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地上の自動二輪免許講習でもまずは自動車学校の道路で練習する

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

女性飛行士が船外活動の訓練をしている間も、宇宙スクーターの実験は引き続き行われていた。

宇宙バドミントン等を行った拡張与圧室内での、極低速での操縦試験をクリアし、やっと本当の船外で動かしてみる。

これまでもエアロックの外に運んで、動かしてみる事はあったが、それは推進剤の噴射確認とか、姿勢制御が正常に効いているかとか、スロットルや逆噴射ブレーキの調整をしていたもので、飛行とは言えない。

この時点ではまだ機械に信頼が置けていなかったので、頑丈な命綱をつけ、万が一機械が暴走しても飛行士だけは助かるようにしていた。

一ヶ月以上十分に調べ尽くし、地上スタッフとも検討した結果

「そろそろ飛行試験をして良し」

となる。

こうなると、頑丈な命綱は機動力を損ねるものとなる。

あまり長く伸びない為、遠出が出来ない。

そこで命綱を一段階弱いものに替えた。

これは安全性では前のものより弱い。

ハーネス状にしっかり体に取り付けるものと違い、腰ひも的なものだ。

だが、代わりに数十メートルまで伸ばす事が出来る。

まだ「こうのす」の付近を飛ばすだけなので、それくらい伸ばせれば十分であった。


「まずは微速で。

 スロットルを回し過ぎないように。

 足が着く場所からは、蹴って動かし始めましょう」

教習の第一段階みたいな事を、「こうのす」船内から栗山技師が無線指示する。

足が着く範囲を移動するなら、これで問題無い。

問題なのは、どこにも反動をつける足場が無い空間からの始動である。

宇宙スクーターは、「こうのす」同様に地球上空を周回しているから、厳密な意味での静止というのは無いのだが、それはこの際置いておく。

宇宙スクーターがどこにも反動をつける場所が無い空間で静止状態となる。

慣性の法則とは、静止したものは静止し続け、運動しているものは運動し続けようとする事である。

運動はこの場合、等速直線運動の事だ。

力が必要なのは、静止から運動に変わる、逆に運動から静止に変わる、等速状態から加減速する、等速で動いている方向を変える、つまり正負前後左右上下問わず加速度をかける場合である。

特に静止から運動に変える時の加減が難しい。

バイクではふかし過ぎという事が起こる。

地上ならウィリーして「安全第一」のバリアに激突し「なまら怖かった!」で済ます事も出来よう。

宇宙だと、この程度の事でも宇宙に投げ出されかねない。

反動をつけるものが無い以上、宇宙でスクーターから投げ出されたら帰って来られない。

そこで、ライダースーツに該当する船外着には、セルフレスキュー用推進補助装置 (SAFER)を更に簡易にした自力推進装置も付ける事とした。

この船外服はまだ完成していない。

今はその場合に備え、命綱をつける事にしていた。


「将来的には、命綱は宇宙ステーションではなく、スクーターの機体の方につける事になりますね」

そうなるのは確かだが、これからの課題として「どのような形で機体と飛行士を接続するか」を検討する。

オートバイ、スクーター、そして自転車にはシートベルトは無い。

体が自由に動いた方が運転しやすいからである。

だが、宇宙でも果たしてそうか?

宇宙にはでこぼこ道は無い。

体を道の凹凸に合わせて動かす必要は無い。

また、カーブを曲がる時に体を傾ける必要も無い。

それは道路を走る場合、重力がある場合の動作である。

そういう動作で体を動かす必要は無い。

だが、このオープン型の小型移動機械は、例えば壊れた衛星まで行って改修作業をするとか、別の宇宙船までちょっと行って来るという使い方をする為、やはり体が簡単に機体から離れられる方が好ましい。

その上で、機体と飛行士が離れ離れになり過ぎないようにする。

そうなると、シートベルト方式が良いのか、ウインチで機体から延びるワイヤーに体を結びつける方式が良いのか。

体を結びつける方式も腰縄式が良いのか、ハーネス式が良いのか。

更に、こういう実験もしたい。

手足、更には体を思いっきり外に出す事で重心を変えて方向転換をさせる。

宇宙で手足のある人型ロボットを使う、後付けの理由がどれくらい有用かを実地で試す。

シミュレーションはしてあるが、実際に操縦者がやってみない事には分からない部分もある。

「一人で乗ってる時より、人工衛星とかを掴んだ時に使えますね」

「やっぱり手着き、足着きが出来れば、他の宇宙船にソフトタッチで到着出来ますな」

「『足なんて飾りです』ではないようだね」

「まああれは、兵器としての話だからね。

 スピンオフでは『やっぱり足が有った方がバランス良い』とか言ってたような」

「ちゃんと足で蹴って加速してますから、足はやっぱり必要ですよ」

「敵も蹴ってたしな」

「高機動型とか足にもバーニアついてますし、参考にしますか?」

「えーと…………、何の話だ。

 脱線して来たなあ」

「あ、すみません。

 どうもそっち系のネタを言うと、暴走してしまいまして」

「いや、えーと、あのアニメの話だよね。

 続編とかあったの?」

「船長、アニメとかそっち系の話は疎いんですね。

 自重します」


(そうじゃくてな)

船長は思う。

彼はバイクみたいな、一人乗りの機体がコクピットとしてドッキングするロボットアニメの方のファンで、メジャーどころは余り見ていなかっただけだった。

(なお、両方とも同じ監督作品だったりする)

おまけ:

船長「自分はあのメカデザインが好きだから。

 だから、続編は見たぞ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 彼はバイクみたいな、一人乗りの機体がコクピットとしてドッキングするロボットアニメ ジジイ「手首が飛ぶやつかー」
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