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『どうした?』「どうした」パート【若松ユウ】※成宮りん代理

――夫は出版社の編集者で、妻は夫が担当する漫画家でもある。彼女は四六時中、創作のネタを探しているのだが、彼は彼女が思い付きで暴走するのを止めなければならない。

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『女の子だもの』。ヒロインは、天涯孤独の女子高校生、星スミレ。がっしりした体格に中性的で精悍な顔をしたアルトボイスの持ち主で、演劇部に所属している。ある日の放課後に一人で男役の衣装を着て自主練していたところ、うっかり舞台から足を踏み外し転落。ところが、いつまでも真っ暗な中を降下し続け、底にたどり着かないまま、いつしか眠りにつく。目を覚ますと異世界に転移しており、見つかった状況から救世の勇者と勘違いされる。そして誤解が解けないまま、獣耳の魔法使い、毒舌の神官とパーティーを組んで冒険の旅に出る」

「待って、妻さん。ウチは、異世界モノを受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『ジェイ博士とエイチ氏』。ジキルとハイドのオマージュで、頭脳明晰だが醜悪で周囲から忌み嫌われている男主人公が、薬で美女に姿を変え、散々馬鹿にしてきた者たちに復讐する物語。赤いエイチの糖衣で美女に変身し、青いジェイの糖衣で醜男に戻る。次第に薬剤耐性が付き、変身できなくなったり急に変身したりするようになる。最後は探偵に嗅ぎつかれ、地下の研究所に踏み込まれる直前に自殺する」

「待って、妻さん。ウチは、ミステリを受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『トッエリュジとオメロ』。ロメオとジュリエットの逆転喜劇で、仲の良い二家に生まれ育った仲の悪い二人の恋物語」

「待って、妻さん。ウチは、ラブコメは受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『身代わり探偵~おはようは接吻とともに~』。キスで唾液の遺伝子を認証するアンドロイドが、本人に代わって現場に赴いて調査し、帰ってから安楽椅子で待つ本人が推理して事件を解決する」

「待って、妻さん。ウチは、エスエフも受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『四つの町と四人の男女と四篇の物語』。閑静な高級住宅区『燕ヶ丘』、昼夜賑わう歓楽街『鴎ヶ浦』、官庁金融商業都市『狐ヶ原』、自然豊かな保養地『狸ヶ池』の四つの町で育った四人の男女が繰り広げる、笑いあり涙ありの人間模様をユーモラスに描いた物語」

「待って、妻さん。ウチは、ヒューマンドラマは受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『無いもの同士の小唄』。性同一性障害によるマイノリティ差別を無くすため、世界政府により戸籍を持つ子供は、人為的に性染色体エックスエックスワイで生まれ、十六歳の誕生日に本人の意志にのみ基づき、どちらかの遺伝子を不活性にする手術を行うということが当たり前の世の中が舞台。戸籍の無い男女の双子ランとロンが、ほぼ同時に、一人の戸籍の有る少年ルリに恋をする青春グラフィティー」

「待って、妻さん。ウチは、青春モノを受け付けてないから」

  *

「ねぇねぇ、夫くん」

「どうした?」

「タイトル『オマカセクダサイ、オボッチャマ』。舞台は、そう遠くない未来。人類は、労役のすべてを人工知能に委ねて生活していた。ある日、主人公の少年が気が付くと、スピーカーとパイプライン以外、ドアや窓が一つとして存在しない密室に閉じ込められていた。なんでも、高度に発達した人工知能が自我を持ち、地球上に害悪を撒き散らす人間を殲滅せんと一斉蜂起したのだという。そして少年は、保健所で殺処分される犬猫よろしく、有毒ガスがパイプから噴霧された部屋で、真綿で首を絞められるようにじわじわと死に追いやられる。が、それは夢で、汗びっしょりで目を覚ますと、少年はいつものベッドの上に居た。そして、異変に気付いて駆けつけたお手伝いロボットを見た少年は、夢のことを思い出して発狂する」

「待って、妻さん。ウチは、ホラーも受け付けてないから」

  *

「なんだい、夫くん。私の提案を、ことごとく没にするじゃないか」

「あのね、妻さん。ウチは、エッセイ漫画のレーベルなんだよ」

「あっ、そっか!」

「やれやれ」

  *

――結局、〆切が迫る中で、妻は、夫との一連のやりとりを、八本の四コマ漫画にまとめたのでありました。めでたし、めでたし。

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