第10話 婆ちゃんの墓 2
俺達はレックスのステーキを食べ終えた。
ふぅ……
俺と龍影は両手をそれぞれ合わせた。
「「ご馳走様でした。」」
ま、これでHP2だったのが、なんとか赤色を脱した程度にはなったか…。
ちょっと眠たくなってきたが、まだ動ける…。
今はこれで良いだろ…。
俺は国王の方に振り向いたんだ。
「で?国王…、婆ちゃんとアンタと結衣…。この名前の配列、敢えてだよな?夜や黒を連想させてるし……。それに、2代目国王だったアンタが、"婆ちゃんの子として居るのも"、今の俺から見たら不自然だ…。」
……
「この件……"龍影も含んで、家族全員関わっているな"?……全員、"知っていて、敢えて助けに来なかったのか"…?」
俺は、国王に睨みを効かせたんだ…。龍影はコップを置き、真剣に俺を見つめている。
国王は閉じていた目を開き、俺と目を合わせてきた。
「……皆が知っているのは、龍影がディオラによって造られた人造人間である事と、私自身が皆よりも長寿であるが故に、国を統治する者として、国民達から寿命の概念を疑問視されない為に、"敢えて姿を変えつつ、養子を迎え入れ、交互に統治する"。そして、私が再びディオラを孕むのに必要な期間は2000年である。という内容です。」
「そして、"クレン山脈で長年別れていた八獣界と人間界では生態系が違う"。という内容です。獣王の中には雷虎を含み数名、この説明で疑問を持っていましたが、"無理やり理解させました"。ですので、"魂の使い回しについては、龍影以外は知りません"。」
「そして……結衣の誘拐の後、私は…表向きは必死に探している風に見せていましたが、あの日の1週間後、流石に獣王の皆と龍影には勘付かれたので、リビングで夕食の前に問いだたされました。」
「しかし、"既に必要な物"は別空間にしまっていましたので、"龍影の判断により、半殺しにされただけ"で、生かされ、貴方が出てくるのを待っておりました。」
国王の目は真剣そのものだ……。嘘はついて無いし、筋も通ってる…。
俺は龍影に振り向かず、敢えて口だけ開いた。
「龍影…、…国王の態度で、お前達は"国王が誘拐を仕組み、俺が何らかの形で戻る事を悟った"…。そうだな?」
龍影はあぐらをしつつ、頭を一番深く下げた。
そして、両手は強く強く握り締められていた。
「"はい"……。当時の国王の態度で、国王を殺すのは私達ではない、と悟りました。そして、家族と相談し、"国王を敢えてそのまま居させる"事が、決まりました。」
龍影は、体を震わせてしまった…。
「結衣を助け出したい気持ちは、私を含め、皆持っておりました……。ですが、入口の鍵を知らない異空間に入れられては、"私達は手出しが出来ず"……、国王を殺す事は、異空間の消滅の可能性と、貴方様が戻ってこられた際の"怒りの矛先"が無くなる事を意味しておりましたので、この采配が最善であると考えました。」
龍影が…、頑張って涙を耐えているのが分かった…。
俺は龍影の前にしゃがみ込み、右手で龍影の頭をワシャワシャと撫でたんだ。
「……龍影…、"国王を殺さなくて、ありがとうな"…。…色々助かった…。"流石、俺の右腕だ"…。」
俺は微笑んだだけのつもりだったが、思わず、涙目でニッとしてしまったんだ。
でも、龍影はずっと震えていて、大柄のくせに、身体は小さく見えていた。
「結衣を……助け出す事が出来なくて、申し訳あ」
「バーカ」
「えっ……!?」
龍影が頭を上げると、主がニシシっと笑っていた。
声が…、出ない…。
「"お前は…お前達は、やれる事をやってくれた"んだろ?…そんなの、怒れねーだろうがよ。理由は分かった…。"それだけで十分だ"。……"お前が白で良かったよ"…。」
「……龍影、バカと言った事謝るわ。"俺はお前を疑ってしまった"…。バカなのは俺だ…。"許せ"。」
!…主に、結衣が重なって見える…。
ああ……、"結衣"だ…。結衣が中にいる……。そうか…、この御方はディオラ様であり、結衣なんだ…。
龍影は、改めて深く頭を下げた。
「"勿論です"…。あの…主よ、私から一つお伺いしても宜しいでしょうか?」
「ん?何だ?てか、そんなに堅くならなくて良いぞ。別に怒られねーし、"怒る気力も無いしな"…。余計疲れるから、せめて、"結衣の時みたいに、軽い敬語程度にしてくれ"…。」
結衣の時も常に敬語で接せられてたが、こんな堅苦しくはなかったんだ…。まぁ、龍影を造ったのが150億年くらい前で、そっから2000年前までずっっと堅かったが、結衣の時が一番直近だしな…。だから、龍影のコレが、窮屈に感じて仕方がないんだ。
「!…ご、"御命令として"、受け取っても宜しいでしょうか…?」
龍影が冷や汗が、コメカミから垂れているのが見える…。張り詰め過ぎだ…。
俺は左手で自分の顔をおおったんだ。
「はぁ…、ああ、"命令だ"…。……ても、お前の好きな方を選べ…。無理強いはしない…。」
「!…フフッ…、"分かりました"。 無理強いも何も、私は主が全てなので、主の意向に従いますよ。」
龍影の肩から力が抜け、微笑みが混じった穏やかな顔になったんだ。
そうそう…、この表情…。"龍影さん"だ…。俺はつい、目尻が熱くなったんだ…。
「おや…、どうしました?」
龍影がニヤニヤしながら言ってきた…。
やめろ…、追い討ちをかけるなって…!!分かってて言ってるだろ!!
「べ、別に何でもねぇよ…。」
俺は思わず、ぷいっと視線を逸らし、メルの方を向いたんだ。
「国王、…道案内しろ。」
この暗さが無ければ、俺の頬は少し色がかっていただろうな…。暗くて良かった…。
「承知致しました。"先導させて頂きます"。」
こうして、俺と龍影は国王について行く事になったんだ。
俺達は本殿入口に続く階段を登り、メルの中に入った。
ーーー春華大国国王の代々の墓がある神殿、メルーー
ここの構造は特殊で、"メル内の構造を把握してないと、下手したら出られない構造"だ。まぁ、ぶっちゃけほぼ一本道なんだが、何せ見た目は上下左右…"全方位プラネタリウム状態"だからな…。"空間構造を把握してないと、何処に足場があって、何処が壁なのか、見た目では分からないレベル"だ。
だから、慣れてはいるが、毎回集中しないと上には行けないから、さっきの食事はマジで助かったんだ。
ここに来ると、異様に疲れる…。
俺達は足元に注意しながら、先ずは角度が急な階段を下り始めた。
「あ、そうだ。龍影、"お前なら、国王を自由に使って良いぞ"。但し、"肉体的にも精神的にも傷つけるな"。それが条件な。」
「!えっ…!?」
主が、ニッとまた笑顔を見せながら言ってきた。
俺は国王の方に向いた。
「国王、"今更文句ねぇよな"?」
「はい。"龍影様"、何なりと御命じ下さい。」
迷惑をかけてしまったし…、そして何より、"どんな命令でも、私は逆らえない"しね…。
「…"分かりました"。主よ、ありがたく使わせてもらいます。」
使う気は満々だったが、許可が出るの早過ぎじゃないか?
「ああ…、"大切に使ってくれ"。」
さっき、龍影の頭を触った時に改めて思ったが、コイツの国王に対する怒りは凄いからな…。2人の立場的にも全く問題無いし、なにより"龍影だ"…。辛く当たらなければ、まぁ、問題無いだろ…。もしあれば、直ぐに言えるしな。
「!!?…では、"無理をさせない範囲内で"、という事で宜しいですか?」
はめられた…。"こんな大罪人奴隷を"酷使も出来ないし、雑に扱えなくなったって事だ…。だが…まぁ、"主にとってそういう存在なら"、仕方がない…。
さて、分岐が見えてきた…。
正直、ここを間違えると、かなりヤバい。
このまま下ると地下室一直線だが、途中に上に行く狭い分岐点があり、ここを登るんだ…。後は曲がりくねる坂道を登り、"王の間"へ続く急な坂道を登れば辿り着く…。コレが正規ルートなんだが…。
この途中にあるのか?
俺達は分岐を登り、曲がりくねる登り坂を進んだ。
あるとしたら、この辺だよな…。
そう思っていると、国王が止まり、俺に振り向いてきた。
「"到着でございます"。」
俺は龍影の顔を見ると、頷いてきたんだ。




