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年末進行もヘルモード

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

秋山が眠りについたのは昨晩ではなく、今朝の4時45分頃。

3時間後には部下に起こされる事もなく、目が覚めてしまった。

ベッド機能の無いソファで寝袋に入って、ちょっと寝返れば落下する危機感を持って寝れば、眠っても眠った気になれないだろう。

特に問題無い事を確認すると、宿舎に一回戻りシャワーを浴びて髭を剃り、髪を整えてタクシーを呼ぶ。

そして官邸に出向く。

予定より10分押しで総理と面談。

これ自体はあっさり終わる。

問題となったのは

「アメリカが許可しない国民の場合、うちでもダメなら断るしかない、これ本当?」

という事だけであった。

ロシアに頼む方式はあるが、それは頼んでから半年後になるだろう。

ロシアがOKを出すとも限らない。

日本で打ち上げる場合、外国人は多くても2人が限度である。

「日本人の短期ミッションスペシャリストを一人も乗せないなら、飛行士のみ日本人で残り3人外国人ってのも出来ますが……」

「それは流石にダメですよ。

 主客転倒しています」

あくまでも「日本人が利用する、そのついでで無料搭乗させる」のが基本姿勢なので、日本人無しの外国人のみは認められないようだ。


総理にアメリカの民間企業への発注許可と、1月からの訓練計画の承認を得て、その一報を入れる。

すると部下からは

『分かったので、今日は帰ってもう少し休んで下さい。

 その間に発注仕様書とか纏めておきます』

という返信が来た。

アメリカは時差の関係で、今から発注書を送ってもどうせ朝にならないと見ない。

向こうの始業までに要求項目を纏めるから、その間は寝ていろ、というのだ。

秋山は部下に甘え、一回宿舎に戻った。

もう昼頃だから、寝てもやはり眠った感じになれない。

それでも追加で2時間眠れたのは、体力回復的に大きい。


起きてデスクに着くと、既に色々な仕様書、発注書、計画書の印刷版が置かれ、会議室の場所と時間が書かれた付箋、そしてアナログでなくデジタルメディアにも同じものが入っていた。

まずはアメリカの民間企業に送る発注書。

別に何かを改造してくれというのではない。

何人乗りで、荷物はどれくらいで、何日使用するかというものだ。

「日本人4人、外国人3人、日本人は船長とミッションスペシャリスト3人、外国人は全員ミッションスペシャリスト。

 ジェミニの3倍のペースで予定消化する訳ですね。

 そして3ヶ月で4回、3週間に1機のペースで打ち上げる。

 船長は基本不要だが、万が一の為に操縦を学ぶ為に研修に派遣する。

 まあ、予想の範囲内ですが」

「ロケットが用意出来るか、ですね。

 3週間おきにあの巨大ロケットを4機打ち上げられるか、ですね」

「生産もそうですが、発射場の確保が出来ない事もありますし、天候による順延も有り得ます」

「で、その次のページからが保険としての計画ですか」

「6週間で2回、1月半おきのペース。

 日本人ミッションスペシャリストが2人と外国人が5人。

 文句が出る場合は日本人3人外国人4人の組と、日本人2人と外国人5人の組とする。

 最初の計画同様9人の外国人を消化する」

「何人か決めておいた方が、訓練計画を立てやすいでしょう。

人数がフレキシブルな事より、打ち上げペースの方がまだ変えやすい」

本来は計画があって、それによって人数を決めるものだが、今回の場合は人数消化しないと秋山を通して総理を動かし、派遣国に何らかの気遣いをして貰う。

別に日本の好意で乗せてあげるという立場なので、「今回はご縁が無かったという事で」と、それだけ言って帰すのもアリだが、どうも日本の外交はそういうドライな態度は取らない。

政治家や外務省が嫌がる。

だから、そうしか出来ないという事情を懇切丁寧に説明し、理解させねばならない。

そういうのが面倒なので、だったら自分たちで制御出来る計画の方で調整しようというのだ。

交渉事が嫌いな技術者ならではの発想というか、こうやって相手の要望を受け入るよう調整するから無茶ブリ押し付けられるというか。

後は日本から打ち上げられるジェミニ改の方で吸収する。


次の会議はアメリカから打ち上げられる外国人のリストである。

まだ候補者止まりである。

国籍で拒否される場合や、犯罪歴なら分かりやすいが、流石にそんな飛行士の推挙は無かった。

そうなると、身内に反米主義者(有体に言えばテロ組織のシンパ)が居ないか、とか些細な部分が無いか外務省に照会をかける。

そういう政治的な事情がある事は承知の上で、名目上の研究テーマで人を纏める。

本来は同時に多数のテーマを消化すべく、同じテーマの学者なら別々にする。

だが、お試し飛行とその国の国威発揚の為であるなら、機材を共通化する為に同じテーマの人を一緒に打ち上げた方が良い。

テーマとして

「測地学、宇宙からの植生調査、環境確認」は「宇宙から写真撮る」人たちなので、高性能の光学機器の使い方をレクチャーして、そういう機器を積んで打ち上げる。

「通信、放送、教育、宇宙利用の予備調査」は「宇宙から自国との通信」をしたい人なので、放送機具の使い方をレクチャーして、「こうのす」船長席横の放送ブースを使って貰う。

「衛星技術の確立、独自衛星の投入」という人たち、大学関係者や宇宙局の準備委員のような人も居るので、彼等の打ち上げ前に「こうのす」から投下可能な50cmサイズの小型衛星をその国で作って貰う。

その宇宙での動作チェック、軌道投入の可否判断(動かない衛星を軌道投入しても(デブリ)を増やすだけ、投下装置の操作を覚えて貰う。


故に、同時の訓練メニューについての打ち合わせも行われた。

その民間宇宙企業の資料と合わせ、どういう訓練をどう行うかスケジュールを組む。

まだ本決まりでは無い為、大体の事にはなるが、共通でする訓練とテーマ毎の機器操作に分けていた。


2時間の会議予定が若干押して延びたりして、深夜まで会議漬けとなる。

そして最後の会議が終わった時、PCに新しい打ち合わせの要請が入っていた。

「追加7人用の生活空間、具体的には個室を含むモジュールの仕様」

について話し合いたいというものだ。

基本的に年明けに回したくない。

打ち合わせで決まった事について、発送できるよう手続きをした上で、1時間後にまた会議。

結局12月29日の仕事納めは、仕事納めにならなかった。

29日25時、一般人の日付では30日1時よりまた打ち合わせが始まる。

明けましておめでとうございます。

今年も皆さま、よろしくお願いいたします。

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