3/9
第三夜
昨日は御影が来て今日はどちらも来れないと電話が来ていた。
琥珀は独り窓の外を眺めた。今日は独りきりなのだとそう感じながら。
二人を思えば想うほどに自分は枷なのだとそう感じる。
二人は問いかければきっとそうではないと言うだろうけど自分はそれを信じられないだろう。
何れ遅かれ早かれ終わる自分に二人を縛り付けてはならない。そう深く思う。
そして今から準備を琥珀はするのだ。措いていく準備を。
手紙を書こう。二人に手紙を…。この先も生きていけるように。そんな願いを籠めて。
二人を愛しく想う。そして愛しいゆえにずっと一緒にはいられない。
琥珀はぽつりと零す。祈りの言の葉を。
「叶うなら二人の子供に生まれたかったな」
そう呟いた言葉に琥珀は笑った。叶うはずない。そう想うから。
両親はきっと死ぬときにもこの冷たい部屋に来ることはない。そう確信していた。
二人にとって自分はでき損ないで失敗作なのだから。
妹が生まれたと知っていた。だけれど自分は妹の名を知らない。
そして妹も兄がいるなど知らないだろう。歪な家族。其れが何処か滑稽だった。
でも自分には御影と千優がいてくれた。その幸福を噛みしめて琥珀は微笑む。
その笑みは何処までも儚く消え入りそうなまでに幸福そうな笑みだった。




