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一方北海道のローカル番組では

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

時を遡り、テレビ番組チームが地球に無事帰還し、隔離期間も終えて帰国した日。

東京キー局のアイドル番組は、出演者を前面に押し出して、空港で大々的に記者会見を開いた。

その様子は生中継され、全国ニュースにもなり、前総理もそれを観た。

一方で北海道チームはひっそりと、成田から新千歳空港行きの国内線に乗り換える。

今更「えらい扱いの差だな」と出演者も文句を言わない。

こちらにはこちらの都合があるのだ。

主に、どこで何を撮影したのかを明かさないという。


しかし、情報はどこかから漏れるものである。

他の番組関係者も見ている訓練期間中に、彼等が居たのは見られているし、そこから情報が漏れないように予め根回しをして「知っていても、知らない体を装う」事にして貰っていた。

だがそこはバラエティー番組である。

完全に秘密にしていては美味しくも何ともない。

ちらほらと

「また撮影しているらしい」

という噂がネットで出回るのを黙認していた。

そうしている内に

「どうも宇宙に行ったらしい」

という噂に進化した。

他局からもJAXA関係者からも漏れてはいない。

どうも北海道の放送局のバイトから

「らしいよ」

という噂話に続き、丁度キー局の方の記者会見時に

「他にどの番組が行くのでしょうか?」

というしつこい質問がなされたのをきっかけに

「あれ?

 うちのあの名物番組、丁度この期間にベターっとスケジュール抑えられていたよね」

「言ってはならない番組って、当てはまるよな」

「もしかして……」

となったものだ。

そしてネットでは噂は暴走する。

「あいつに宇宙酔いさせるのが目的」

「ボヤかせるのが一番の見せ場」

「宇宙で料理をさせて、宇宙飛行士全員にお見舞いするつもりらしい」

とかなり正解に近いものに辿り着いていた。

最後のは、JAXA総出で潰したのだが。


そんな噂が流れた中、彼等は宇宙に行く。

彼等の日程は秘密であった。

しかしキー局の方で、何日帰還、何日記者会見と発表されていた為

「何かあるなら、この日だ」

と読まれていた。

そして、北海道以外の番組のファンは成田空港に駆け付けたが、肩透かしを食う。

彼等は成田空港では記者会見しない。

そのまま新千歳空港に乗り換えて行ったのだ。


この番組、一番ファンが多いのはやはり北海道である。

ネットで「成田にはいなかった」と発信されると、即座に乗り換え便の到着時刻を調べ、新千歳空港に直行する者が何名も現れた。

そして実際に取材陣がいて、撮影用カメラが待機しているのを見て彼等は確信した。

噂は正解だったと。

先程まで生中継されていた宇宙からの帰国報告と同じ日、ちょっと遅れで帰って来たとなると、やはり彼等も宇宙に行ったのだろう。


そして出入口から彼等が出て来ると、大声を出せない分拍手が起こる。

「は?

 なんで?

 どっから君たち聞いて来たの?」

出演者がボヤいていた。

そのまま立ちでの記者会見。

成田空港のそれとは比較にならない程、人数は少ない。

まあそれもそうだろう。

基本的に一放送局の番組であり、他局からしたら宣伝してやる必要もないわけだ。

自局の者と、新聞社や北海道ローカル誌が取材に来ただけであった。

自局の場合は、上手く情報をぼやかして放送してくれる。

新聞社や情報誌は、編集の関係で少し情報を遅らせる事が出来る。

しかしファンはそうもいかない。

警備員によって遠巻きに見るだけとなったが、それでも動画が撮影されて、

「すみません、この様子はSNS等にアップしないで下さい」

と言われた時には、既にアップ済みであったりした。

直ちに情報が拡散されてしまった。




時は戻る。

その局の編集局では放送時期の前倒しが検討されていた。

この番組は不定期放送なので、割と収録後にじっくりと編集が出来ていた。

中には収録はしたけど、やっぱり面白くないという事で、ボツとなったものもある。

しかし、既に情報が洩れてしまった事や、東京キー局の方の企画放送が好評な事もあって

「今の内に放送してしまおう」

という意見がおエライさんたちから出ていた。

一方番組側は

「俺たち、そんな流行に便乗した番組じゃねえから」

とあくまでもマイペースで行こうとする。

更に東京キー局との紳士協定もあった。

あちらが先に放送し、北海道ローカルの方はその後にする、と。

この件もあった為、番組側は強気であったが、上層部も無策ではない。

談判して、放送タイミングを調整する事で話がついたようだ。

つまり、東京キー局の方のネタバラシを先にしなければ、同時期の放送でも構わない。

その為の調整をしましょう、となった。

東京キー局の方でも、何週渡っての放送になるか、まだ決まっていない。

それまで待たせるのも良くないと判断したのだろう。


というわけで、番組編成とも調整した結果、約3週間遅れで訓練編から放送される事が決まった。

番組側は文句を言ったが、基本局に金を出して貰っている以上、強くも言えない。

こうしてキー局同様JAXAに映ってはいけないものが無いかを確認しつつ、編集作業が進められる事となった。


宇宙は、行ってそれで終わりではなかった。

そこで得たものは、じっくり時間を掛けて纏めつつも、可能な限り早い時期に結果公表するものなのだ。

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