アメアガリ
「・・・?」
起きると、そこは見覚えのない場所だった。
「あ、有岡。起きたか」
「え、きさ・・・くん?」
おどろいていると、木坂は隣に座って、話しだした。
「昨日、有岡の彼氏?が、来ただろ。・・・俺それ見たら、なんでか知んねーけど、有岡を連れて走り出しちゃって。・・・有岡の家も通り過ぎたし、この大雨の中を戻るのも、あれだから、俺の家来たんだ」
「え?ここ・・・って・・・木坂くんの・・・家?」
「でも、ほんとうは。ほんとのホントは、俺が・・・」
木坂はそこまで言って、言葉を飲み込んだ。
「・・・わた・・・より、・・とはを、つれて・・・なよ」
「え?」
「わたしなんかより、・・・音葉・・・」
木坂は黙って、真友を見つめた。
「最近、井上とケンカでもしたのか?」
「え・・・あ、ケンカ・・・っていうか・・・」
・・・もともと、私たち、心友なんかじゃなかったんだって。
「・・・俺、実は、井上のこと、もう好きじゃない」
「えっ・・・」
・・・なんで・・・。
「で、っ、でも、音葉は、・・・ほんとに・・・・・きだよ」
「井上の気持ちは見てりゃ分かるよ。でも、・・・有岡に色々ひどいこと言ってるし。・・・俺、2人には仲良くしてほしかった・・・。でも、井上のせいで壊れちゃった、だから、もう・・・」
・・・木坂くんは・・・私のためを思って・・・?
真友の顔が赤くなる。
「・・・あ」
「ん?」
外を見ると・・・蓮が立っていた。
「蓮くん⁉なんで・・・」
「行って来いよ。カレシんとこ」
・・・。
「木坂くん、・・・がうの。ちが・・・て、私・・・」
・・・だめだ。
音葉がいると思ったら、もう、この気持ちを伝えられない。
「・・・私、行くね・・・」
真友は、木坂の家を出て行った。
「真友先輩」
「れ・・・くん」
蓮は、チラッと上を見た。
「・・・どうして気持ち伝えないんですか?伝えてくれたほうが、僕も、この恋諦められるんです。なのに、どうして・・・」
「・・・音葉が、いるから」
真友の口からぽろっと言葉が出た。
「音葉がいるから・・・私、音葉のことをまだ心友って思ってる自分がどこかにいて・・・。心友の、好きな人―――――ましてやカレシ、たとえその彼氏が別のほうを向いてたとしても――――――そんなの、私にはできない」
真友はそう言って、まっすぐ、蓮を見つめた。
「蓮くん・・・だけじゃ、・・くて・・・私、も・・・恋、・・・きらめたい」
「真友先輩・・・?」
蓮は心配そうに、真友を見つめる。
「私、決めた」
「・・・」
「蓮くん・・・。私と、・・・付き合ってください」
・・・蓮と真友の間に、じめじめしている、雨上がりの時の風が吹いた。
・・・やがて、蓮は・・・首を、ゆっくりと、縦に、・・・ふった。




