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成し遂げたいこと

ちゃんと書いてる・・・ただ一万程書いては消してを繰り返しているので進まないだけ^^

ごめんなさい

 ノワールの話によればケイネスが消えたのは私が実家に帰る前。大体一週間程前だという。ピエタも同様でどこを探してもいなかったらしい。


 誰が捜索届を出したかと言えば、ケイネスの実家ラ・ジェル家で。縁は切れているとケイネスは言っていたが一応最低限の連絡は取っていた――よく考えたら聖女様が使用人だったし――模様だった。そこから私の家へ。家にいたマーサさんから実家へと連絡が来た次第だ。


 おかしいことは『神殿』が一つも関与していないと言うことで。ついでに言えば神殿なんて一つの権力。その力は大陸全土に及んでいて、警察さえ迂闊に手を出せないと聞く。表向きは『神さまの使いがそんなことしないよね』と言う性善説に基づいているらしい。


 ……いや。するでしょう。普通に。と思うのはやっぱり私は神さまを信じてしないからだ。


 捨てられた人間だ。信じる方がおかしいと思う。


「それでね。やっぱり神殿が怪しいと思うんだ。聖女様の姿も見てないし」


 ルリカの身にも何かがあったかも知れない。


 ただ、ケイネスもルリカも強いわけで。それが疑問だったがこの際は置いておこう。


「だからって。僕は納得した訳では無いんだ」


 空にはぽっかりと大きな満月が浮かんでいた。淡く照らし出されるのは白亜の神殿。自ら輝いている我でも無いのに夜に浮き立つ姿は荘厳で昼とはまた違った美しさに言葉を失う。


 長く広い階段。件の天使像は今にも羽ばたきそうだ。


 その台座の部分に凭れ掛かりながら少年――ブライトは溜息交じりに私を見ていた。口に笑みは浮かべているが笑ってはいない。なので良くついてきたなと感心するが、一人でも行く気満々だったので仕方なしなのだろう。


「危ない事をするのは感心しないよ?」


「大丈夫だよ。ぱっと行ってパッと調べるだけだし」


 大きな門はいつでも開け放たれている。迷える子羊にいつでも手を伸ばせるようにと言う配慮らしいが、やはり夜。人は疎らだ。


「警察は介入でき無いんでしょ? 何かあったら遅いし。それに鬘被っているから、見つかっても暫くは持つしね。へーき」


 言いながら耳元の黒い髪をクルクルと指に巻いた。なんだか別人みたいだ。


 ただ――と思う。神官と言うものは総じて魔力を扱い見ることができる。子供だましのようなものだ。


「……僕が行くのではダメ?」


「惹きつけ役がいなくなるからダメだよ」


 顔の良さと育ちの良さを呪え。と軽く笑うとブライトは落ち込んだように視線を落とした。少し口元で何か呟きを落としたような気がするが声になることは無い。


 出来れば――一緒にの方が心強い事は強いけれど。大ごとにしたくない。というか主にブライトを犯罪者にしたくは無かった。絶対にバレない。そんな保証は無いのだし。私に何かあった時はまぁ――仕方ないとも思う。


 ともかく私は調べて双子に報告するだけだ。(こども)が何かできるはずは無いだろうとは分かっている。


 ……実家から黙って出てきたのは致し方ない。


 眠れなかったし。相変わらず抜け出すのはお手の物だった。


 ……なぜかブライトにバレたけど。なぜいたのだろう。わぁ。不思議だなと乾いた笑いが漏れそうになる。いつものことだけれど。と思考を切って、少しだけ背が高くなったブライトの肩をたんと叩いた。


 ゆらりと青い双眸が私を捉えるのを見てニッと笑顔を浮かべて見せた。


「私の命はブライトにかかっている」


「はははは。レーネが死んだら神殿と言わずに世界を壊すので問題ないよ」


 いやいやいや。間髪入れず、笑顔で言わないで欲しい。しかも爽やかに。ここ一番の明るさで。それがよほど本気度を伺わせるような感じがして私は背中に冷や汗を浮かべてしまう。


 ダメ、絶対。


 はははは。と受け流す様に笑うしかない。


 これが終わったらぜひともエドガーを焚きつけなければ。実力行使をしてでも。若干涙目でいるとブライトは私が羽織っていたローブのフードを深く被せてきた。きゅっと長い指が首の辺りで紐を結んでいる。


 睫が長い。羨ましい。と無駄な事を考えながら私は口を開いていた。


「変装しているから要らなくない?」


「何かあれば絶対に呼んで。絶対に駆け付けるから」


 魔法で駆け付けられたら困るなぁ。と言う代わりに私は笑う。巻き込んでおいて、そんな事を口が裂けても言えないけど。


 何度も言うけれど。私はブライトを犯罪者にするつもりは――神官を引き寄せたことは大した罰にはならないと踏んでいる――無い。双子にはそれなりに迷惑がかかるけれど自力で何とかするだろうし。いざとなったら切り捨ててくれても構わないのだ。


 ……。


 ……う。


 考えて泣きそうになってしまった。理解していても実際そうされると、きっと傷つく。想像だけでも耐えれない、締め付けられるような痛みが走った。


 大丈夫。と無理やり押し込んで歩き出そうとすると不意に手を捕まれる。振り向くと珍しくどこか不安そうな双眸が揺れていた。


「レーネ」


「ん?」


「そこまでする価値はあるの?」


「価値?」


 うーんと考える。価値かどうかなんて分からない。けど、と私は口を開く。


「あのね。例えば、ブライトがこうなっても私は行くと思う。エドガーでも行くよ。友達だし。誰も助けてくれないなら私が動きたい。何か起きてても今私が何もできないのは悔しいし後悔したくないし。『どこで』『なにが』がはっきりしているならなおさらだよ。その――。嘆くだけでは意味が無いし――そっちの方が生産的だと思う。うん。きっと。そう思うよ」


 ――そう思いたい。


 本当の現実なんてとても厳しくて、私はきっと綺麗な絵空事を言っているのかも知れないけれど。いや。言っているのだろう。子供の戯言だ。


 それでも。行きたい。そう願う。


 その先には――もしかしたら私にも『何かを成すことができた』そんな痕跡を残したいのかも知れない。そう言う考えがふと頭に浮かんで消える。


 だって。


 私は。


「死んでも?」


 低く、暗い響き。考えていた心の暗闇が引きずり出されるようで心臓が引きつった。締め付けられるような痛み。泣き出したい衝動。だけれど、それをおくびにも出さないように努力した。努力できているかと言うのは別にして、だか。


 だって――ブライトを困らせるのは嫌だから。『死にたくない。助けて』なんて私が言えば、絶対に困ると思う。負担になるのは――そんなのは嫌だし。


 巡回して言葉を紡ぐ。


「それは嫌だけど。そうかも」


 ふんすと言い切ればブライトがすっと目を細めた。眩しいものでも見るかのように。


「子供っぽい」


 が。出てきた言葉はこれである。私は半眼でブライトを見下ろしたが相変わらずニコニコ笑っているのみだった。胡散臭いし。なんだか悔しい。バカにされているようで。


 同じ年なのに。舌打ちを分かりやすくしてやった。


 子供なのだから仕方ないじゃないか。内心毒を吐いて口元を動かしていた。


「とにかくっ。行こう」


「うん。そうだね」


 握られる掌から温かい熱が伝わる。私の体温なのかブライトの体温なのか溶け合ってよく分からなかった。


 でも。だけどそう。


 それがなんだか嬉しくて心地よかったのはなぜだろうか。


 空を見上げれば相変わらずの満月が輝いていた。



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