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第四夜
今日は珍しく琥珀のもとへは二人が来ていた。
相変わらず御影は変なタイトルの本を読み、千優は編み物をしている。
何を喋るでもないこんな沈黙が三人にとっては当たり前で愛しい日常だった。
琥珀は二人を見ていて気づいてしまった。千優が誰にむけてそのマフラーを編んでいるのかを。
以前千優に問いかけたとき千優は渡す気はないとそう言っていた。
どうしてと問いかけることはしなかった。ならどうして届かないのに編むのか不思議だった。
そして琥珀は気づく。千優は御影のことが好きなのではないかと。
琥珀はそっと微笑んだ。思いもよらぬところに二人を幸福にできるものがあったのかもしれないと。
お節介かもしれないけど自分にできることをしよう。琥珀はそう決めた。
二人が一緒にいてくれるなら自分も幸福だからそう微笑んで。