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第四次長期隊テーマ決め

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

第一次長期隊は「こうのす」の機能を立ち上げた。

第二次長期隊は「こうのす」を継続使用した。

第三次長期隊は「こうのす」の問題点を改善した。

では第四次長期隊はどうしようか?

地上で会議室に集まって、このテーマについて話をしている。


別に宇宙ステーションの使用に個別のテーマは必要無い。

「宇宙において、地上と同じような生活をする」というのが全体的なテーマである。

普通に生活する、それだけで問題は無い。


しかし日本は一回一回予算を得る必要がある。

継続案件で、どうせ予算をつけてくれるにも関わらず、新しいテーマを出さないと認められない。

「こうのす」計画は三次隊までが承認を得ており、四次隊以降はこれから決まる。


「まあ、継続は決まっているのだが……」

秋山が困ったように言う。


ぶっちゃけ、止めるなら止めるで構わない。

しかし日本の特徴として「一回始めたものは終わらせない」というのがある。

だから「継続は決まっている」→「でもそれには名目が必要」→「承認するに足る理由を考えてね」

というコンボが発動しているのだ。

しかも「目新しいものを」と言うのだ。

「宇宙で魚養殖」「宇宙でサウナ」「宇宙バイクの開発」は既に計画承認されていて、継続案件だから改めて提出は出来ない。

パッとみて「おお!」と驚くようなものを出せ、と言っている。

続ければ続ける程、次の理由を考えるのが苦しくなる。


「という訳で、何か目新しく、如何にも飛びつくようなテーマを考えて欲しい」

とこれだけ伝え、資料を配布してこの日は終了となった。

(リモートだから、添付ファイルを一回読んで、質問が無いか聞くだけの会議)

無論、国会の委員会に出すのだから、中身は綿密に練っていないとならない。

じゃあその通りに実現するか、というとそうでもない。

とりあえず承認するだけの計画案と、あとは出来ませんでしたで継続案件として良い。


数日後、職員が考えたテーマ案が幾つか届く。

興味を引いた案が

「宇宙で更なる医学の発展。

 宇宙手術室による治療」

であった。

地上では重力の関係で出来ない手術を行う。

その技術の習得。

また、重力が無い事で負荷を少なくする。

寝返りを打てない病人でも、無重力だと大丈夫。

そもそも体が沈まないから、床ずれを生じない。


読み進めていって、ふと気づく

(これ、漫画で見たような……)

質問してみると、最近読んだ漫画にあって、そこにヒントを得たようだ。

「いやあ、凄いんですよ。

 昔の漫画なのに、アイデアが良い。

 そして、宇宙医療はまだ実現してないんですよね」

確かに30年近く前の漫画で、それは描かれていた。

だからって、ほぼパクリはいただけない。

「ほぼパクリでも、アイデアは良いから使えるのではないですか?」

「いや、パクリだから応用が効かないと思わないか?

 聞いてみるが、この手術の対象となっている多椎骨にわたる脊椎カリエスの患者、

 心当たりありますか?」

「いいえ」

「つまり、患者もいないのに手術室だけ作ろう、と?」

「…………まあ、そうですね」

「言葉に詰まったって事は、自分のアイデアの問題点に気づいたって事ですね。

 まあ、医療ってアイデア自体は良いと思いますよ。

 丸パクリにしないで、自分なりのアイデアに練り直して下さい。

 きっといつか使えますから」

良いアイデアだったら、次か、その次にでも使わせて貰おうと考える秋山であった。


次に目を引いたアイデアは

「スペースドローンの開発」と

「電気推進式宇宙船の開発」そして

「マイクロ波による送電の実験」のセットであった。

セットであるのは、同一人物がそれぞれの企画案と、セットにした企画案の4通を提出したから分かる。

ヒアリングしてみる。

「宇宙船から飛び立ち、任務を果たして宇宙船に戻って来る小型機、つまりドローンです。

 これの推進は電力で行います。

 それだけだとイオンエンジンですが、これは持続時間はともかく推力は弱い。

 推力を強くすると、すぐにバッテリーも燃料タンクも使い切ってしまう。

 燃料は戻って来て補充するとして、電力はマイクロ波送電で常に補充可能とする。

 という統合開発です」

面白そうだ。

だが野心的過ぎる。

三番目のマイクロ波送電は基礎実験を行い、まず地上で技術確立した方が良いだろう。

であるなら、宇宙ドローンは割と簡単に開発出来そうで、その推進方式も実績のある燃料噴射式で良いだろう。

また、電気推進宇宙船も「こうのす」には現在物置として利用している、拡張軟式与圧室や、金網で覆われた船外活動用の空間がある為、それを利用した方が良い。


「アイデアは良い。

 全部使ってしまうのは勿体ない。

 3番目を後にして、スペースドローンと電気推進を別建てで計画案にしよう。

 それで、宇宙ステーションをどう使うかの案も出して下さいね」

言われた職員はポカンとなる。

「今見ているのがそうではないですか?」

「違いますね。

 これは実験計画として使えるので有難いのですが、

 欲しいのは『宇宙ステーション全体の目的』です。

 宇宙手術室計画の方が、まだ『宇宙で病気にかかった場合治せるか?』というテーマを持たせられます。

 今まで、宇宙に行くのは健康な人だけで、宇宙で健康を損ねた場合、フライトサージオンの手に負えなければ地上帰還しか手がありません。

 それが宇宙だけで解決出来るなら、長期テーマである『宇宙でも地上と同じような生活』に近づきますし、ひいては数年がかりの宇宙飛行にも役立ちます。

 そういうアイデアが欲しいんでして」


叩き台として2つアイデアが議論された事で、職員たちは求められるテーマについて理解した。

そして「面倒臭ええええ」という事も……。


このテーマに対し、専門家ではない素人から意見が出される事になる。

一つは……面倒臭い人からのリクエストであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >リクエスト また総理案件かw 月ロケットの中継基地にして宇宙でも地上と同等=ゼネコンの月面基地参加にすれば良いのに ネタ潰しにならないよね
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