ミズタマリ
「うれしい・・・今日はまた、雨だ・・・」
真友の顔がぱあっと輝く。
あの日――――――――――――木坂と雨宿りをした日から、雨の日には木坂と何かが起きる。真友は、雨の日が大好きになった。
ところが――――――・・・
「うそ・・・」
3時間目の時点で、雨はやんでいた。
「うっしゃー、雨やんだー!これで外で遊べるな‼」
「残念だけど、木坂。道は水たまりだらけ、遊べるとこなんて、ないと思うぜー」
「ががががーーーん‼」
真友はその会話を聞いて、ちょっと寂しくなった。
(そっか、まあ、そうだよね・・・木坂くんは、晴れの日のほうが、好きなのかな・・・)
帰り道。
音葉とバイバイをして、いつものように道を歩いていると・・・
「おーい、有岡ー‼」
「え・・・?木坂・・・く、ん」
真友は驚いて、また声が出なくなった。
「一緒に帰ろうぜー」
「あ・・っ、うん」
雨が降ってなくても、雨の日は、私にとって、うれしい日―――・・・
真友はそう思った。
「水たまりでっけーな」
「う、うん、そう・・・だね・・・」
「俺小さい頃は、水たまり飛び越えんの大好きで。でも最近、さすがにやめたけど!あははっ、俺、今も飛んでたら、ちょー面白いやつだな」
「木坂くんは、元から面白いよ。・・・そういうところ、私、・・・き・・・」
「え?」
木坂は不思議そうに、真友にたずねた。
「今、なんて――――」
「・・・」
真友がその質問に答えることは、なかったけれど。
「じゃあ、俺、久しぶりに飛び越えちゃおっかなー」
「うん・・・」
ピョンッ!
「あっ、やべ――――――有岡、よけて‼」
「え」
バシャ―ーン‼
木坂は失敗し・・・靴がびしょぬれに。
「きゃあっ」
「・・・有岡⁉」
木坂ははっとして、真友のほうに目を向けた。
「・・・つ、冷たい・・・」
「ごめん、ほんと・・・ごめん‼有岡、スカート・・・びっしょ・・・」
真友のスカートは、ひどくぬれていた。
「ごめ、ごめん。大丈夫か?」
「うん・・・だ、だい・・・じょうぶ・・・」
木坂くん、近い・・・真友の顔は赤くなっていた。
「俺ん家で、妹のスカートでも貸すか?」
「え・・・っ、いやいやいや、いいいいい、いいっ‼」
真友はブンブン首を振った。
「あ、いや。有岡が俺ん家に来るんじゃなくて・・・っ、あーーーっ‼」
木坂も、顔が赤くなる。
「俺が、とってこよーか、ってことで・・・」
「あ、ああ、そういう・・・うん・・・いや、大丈夫・・・」
「じゃあ、隠す」
さっと、木坂は真友の隣に立つ。
・・・前よりも、ずっと近い距離で・・・。
「水たまり・・・いっぱいあんな・・・」
「・・・あ、うん」
「もう見たくねー、水たまりめー‼」
木坂くん、私は、ちょっとうれしいの。
木坂くんは――――――――?
「木坂、くん。あの、木坂くんは・・・」
「ん?」
「雨の日、好き・・・?」
「俺かー。雨の日・・・うーん」
木坂は考えに考えて・・・こういった。
「ふつー。晴れの日のほうが、好きかな」
「・・・そっか」
真友は、下を向いた。
「でさ、有岡。・・・これがさー・・・」
木坂と話をしても、真友が顔を上げることは、なかった。