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宇宙の商業利用についても対応せねば

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

宇宙でテレビ撮影、それを専門のテレビ局が行い、視聴率を稼ぐ為に放送する。

これは経済活動である。

宇宙は今後、商業利用される時代に突入する、……かもしれない。

そうなる事を見越して法整備が進められている。


アメリカに放牧されて数年、小野研究員は次長という役付になってからも

「これは僕の専門じゃない!!」

と頭を抱えながら、アメリカにおける航空宇宙関連法を勉強している。

日本人をアメリカの宇宙船を使って打ち上げる際の、手続きも管理している。

本人が細かい手続きをするわけではないが、一旦彼の目で確認された後に申請される。

昔ならハンコを押すところだが、日本でもそれはしなくて良くなったし、ましてアメリカではそういう文化ではない。


小野が嘆いているのと同じ文句は、日本にいる秋山にもある。

彼の場合、相手にする連中がもっと話が分からない。

「国会に行って説明するとか、もっと上がやって下さいよ!!」

と何度も上長に掛け合っているが、

「君は総理のお気に入りだし、外国の宇宙機関にも顔が利くからねえ」

と管理する人は、対国会議員について丸投げしている。


小野が様々な仕事をさせられているお詫びのような形で、役付となり、年齢の割に相当な高額の給与を得ているのと似て、秋山も国会で説明をしたりする関係で、肩書は毎年仰々しくなっていっている。

今は何とか参事官でもある。

普段はスタッフジャンパーとか、ワイシャツにノーネクタイで仕事をしているが、国会に顔を出す時はスーツ姿にならざるを得ない。

ノーネクタイでも普段着も法制上問題は無いが「無礼だ」という事らしい。

ある程度礼儀を守っていれば、話が円滑に進むので、わざわざ挑戦する事も無い。

金額は高くもなく、安すぎもしないスーツを、きちんとしわくちゃになっていない事を確認して着込む。


結構細かい話までする。

例えば宇宙からの気象予報である。

気象予報士でかつ宇宙飛行士なら何の問題も無い。

気象予報士でない宇宙飛行士が、宇宙から見た生の情報を伝える場合、どういうものが「現象の予報」になるから、本人の口から言ってはならないかの説明とかもする。

宇宙からはよく雷が見える。

「あー、あの雷雲、あとちょっとしたら日本の上空にかかりそうですね」

というのは、宇宙ステーションから見た感想なのか、天気予報の内の現象の予報に該当するのか。


新型宿泊モジュール「アネックス」には、かつてアメリカの某企業CEOが宿泊した。

金銭を支払っての商業宿泊である。

この時はアメリカが運用していた為、その辺はアメリカの法に準拠していた。

次のテレビクルーの宿泊は、一応国と組んでの宇宙事業の一環、実験の一部だから商業宿泊には当たらない。

だが将来、日本が「こうのす」を運用している期間にも、商業宿泊が起こり得るだろう。

無許可で旅館業を営んだ者は「6ヶ月以下の懲役もしくは、100万円以下の罰金に処され、または懲役と罰金を併用」となるのだ。

とりあえず旅館業法が適用されるのかどうか。

消防法について、立入検査はまず無理だが、代理で行う場合の手順はどうなるのか。


こういったものは、適用されないかもしれない。

適用され、シールとかを貼って認定済みとしなければならないかもしれない。

とりあえずは審議が行われる。


「まあ、この辺はしっかり決めておかないとね。

 いつか行く事になったら、宿泊に適したものかどうか問題になるかもしれないし」

「誰がいつ、行くんですか?」

「例えばの話だよ。

 もし、万が一、総理大臣の私が何らかの公務、もしくは宇宙飛行士の訓練を経て、

 宇宙行きが決まったとして、日本の公職に居る、もしくは居た者の宿泊施設として十分かどうか、

 その辺きちんとしておかないと」

「いやいやいやいや……。

 行かせませんから。

 どこの世界に、自ら宇宙に行く政府代表者が居るんですか」

「あれ?

 『こうのす』はアメリカにも使用権が有るでしょ。

 だから政府高官専用の宿泊モジュールを開発し、そのモジュールについて関係各機関が審査し、

 大統領、副大統領、上院議長、下院議長等の所在を示す旗とか用意しているそうですが」

(……アメリカも一体何をやっているんだか)

「アメリカがやっているなら日本もやるというのが基本姿勢だから、

 日本としても全力で公職に在る者の宿泊についても審議を行いますので」

「野党が文句言って来ませんか?」

「部会に来る野党の議員は、半分以上は自分も行きたいって思ってますから。

 もしくは審議拒否で国会をお休みしているので、文句言う前に居ませんから」


科学技術部会では、こういった議題が熱心に議論される。

与党議員だけでなく、野党議員も真剣に議論する。

たまに本音が漏れ聞こえる。

「まさか与党の関係者だけが使用出来るというわけではありませんよね?」

「公職という以上、議員や官僚も含まれます」

「地方議員は?」

「一応公職ですが、行く用事ありますか?」

「それを行ったら、本来総理大臣だって行く用事は無いでしょう?

 行く用事の有無じゃなく、可能性について討議しています。

 我々は行けるのですか!?」

「は?」

「いや……(ゲフンゲフン)。

 公職に属する者だけでなく、将来は一般にも公開していくのが重要なので……」

(行きたいんだな……)


議員先生と呼ばれる身でありながら、いまだ少年の心を持ち続ける人も結構多くいるのだと秋山は実感した。

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