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スキルが、進化だと!?

お待たせしました!第2章始まりです。

数日後の朝、夜明けと共に、リョウたちは村を出発する準備を整えていた。

村人たちが見送りに集まり、リョウに感謝と激励の言葉を贈る。

「リョウ兄ちゃん、達者でな!また美味いもの作りに来てくれよ!」

子供たちが声を弾ませて手を振る。


リョウは彼らの笑顔に、この村で過ごした温かい日々を思い出し、胸が熱くなった。

( 本当に、みんな温かかったな……まるで実家みたいだ )

「みんな、ありがとう!きっとまた来るよ!その時は新しいメニューも増えてるからな!」

リョウは手を振り返し、3人の荷物を確認してから、リヤカー型に変形した屋台の荷台に乗り込んだ。


リオンは巨大なトラの姿に変身し、リヤカーの柄をしっかりと咥え、ガウルは牛の獣人の姿のままその横に並び立つ。

ガウルは、リオンよりもひと回り大きな体で、当初は彼がリヤカーを引く役目を買って出ていたが、リオンが自ら先導役を買って出たのだ。

「俺が引っ張る方が絵になるだろ?」

とでも言いたげな顔で。


「さあ、行くぞ、リョウ!ガウル、頼むぞ!最高の飯のためだ!」

リオンの声に、ガウルが力強く頷く。

リオンは、その強靭な足でゆっくりと歩き始め、リヤカーとなった屋台もそれに続いて動き出した。

草原の柔らかい土を踏みしめ、車輪が規則的な音を立てる。

ガウルはその横を歩きながら、警戒するように周囲に目を光らせていた。

その姿はまるで、リョウの護衛というよりは、屋台の食材を守る番犬のようだ。


( 頼もしいな、二人とも……これなら安心だ。あとは俺が美味しい飯を作るだけ! )

彼らの旅路は、広大な草原を横切り、やがて遠くに見える森へと続いていく。

朝日に照らされた景色は、希望に満ちた新たな世界の始まりを予感させた。

「いよいよ、本格的な旅が始まるんだな……!異世界、満喫するぞ〜!」



旅は順調に進んだ。

リオンとガウルは、その土地勘と身体能力で、リョウの強力な護衛となった。

彼らは交互にリヤカーになった屋台を引き、もう一方が周囲の警戒にあたる、という完璧な連携で旅を進めた。

道中、小さな魔物が現れることもあったが、リオンの素早い動きと、ガウルの圧倒的な力の前には敵なしだった。

魔物たちは「ヒィ!」と情けない声を上げて逃げ出す始末。


「すごいな、リオンもガウルも。全然隙がない……俺、何もしなくて良いのだろうか?」

彼らは魔物をあっという間に追い払い、リョウは安心して屋台の荷台に座っていられることができた。

まるで移動式特等席だ。

リョウは、道中もスキルを試すことを忘れていなかった。

リオンやガウルからこの世界のことを聞き出すうちに、彼の頭の中には様々な疑問と、「こんなものが作れたら」という欲求が湧いてきた。

( この世界の食材って、どんな味なんだろう?屋台で試してみたいけど、勝手に取っていいのかな……?いや、きっとスキルがどうにかしてくれるはず! )


昼休憩の時にリョウが聞いてきた。

「なあ、リオン。この辺りの川辺には、どんな魚が住んでいるんだ?」

「うむ……赤身の美味い『フワリウオ』、鱗が七色に輝く『ナナホシウオ』など、様々だ」

リオンはそう言うと、周囲を見渡しながらこの土地の生態系の話をしてくれた。


「この辺りの森には、『キジャ』という、尾が五色に輝く美しい鳥がいる。肉は鶏肉に似ているが、もっと引き締まっていて、滋味深い味わいだ。あとは、あの丘の向こうには、『シカカモ』の群れがいる。鹿のような立派な角を持つが、カモのように水辺を好み、肉は臭みがなく柔らかいと評判だ。」

リョウは目を輝かせながら、リオンの話に聞き入っていた。


( フワリウオは刺身かな?ナナホシウオは塩焼きもいいけど、ホイル焼きも合いそうだな。キジャは唐揚げか照り焼きか……シカカモはローストビーフみたいにしても美味しいかも!?考えただけでワクワクする……! )

彼の頭の中では、まだ見ぬ食材たちが次々と料理へと姿を変え、その味を想像するだけで口の中に唾が湧いてくる。

リョウの「食」への飽くなき探求心は、この異世界でさらなる広がりを見せていた。



旅の途中、一行は清流が織りなす美しい渓谷に差し掛かっていた。

透き通った水面の下には、色とりどりの魚たちが泳ぎ、その中でもひときわ鮮やかな鱗を持つ魚がリョウの目を引いた。

「おい、リオン、あの魚を見てくれ!すごく綺麗だ!」

リョウが指差す先には、七色の鱗をきらめかせ、川底の石の間に身を隠すように泳ぐ一匹の魚がいた。

リオンは目を細め、静かに頷いた。


「あれが『ナナホシウオ』だな。警戒心が強く、動きも素早い。漁師でもなかなか捕まえられないと聞く。」

その言葉を聞くや否や、ガウルが

「なんだと!?そんな面白い魚がいるのか!俺が捕まえてやるぜ!」

と意気揚々、川に飛び込もうとしたその時、リオンが素早くガウルの襟首を掴んで止めた。

「待て、ガウル。お前では騒がしくしすぎる。俺が捕る。」

リオンはそう言うと、まるで水流と一体になるかのように、音もなく川へと入っていった。


彼の動きは無駄がなく、静かで、水面の微かな揺れすら立てない。

ナナホシウオはリオンの存在に気づかないまま、ゆったりと泳いでいる。

そして、次の瞬間、リオンの手が電光石火の速さで水中に伸び、一瞬にしてナナホシウオを捕らえた。

まるで魔法でも見ているかのように鮮やかな手並みに、ガウルとエリナは目を丸くした。


「すげえ!さすがリオンだぜ!」

とガウルは感嘆の声を上げ、エリナも

「見事な腕前ですわ、リオン様!」

と称賛の言葉を送った。

リョウは、リオンが捕らえてきた、鮮やかな鱗を持つ『ナナホシウオ』をリョウが見つめた瞬間、彼の頭の中に


【スキル『屋台』が進化しました!捕獲した食材を瞬時に調理可能な状態に変換し、引き出しに生成する機能を追加!】


という文字が、まるで電光掲示板のようにパッと表示された。

「なっ……!?」

リョウは思わず声を上げ、目を見開いた。

( スキルが、進化だと!?しかも、捕獲した食材を、すぐに調理できる状態にして引き出しに入れてくれるってことか!?マジかよ、チートすぎるだろ、このスキル! )

これまでの屋台も十分便利だったが、この機能はまさに革命的だ。

これで未知の食材でも、すぐに料理に挑戦できる!


「この魚、すごく綺麗だな!せっかくだから、素材の味を活かせる料理にしたいな……よし、あれだ!」

リョウがそう強く願うと、先ほどまで目の前にあったナナホシウオは、瞬く間に引き出しの中に吸い込まれるように消え、代わりに屋台の引き出しから、すでに下処理され、新鮮な輝きを放つナナホシウオが取り出せる状態になっていた。まるで、食材が屋台のシステムに登録され、料理人の準備を整えてくれたかのようだ。


リョウは

(屋台、炭火調理モード!)

と念じ、炉を登場させ、その炉の中で炭火を熾した。


次に引き出しから厚手の金属箔アルミホイルのようなものと、次に引き出しから厚手の金属箔アルミホイルのようなものと、新鮮なキノコ類、それにハーブのような香草、そして少しだけバターを取り出した。

そして、まずナナホシウオの表面を軽く拭き、大きな金属箔を広げ、その中央に包丁で切れ目をつけたナナホシウオを乗せた。


魚の周りには、色とりどりのキノコを散らし、ハーブをちぎって乗せる。最後にバターを一切れ、魚の上にポトリと置く。

「よし、準備OK!」

リョウは金属箔の端を慎重に持ち上げて、魚と具材を包み込むようにしっかりと閉じ合わせる。隙間がないように、丁寧に何重にも折り込んでいく。

そうしてできた包みを、熱い炭火の中にそっと投入した。


ジュー、ジュワワ……という、水気と油分が焼ける音が、炭火の中から聞こえてくる。

香ばしい匂いと共に、魚とキノコ、ハーブの複合的な香りが辺りに広がり、リオンもガウルも興味津々で鼻をひくひくさせている。

待つこと数分。

リョウは軍手で熱い包みを取り出し、慎重に開いた。ホワッと立ち上る湯気の中から、ふっくらと蒸し焼きにされたナナホシウオが現れる。

白い身は輝き、キノコはしんなりと、バターの香りが食欲をそそる。


「できたぞ!ナナホシウオのホイル焼きだ!」

リオンとガウルは、その見た目と香りに目を輝かせ、我先にとリョウの差し出す皿を受け取った。

エリナも「まぁ、なんて素晴らしい香りでしょう!まるで森の香りがするようですわ!」と目を輝かせた。

三人は熱々のホイル焼きを頬張り、その美味しさに言葉を失っていた。

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