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宇宙ステーションどうでしょう?第4夜

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

さて水曜日は北海道のローカル番組が放送される。

逸早くJAXAにもその内容が送られて来た。

そして誰もが思う。

「宇宙はおろか、まだアメリカにも行かないのか!?」

東京キー局の方も訓練風景を放送しなかったが、この番組は更に展開が遅い。

先週はずっと隔離部屋の中で愚痴を零して終わった。

今週もその部屋の中から番組が始まる。


「飯作って下さいよ。

 訓練していたら、腹減りました」

訓練風景をほとんど放送していないし、どうして空腹になるのか伝わらない。

「じゃあ、作ります!

 文句言わないで下さい!!」

「分かった分かった」

「ここには電熱式の調理器具しかありません!

 そして食材も限られています。

 大したものは作れません。

 いいですね!!」

「分かったから、早く作れよ」

「文句言うなって言っただろぉぉぉぉ!!!!」


一品目の料理は、意外にも開始早々に提供された。

「サラダ、オーロラソースでございます!」

「あ、なんだ、ケチャップとマヨネーズは有ったんだな」

「召し上がれ」

「まあ、なんだな。

 切って並べて、ケチャップとマヨネーズ混ぜただけだな」

「なんだと?」

「間違ってねえだろ?」

「切っただけとか言うな!!

 むしったんだ」

「もっと酷いじゃないか」

「まあまあ、お二人とも喧嘩しないで。

 美味しいですよ」

「だって、野菜そのものだからな」

「食わせねえぞ!」


二品目、早くも暗雲が立ち込める。

「パスタを茹でます」

パスタは湯煎で出来るから、食材として重宝する。

ラーメン同様、ロングパスタであるスパゲティはソースを飛び散らかす可能性がある為、スープに混ぜて食べられる、或いはフォークで刺して食べるショートパスタである。

この男、ショートパスタにはまったく慣れていない。

「まあ、スパゲティじゃないから、増える心配は無いな」

そうディレクターが呟いたのが、ある意味フラグであった。

確かに増えない。

このパスタ、宇宙で大した電力を使わないよう、短時間で茹で上がるようになっている。

例えば6分茹でるパスタを7分茹でても、多少柔らかくなる程度だ。

しかし3分で茹で上がるパスタを4分茹でると、同じ1分でも柔らかくなる度合いは高い。

「茹でている間にソースを作ります」

そう言って注意力散漫となり、6分近く茹でてしまっていた。

本人は3分のつもりで。

「何分茹でてんだよ!?」

「仕方ないでしょ!

 勝手が分からないんだから!

 こっちは考えながら料理してるんだよ!」

「時計くらい見ろよ」

「料理ってのは勘でするものなの!

 時間通りに作ったって、火が弱ければ意味ないでしょ!」

「その勘がおかしいんだって言ってんだよ!」


出来上がったのは、フォークで刺して持ち上げると、切れて落ちる程に柔らかくなったショートパスタを、マヨネーズとケチャップで和えて、その上にチーズを散らしたものである。

「マヨネーズの味しかしねえな」

「ケチャップだけで良かったんじゃないですか?

 普通にナポリタンになったでしょ?」

「これ、不味いわ」

不満が出まくっている。


不機嫌になりつつも、三品目を作り始めた。

「ご飯を炊きます」

「今からかよ?」

「ここにレトルトパウチがいっぱいあります。

 これを使った炊き込みご飯にします」

「そのレトルトを、そのまま食わせろよ!」

「それじゃ面白くありません」

「面白い、面白くないで料理すんなよ!」

「文句言わないって言ったでしょ!」


こうして今更ながら米を炊き始める。

なお、炊飯器は無い。

電熱器はある。

これで慣れていない炊飯を始めた。

しかも色んなものを混ぜて……。

「うん、まだ火が通っていないな」

「ちょっと芯があるな」

そう言いながら1時間料理を続ける。

他の3人は、すっかり飽きていた。


「はい、出来ました!」

出来上がったのは、炊き込みご飯ではない。

得体の知れないおじやであった。

「さあ、食べて下さい!」

「……これさあ、不味いよ」

「やっぱりレトルトそのまま食わせれば良かったんだよ」

「お前、これ食ってみろよ!

 美味いか?」

「不味いよ!

 でも仕方ないじゃないの!

 この部屋の調理器具、全部火力が弱いんだよ。

 こんなんでどうやって料理しろって言うんだよ」

「分かった……。

 僕が悪かった。

 明日から僕が料理するよ」

「君が?

 出来るのかい?」

「出来るよ。

 君がドラマとかに出演している間に、僕は北海道に動物観察小屋作って、そこに籠って生活とかしてたんだよ」

「じゃあ、僕以外も料理出来るって事なんですね。

 じゃあ、もう僕はお払い箱……」

「そうだな。

 もうシェフ!とか言って、でっかくエンディングに出すのは無しだな」


結局翌日から、普通に湯煎したり、普通に缶詰めを開けたり、普通にパックから取り出せば食べられる料理を、適切な時間加熱して食事するようになった。

「ああ、普通に美味しいですね……」

メイン出演者、声のトーンが低くなっている。




放送終了後、JAXAスタッフは一様に呟いた。

「過去作の料理場面を見て、宇宙ステーション内での料理を止めて貰ったけど、正解だった……。

 いくら生産しているからと言って、食材は無限じゃないんだし。

 宇宙で数少ない娯楽である食事を、拷問の時間に変えたら飛行士たちに申し訳無かったからなあ」

と。

テレビ番組系の展開。

さっさと進めたいとこですが、どう想像しても

「宇宙に行くまでの過程を延々と放送する」

展開になりそうで、中々宇宙に行けないっす。

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