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宇宙のヒーロー

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

アメリカもサブカルチャーについてはうるさい。

「遠い昔、遥か彼方の銀河系」が舞台のシリーズと、23世紀の天の川銀河が舞台のシリーズが、アメリカの宇宙系SFの二大派閥と言えよう。

この2つの作品は、コメディ映画でファン同士が対立していたり、初代艦長と反乱同盟軍のお姫様が喧嘩したところを両方の作品に出演経験がある操舵士が仲裁したとか、そんな話がある。

実際のところ、両作品のファンもいるようで、そこは対立要素ではない。

知ったかぶりして取り違えて話してしまうと、バッシングの対象となる。

某大統領のように……。

なお、艦長とお姫様の仲裁をした操舵士が

「両SF作品とも、あのバンパイアの映画の方を敵として認識しようぜ」

と言った事で、変なとばっちりが行った作品もあったりする。


ノートン料理長は、この2つのSF作品両方のファンだ。

その他に、蜘蛛に噛まれた男とか、電話ボックスで早着替えする男とか、巨大軍需産業社長兼ヒーローとか、幅広くファンをやっている。

更には日本から来た5人がかりで1人の敵をボコる(後に更に1人追加される)作品をきっかけに、日本のヒーローにも手を出していた。

「日本のアレは、蜘蛛に噛まれたわけじゃないんだな」

とあるヒーローについて話した時、逆に日本人クルーの方が言ってる事を分からなかった。

「ほら、アレだよ。

 自分を地獄からの使者と名乗り、巨大ロボットに乗るあいつ。

 あのロボットが投げる剣で、大体1分以内に敵を瞬殺するあいつ」

「ああー、〇映公認の最強秒殺ロボね」

白石飛行士からそのロボットの名前を聞いた他の飛行士は

(それって、象の超人に秒殺される方じゃないのか?)

と思ってしまった辺り、見ている作品の差があるのだろう。


ノートン料理長の良き喧嘩相手・白石飛行士もまた、特撮作品が好きである。

ヒーロー談義が始まったのは、そもそもこの白石飛行士の話題提起からであった。

「宇宙ステーションの危機ってどんなのがありますかね?」

考えられるのは、デブリや隕石との衝突、火災、酸素漏れ、推進エンジン系の爆発事故、太陽フレアの直撃、地上からのミサイル攻撃、であろうか。

それらの事態について、対処出来るものには避難マニュアルが作られ、宇宙ステーションでの生活中に最低一度は避難訓練、それ以外でも船長・副船長による避難経路の安全確認、緊急脱出用の宇宙服やカプセルの定期点検が行われていた。

「もしも、宇宙ステーションを餌にする腹に口を持つ宇宙怪獣とか、誕生日パーティー中に襲撃して来るクラゲみたいな宇宙生物とかいたら、やっぱり全滅ですかね」

そんな発言に日本人飛行士はポカンとしていた。

唯一ノートン料理長だけが

「それ、見た事アリマス。

 ジャパニーズ特撮のイマジネーションも凄いと思いました」

と話に乗って来た。

ちなみに、おそらく先日宇宙に来た年配男性アイドルは知っていると思われる、当時の子供のトラウマ描写である。

なお、ああいう宇宙生物に襲われた場合、完全に丸飲みされない限りは、食われている場所から一番遠いモジュールに避難し、緊急分離コマンドを使えば本体からそのモジュールだけ切り離されて脱出可能である。

「多分、追いついて来て、また喰われるだろうけど」

「その場合、脱出に使ったモジュールすら捨てて、喰われる前に船外服を着てバラバラに逃げる事になるでしょう。

 誰か1人だけでも生き残れると期待して」

この回答は船長から出されたものであった。


「まあ、じわじわ喰われるのより、現実的に怖いのは地上からの攻撃ですかね。

 宇宙大怪獣なんて現実に見た事無いですけど、衛星破壊は現実のものですからね。

 ミサイル攻撃を食らったら、一瞬で全滅もあるでしょう。

 僅かにでも生き残る可能性に賭けて、警報(アラート)からの迅速な脱出は訓練するのですが」

警報が出てから4分以内に逃げられるようにしている。

弾道ミサイルの弾着時間は約7分。

軌道上の宇宙ステーションへのミサイル命中に、その半分程度の時間を想定した。

物理的に準備可能な時間もそれくらいというのもあり、それより短い時間は「もうどうしようも無い」というものだろう。


「だとしたら、飛んで来るミサイルを迎撃する武器を搭載すれば良いかも。

 昨今情勢的に危ういし」

白石飛行士のその発言に

「Youは軍事的には無知ダネ。

 高速で飛来するミサイルに上手く命中させるには、高性能なレーダー、演算装置、終末誘導装置(イルミネーター)とかが必要デス。

 そんなのはこのステーションには搭載出来ないでしょう。

 それくらいなら、宇宙に脱出しても生き長らえるスーツが重要でしょう」

そんな感じ、ヒーローの強化スーツと船外服、宇宙ステーションと宇宙戦艦がごちゃになった議論を行ういつも通りの2人。


(「こうのす」は小型衛星射出用に、小型ロケット発射機能があるんだよなあ)

多目的ドッキングモジュールには、その機能が着いている他、レーザー測距機能や射出したロケットの誘導能力も持っている。

また、外周に張られている金網、通称「鳥籠(バードケージ)」が第二次世界大戦時ドイツ戦車の拡張装甲(シュルツェン)の役割を果たしている。

デブリ衝突用の対策もあり、当時はまだ未完成の時期だったが、伊達に歴代船長がジョーク的に自身を「艦長」と名乗っていたわけでもなかった。


それを言えば、また変な方向に議論が盛り上がる為、黙っていようと思う船長であった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  宇宙ステーションの危機はコレだっ。 『スペース・ゴースト・シャークvsセーラー服・公爵令嬢』  近日公開、ご期待あれ☆
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