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白と黒の世界  作者: 永流
序章 創造と寿命
13/42

第0.75話 王の食事と決断5(クレン山脈の大加工 前半)

挿絵(By みてみん)

大昔から…龍と共に空を統べる種族、"鳥族"がいた。


鳥族は空を統べると言いつつ、天を統べる龍族とは違い、殆どの民は地上付近を飛び、高位種族になればなるほど、飛べる高度も高くなっていた。


そして、鳥王アリス・コルゴやかつての鳥王達は、1万mある山頂までなんとか翔ぶ事が出来た。だが、決して、山を越えようとはしなかった。


それは、山向こうに"次元の違う強さの気配を持つ集団がいたから"に、他ならない。鳥族も龍族も、山向こうにある春華大国の動向を気にして、偵察を送ろうとしたが、偵察がバレた時の滅亡のリスクが高く、また進軍の可能性が当時は無かった為、"触らぬ神に祟りなし"と言わんばかりに、注視だけしていた。



そして1ヶ月と少し前…、その異次元の国の王がたった数日という間に八ヶ国を統一した……これが、春華大国の国王ディオラである。



そしてーーー春華には"神の概念"がない。


これは、創造神(ディオラ)の意向で、本人にその気がないのだ…。本人は、"何も守れずこちら側の世界に逃げてきた自分を、今更崇めるな!!"というのが、ぶっちゃけた本音であり、"自分に神の資格など無い"と本気で思っていた。


それ故に、"自分(ダーラ)信仰"については余計に頭を悩ませてしまう事となっていたのだ。



鳥王アリスの身体が震え、目は怯えている。


(ディオラ)「…そうか、"山が信仰の地"なのか…。…信仰は自由だ。"否定はしない"…。アリスよ、驚かせてすまなかったな…。俺はただ、春華と八ヶ国が交流しやすいように、この"昔閉じた壁"を開けようとしただけなんだ…。"民達が大切にしている場所"なら、そこは避けよう。だが、本当に州の山全部の範囲か?一応、海に面している所以外は、3000m以下にはしないつもりだし、上の雪が無くなっては水資源も無くなるから、切った断面に池を掘り造ろうと思うんだが、どうだ?」

龍輝達もこの高さは余裕そうだしな…。それに、3000mってのは、"鳥族も無視できないだろ"?


国王(おれ)はつい口角を上げ、ニヤッとしたんだ。



!!!?

アリスは目を見開き、アリスの衛兵達もお互いの顔を見合せた。


ア「3000m…確かに、それなら雨雲が山頂で雨を降らし、水源が保たれるわね…。それに、その高さなら、ある程度多くの鳥の民達も行き来が出来るわね…。で、でも、その寺院は5000mの位置にあるわ…。」

む、"昔閉じた壁"ってどういう事?!それに……ディオラ……って、に…"人間にしてはやたら長寿"だと聞いてはいたけど……、まさ…か…!?


王「……アリスよ、その寺院は鳥州に面してる山脈全てが範囲なのか?違うなら、その寺院は"民に親しまれているダーラ神への敬意として、寺院の山脈部分は残そう"。他の部分は3000mの山脈と池でどうだ?水路は後々掘れば良いだろ?ククク…ダーラ神…、"姿は見えないが"、ダーラ神の代役として、山の恵を民に還元してやろうじゃないか…。」

いや本当…、今から寺院行くとか勘弁してくれ…。せめて"後"だ…。


アリスの額から、一筋の汗が顎に伝って落ちる…。


ア「じ、寺院を中心に…上は頂上まで、両端の距離は100kmよ……。ね、ねぇディオラ…聞いても良い?貴方って……1ヶ月前の和平の時以外で、こ、こちら側に来た事ある?」

も、もしかしたら…"御本人"では?


王「ん?…"場所にもよる"が、昔っから修行の為に何回も通っているぞ…。で、空腹時は配下共に動物の狩りを命じて食べていたな…。アリスよ、お前…"俺をダーラ神かもって思っているのか"?」


ア「!?うっ…!な、ななななな何故それを?!」

図星過ぎて、言葉が焦ってしまうわ…。王として、冷静にならないといけないのは分かっているけど!!"こればっかりは"無理!!


王「…いや…、気にしてるようだったからな…。なぁアリスよ、山斬って一区切りしたら、その寺院に行っても良いか?…俺も、"確かめたい"んだ…。」

まぁ、どーせ俺なんだろうが、違うかもしれないし…。一応確認をしておこう…。


ア「も、勿論よ!寺院全て…、"壁画"も見てちょうだい。"ダーラ様の御姿"も描かれているの…。と言っても、髪の毛は白だけど、それ以外の肌は黒く塗られているし、ディオラの面影も分からない…。でも、"可能性も否めない"のも事実だから…。私からも、お願いするわ。」

人間族って、高齢者以外は髪の色は黒よね…。ディオラも以前は黒かったのかな…?もし…白なら、可能性あるわよね…。



国王(ディオラ)の思考

…それ、絶対俺だ…!!い、いやいやいやいや…、壁画を見てから答えよう…。可能性が上がっただけだ。それに、肌が黒いというのが分からん…。……まぁ、見てみたら分かるか…。


王「…わ、分かった…。…アリスよ、その寺院の敷地の端に案内してくれ。"そこから斬ろう"。

こちらからじゃ分からんからな…。それに、アリスが示す事で、"その場所は鳥王(アリス)公認となる"からな…。


ア「い、良いけど…、1度頂上を越える事になるわよ?私はなんとか頂上を通れるし、龍輝も通れるでしょうけど…夜になってしまうわよ?」

夜…人間界の夜は、この山脈のせいで八獣界(やじゅうかい)よりかなり早く始まる…。


王「ん?……まぁ、"どうせ斬るから良いか"…。龍輝よ、標高3500mくらいまで飛んでくれ。"即席の貫通穴を開けるからよ"。」

上まで行ったら時間がかかるからな…。


ガタガタガタガタ……


龍輝と陽毬の巨体が、上昇しながら震え出した。


ア「!?」

こ、この龍輝達(ふたり)が…、怯えてる!?


龍輝「ディ、ディオラよ?ま、また"ワシ"を…!?」

た、確かにディオラが可能なのは身を持って知っているが…!!


王「ん?んな訳無いだろ…。"ただの正拳突き"だ。それで、短時間で済む…。」



この瞬間、皆の目が見開き、顔が真っ青になってしまったんだ。


…あ。

王「おい零よ、3500mなら、幅ってどれくらいだ?」

標高ゼロ地点の山幅は約20kmだからな…。


零「た、多少風化したり変形はしていると思いますが、ざっと8kmあれば貫通出来ると思います!」

の、喉にオーラを宿す…。こんなもんで良いのか?


王「!おー流石零だな…。お前の声も一発で聞こえるぞ。ありがとう。それで突くとしよう。」


(ディオラ)の口角がニヤッと上がり、首を左右に振ってコキコキッと鳴らし、右手を握ったり開いたりしている。


零「国王(あるじ)よ!"もう昔じゃないんですから!くれぐれもやり過ぎないで下さいよ"!!」

これ(オーラ拡声)便利過ぎるだろ!!全く…どーせ"焼き石に水"だが、釘は刺しておこう!!



国王(ディオラ)は零に返事をせず、「よいしょ」と立ち上がり、アリスとその衛兵達に右手で"少しどいてくれ"という感じで右手で払うように振り、山の方を向いて、左足を前に出し右手を軽く上げ、"無気力状態で"、スッっと正拳の構えをしたのだ。そしてこの瞬間、龍輝はトラウマを呼び起こされたように上昇を止め、背筋を凍らせた。


零「話し聞いてます!?」

これ、絶対聞いていないやつだ!!てか、無視しないで下さい!!


龍輝「アリス!!"陽毬側に退避しろ!!"」

これはまずいぞ!!"あの正拳"だ!!そんな少し避けただけでは、"鳥族は巻き添えを喰らうぞ"!?


ア「!!?(配下達に対し)退避!!!」

え!?"あんなに無気力"なのに!?で、でも龍輝のあんな必死な顔は冗談じゃないわね。


バサバサバサッ…!!!

アリスとその衛兵達は慌てて陽毬側に避難をした。



龍輝は、"この親子の恐ろしさ"を知っていたーーー。

この親子とそれぞれ戦った際、ローラは龍輝の咆哮を丸め込み、ディオラは龍輝が攻撃を向けた瞬間に龍輝に正拳を放ち、クレン山脈を"2度貫通"し、ディオラが1歩も移動する事なく、その右手で吹っ飛んで来た龍輝を受け止めていたのだ。


そうーーー、龍輝はディオラに正拳で殴られ、惑星を一周していたいのだ。



殴るーーーではなく、"流れを整え、通す"。


これが、この親子が大切にしている"心得かまえ"だった。


龍輝は上昇こそ止めていたが、上空で完全停滞は出来ない為、必要最低限翼を動かし、そのタイミングと翼の勢いの流れを目を閉じながら見計らっていた。


そしてーー


バサァッっとした瞬間に龍輝の身体が持ち上がり、その首は一旦下がり、コンマ数秒後、首がグッと持ち上がった瞬間にディオラは目を開け、足、腰、背中、腕、拳に力を入れ、"目線を少し上に向けて"思いっきり正拳を放った。


ブゥンッッッ…!!!


ただのエア正拳……の筈がない。それは全員が分かっていたが、何も起こらず、ただ国王ディオラが「ふぅ〜…まぁ、こんなもんで良いだろ。」と言いつつ、再び龍輝の頭にドカッと胡座あぐらを組んで座り込んだ。


皆、山から目が離せなかった。



……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオ!!!


山から地鳴りが鳴り響き、その山を見ていた全ての者が、山の変化を見逃さまいと、目を凝らし、じっと見つめた。


バキバキバキバキッッ…ゴリゴリゴリゴリッ!


目の前の山の木々が折れ、その"圧"に負けて粉々になっていき、次第に山が凹み始め、その凹みは大きくなり直径200mの円が出現……、そしてーーーーー


ドッッッオオオオオオオオオオンンン……!!!!


その瞬間、皆はあまりの眩しさに目を閉じてしまい、恐る恐る目を開けた。


!!!??


"無い"!!


そこにあった200mの凹みが完全に無くなり、向こう側から陽光が差し込んでいた。


王「よし、行こう。」


皆「「「ええええええええ〜!!!」」」


ア「あ……ほ、本当に…"貫通した"!!」


龍輝「…だ……だから、"言っただろ"?退避しろって…。ディ、ディオラよ、あれ…、途中で崩れたりしないのか?」

生き埋めは御免だぞ?


王「"大丈夫だ"。あの山自体、かなり圧縮して頑丈に造ってあるし、"突きでも穴の表面を圧縮している"から、数ヶ月は簡単に耐える。…まぁ、どうせ直ぐ斬って消すが、皆が通るトンネルをそうやわには作らねぇよ。」


ア「や、山の土砂は…、どうなったの?向こう側に出したの?」

じ…、次元が違い過ぎる!!山を斬る…そんな事、ダーラ神の可能性があっても半分…出来ないと思ってた…。た、ただの正拳でこんな事…。


王「ん?衝撃波で粉砕して、"空の上に吹っ飛ばしたんだ"…。そのまま貫通しただけだと向こう側に被害が出るからな…。山を造った時から知っていたが、龍輝をタイマンで吹っ飛ばして戻ってきた時に、この星は丸いと証明出来たし、太陽が向こう側に沈んだから、今回の正拳で向こう側の空の上に吹っ飛ばしやすいと思ったんだ…。それに、地上に吹っ飛ばしたら、被害が出るだろ?だから、上に吹き飛ばしたんだ。」

何か、皆凄い口を開けてるし、零は右手で顔を覆っているし…やり過ぎたか?…まぁ良いか。


アリスや他の皆は、口を閉じる事を忘れ、驚き過ぎて声を失っていた。


ディオラはやれやれと思いつつ、左手で右手の甲に触れ、その感触を確かめながらアリスを見つめた。


王「アリス、もう一度言う。"案内してくれ"。」


国王ディオラの言葉に重みが増し、アリスのその瞳には、ディオラが別人に見えた。


ア「も…、勿論よ…。や、山は…約束さえ守ってくれたら、私は他に異論は無いわ…。好きにしてちょうだい…。」


アリスの中では、ディオラとダーラ神が同一人物であるという格率がますます上がり、逆に本人じゃない事を探すのを半ば諦めていた…。幼少より、その伝承を聞かされ、鳥州では"絶対神"として崇められ、畏れられていた人物……それが、"目の前にいる"。そうとしか、思えなかった。



こうして、アリスとその衛兵が先導して山脈の穴を通り抜けると穴の下は海で、そのまま寺院の境界線へと向うと、海岸が見えた。そう……寺院の片端は海岸であり、海から急斜面の山が異様にそびえ立っていた。


ア「あの海岸の端よ!」

ほ、本当に斬るんだよね?!


王「分かった…。龍輝、あの海岸の上3000mまで行ってくれ。"3回斬り込んだらだいたい形になるだろ"。」

まぁ多少別の力を使うが、あれ使わねーと、この土片付かないよな…。


龍輝「わ、分かった…。」

つまり、少し下降すれば良いだけか…。


バサァッ…!!!

龍輝は翼を羽ばたかせ、現地を目指す。そして…その頭に乗っていた国王ディオラはまた、左手で右手を触っていた…。


そしてーーーー


国王ディオラは右手先に操作用の青色オーラを宿し、胸元の襟の重ね部分を少しギュッっと引っ張り、緩め、右手を胸に当てた。


ローラ「ディオラ!!止めなさ」


ドッッッッックッッウン!!!!


ローラの制止が間に合わず、国王ディオラの鼓動が鳴り響き、首や顔、腕から手、足にその血が行き渡る…。


王「そう、心配するな…。全開はしない。山が思ったより固かったから、"今の力を試すのに、丁度良いと思ってな"…。せいぜい、"零割一分(1%)"だ。」


ディオラの身体から、オレンジ色のオーラが漏れだし、それは直ぐに制御されてディオラの表面にオレンジ色の輝きを作り、その刀のさやの付け根を左手で持ち支え、右手で刀をスーーっと抜き、オレンジ色のオーラがその刃全体に宿る。


ローラと零の顔が青くなり、アリスと衛兵はもう…、ディオラに頭を下げ、拝んでいた…。


そして、ディオラの身体にこれだけのエネルギー…これだけの血流が全身を駆け巡っているのに、その息は静かで、落ち着き、国王ディオラは目線を鳥州の反対側の山に向け、その身の力を抜きつつ、刀を構えた。

挿絵(By みてみん)

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