く打ち合えたペアが優勝」
「ああ、なるほど……」
「真斗くんは、これからその場にいた8人のうち、誰と誰がペアだったか。そして、どのチームが優勝したか。それを答えてもらいます」
「なるほど」
「もしも不正解だったら罰ゲームね?」
「急にハードルを三段くらい上げてきたなぁ!?」
「まあまあ、たいしたことは要求しないよ。――それにそれに、もし真斗くんが正解したら、私が罰ゲームを受けよう。受けて立とう! さあ勝負だ!」
彼女がニコニコしていた。
「皆元さん。いくらなんでもノーヒントでは無理だよ? ちゃんと公正なゲーム性のあるクイズにしてくれよ」
「うんうん。わかってるわかめってる。これから私がみんなのラリー合戦後のコメントを再現していくから、それがヒントね。こちらです。――
『おー、ほらほら正志くん。私達、1番じゃん。やったね!』
『ああ、そうだな皆元。ナイス仲良しコンビネーション』親指をグッ。
『やったなトラ。ぼくたち大健闘だ。唯一の小学生コンビで中学生5人中3人を破るなんて』
『そーだねケン。おれたち、年齢の差が戦力の決定的な違いではないことを教えられたよね』
『まあ、順当な順位なわけね。ちょっと克也、あんたちゃんとしなさいよ。締まらないわね』
『ぜえ……、はあ……、ぜえ……、はあ……ぜえ』コメント不可。
『エビヤ兄ちゃんがこんなにバテバテなの、はじめて見たよ』
『そうなのルイくん? でも、うちらのペア、最下位にならなくてよかったね』
はい。以上になります」
「……皆元さん。モノマネは確かに高水準なんだけど、自分で自分のモノマネをするのって、どーなの?」
「私もそれは気になったけどっ! でもでもそれは言わないで! スルーしてよ」
「はいはい……」
「それでそれで、どお? わかった?」
「いや、コレ、簡単じゃないか?」
「ほほう」彼女がニヤニヤしている。
「ペアはそれぞれ相手に声をかけているし、順番通りにペアになってる。――それに優勝は確定している。そして、ケン君が中学生5人中3人よりも上位。鷲尾さんのペアは最下位ではない。これらの条件があれば、もう絞り込める」
「そっかそっか。じゃあ、こっちの紙に予想ペアと予想順位を書いてね」
彼女がルーズリーフを渡した。
彼が記入した。
「はい。それでは、こちらが正解になります!」
彼女が彼に別のルーズリーフを手渡した。
彼女から手渡された紙には、ラリー合戦の結果が記入されていた。
『
優勝 203回
チーム名 エビイ姉弟――アスカ、エビヤ
準優勝 38回
チーム名 ソードビースト――ケン、トラ
3位 12回
チーム名 特になし――ルイ、ネネカ
最下位 2回
チーム名 オールライト――タダシ、ミナモト♥
』
「こんなのわかるかっ!」
彼が文句を言った。
「えー、そんなことないよー」
「ふつうわかんないよ。コメント1発目からいきなりひっかけじゃん」
「うんうん。そだよ? 私の言った1番というのは、最後から1番目ということです」
「そうか。思えば、正志が『ナイス仲良しコンビネーション』とか言って親指グッてやってる時点で不自然だった……。嫌味と皮肉か……てか、2回って、2回って……」
「いやいやー、私が打ち損じちゃってねえ。まさか正志くんからあんなに優しい球が放たれるとは思わなかったもんで」
「そりゃラリー合戦だからね。正志も、打てない球を返さないだろ……」
「あ、そうだ。私がバテていなかったのもヒントだね」
「それヒントじゃないだろ」彼がつっこんだ。「いや逆に、エビヤくんが疲労していたのがヒントだったのか。ラリー合戦なら、打てば打つほど時間が長くなって、体力使うから……。それにしても優勝が圧倒的すぎる……ケタが違うぞ……。あれ、でも、さっきのコメント、それにしてはアスカさんがバテていないんじゃないか?」
「それはエビヤくんの技量だね。アスカが言ったの――
『ちょっと克也。あんた、あたしが返せないような球を打ってくるんじゃないわよ? もしもあたしが返せなかったら、あんたのミスだからね?』
そんな風に、エビヤくんを焚きつけて、彼はすべてアスカの手元に返球するというスゴ技を成し遂げたんだ。かなり左右に振られて走らされたのに、返球は全部フォア。超高く上がったロブも、ネットに絡んだドロップショットも、強力なスマッシュも、明らかなアウト球も」
「それは、エビヤくんが凄すぎるなぁ……。てかラリー合戦でロブやドロップショットを打つなよ……てか、スマッシュっつった? コレ、ラリーだよね?!」
「そうだよ? いやあ、ほんとに、良く返したよねー。あっはっは」
彼女が上機嫌だった。
「さてさてさーて、罰ゲームはどうしようかなー」
ニヤニヤした彼女が煽る。
「皆元さん、勝敗が決まった後で罰ゲーム決めるのはズルじゃないの?」
「いやいや、そんなことはないよ。そういう条件を確認しておくこともゲームの基本――いいや、人生の基本だよ。真斗くん、甘かったねっ」
「まあ、たしかにそうなんだけどさ……」
その甘さにうんざりした彼が溜息をついた。
ニッと彼女が笑んだ。
「よしっ! 決めた。じゃ、ハグにしよう。3分間ハグ」
「は?」彼、困惑。
「ほら、いま冬じゃん。寒いじゃん。だから、帰宅前に温まっておこうと思ってね。――だから真斗くん。私を抱きしめろ」
彼女が腕を大きく広げた。――オラオラこいよ、と挑発しているようだ。
「ちょっ、え、そういうの、アリ?」
「アリだよ。アリ寄りのアリだよ」
「えー」
「ほ、ほらほら、真斗くん。もっと過激なチューとか、キスに変更したっていいんだぜ? そそれれをハグで済ませてあげてるんだから、安いものさね。ほらほら罰ゲームだよ? はやくやくやく。覚悟を決めろよ?」
余裕のない彼女が、両手を広げたまま余裕そうに待ちうける。
「はあ、わかった。……じゃ、そうしよう」
彼が彼女に寄ってゆく。
彼の顔が近付いてくる。
「よしよし、わかればよろし―――――ん。」
息が苦しくなった。
なにか、なんだか、わからない。ただ熱い。
「……ん。え、あえ?」
彼女の瞳には、顔が真っ赤になった彼が映った。
「は、はい。これで罰ゲーム終了ってことで!」
「え、あ、の……これ、って……」
早口の彼に、言葉の出ない彼女。
「だから、罰ゲーム。これで終わりでいいだろ」
「え、いや、私、要求、したの、ハ、ハグ、で……」
「ああ、そうだね。でもこれで懲りたよね?」
そう言った彼が背を向けて、鞄を持った。
「皆元さん、クイズの正解――勝敗くらいは確認した方がいいと思うよ」
そう言った彼は、逃げるように教室から走り去った。
「えっと、……」
ぼーっとする頭を働かせて、彼の記入したルーズリーフを確認。
――結果通りのペアとその順位が記入されていた。全問正解だった。
「ちょっと、あの、え、え、っえぇぇぇええええええええええええええええええええぇ!」
冬の夜、驚き響く心の音。
【END】
最後までお読みくださった方、
本当にお疲れさまでした。
『ツインスタンダードW』
ここに完結です!
ありがとうございましたぁ!




