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発想を変えてみたら色々解決はしたが、デスマーチが前倒しになった

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

ジェミニ改は、元々訓練機である。

2人乗りかつ住環境は最低で、その代わり日本からでも打ち上げ可能だし、手動操縦の都合の良さであらゆる任務をこなす事が出来た。

宇宙ステーションに人数を運ぶには改造が必要であった。

それがジェミニ改2で、増設席によって最大4人乗りになった。

酸素消費量、二酸化炭素処理量も向上させての事である。

これ以上の人数を乗せるとなると、1960年代基礎設計のジェミニではない、もっと近代化した大型宇宙船を用意した方が良い。


発想の転換をしてみた。

ジェミニという最大4人乗りの宇宙船で短期滞在者を運ぼうとするから、総理の外交で持って来たリストの分が負荷となる。

もっと大人数用の宇宙船で複数人ずつ運べば、リストの追加分は消費が速く出来る、


「アメリカ民間企業の有人宇宙船をチャーターするのか」

皆が一瞬考え込んだ。

ドッキングポートは一緒の規格だが、初の試みになるからだ。

ロシア規格のプログレス宇宙船とはドッキング経験がある。

ジェミニ以外の宇宙船としては2種目になる。

「やってみよう。

 いずれはやらねばならない事だから」

と言ってはみるが、実はアメリカの企業の方でも、まだテスト運用中だったりする。

それと、早ければ3ヶ月後の打ち上げで使用する。

そんな急な依頼を受けて貰えるだろうか。

「結果どうなるかはともかく、まずは打診してみよう。

 ダメならダメで次の手を考えよう。


短期滞在チームは外国人だけではなく、日本人も募集してある。

既に応募者多数で、どう選抜するかを話し合おうとしていた。

総理が外国人の方を前倒しした事で、日本人滞在者の選抜も前倒しとなった。

「履歴書を全部ばら撒いて、表側を上にして落ちた人を第一次選抜通過にしようか」

なんて言っていたが、それも回転率と一回辺りの打ち上げ可能人数を増やせば、より多くを選べる。

広き門であれば、選抜の苦労も少なくなるのだ。


日本の場合、昨今の流行病騒動で電子化が進んだとは言え、書類行政な事に変わりはない。

総理案件だけに、総理が読む企画書にしてOKを貰わなければならない。

「仕事納めは?」

「明日。

 それも終日ではなく、早く終わると見た方がいい」

「……て事は?」

「徹夜だよ。

 今晩中に書類まとめて、秋山さんに承認貰って総理に提出しとかんと、年跨ぐぞ」

「1月は初旬は何も出来ないものだから、一週間から二週間の遅れになるな」

「なんとしても今年中にOK貰い、アメリカ企業に連絡入れるところまでやっておこう!」

「よし、やろう!」


かくして仕事納めの前日、皆で手分けして「どうしてそうするのか」「そうする事の利点」「他の選択肢との比較」「費用の見積もり」等を書き始める。

同様に「今年中になるべく」と、「短期チームをどう訓練するか」「選抜基準」を纏めて、1月からの外国人候補生の来日に間に合わせようと書類を纏めているチームも居る。

不夜城最初のヤマは25~26時であった。

秋山は、こうなると部下に言われていた為、帰宅しないで待機していた。

日付が変わる前に、官邸に「明日午前中に伺います」とアポは入れていた。

総理は既に官邸を出ていた為、官房長官に

「急過ぎるよ、もっと早い時間に連絡入れて下さい」

と怒られはしたが、総理が無茶ブリしている事を知ってもいる為、予定はなんとか入れてくれると言っていた。

やる事はやって仮眠していたら、PCが「メール着信」の音を鳴らす。

添付資料を読む。

印刷してる時間が勿体ない。

パパっと読んで「読んだ」と返信する。

担当者が来て説明と質問となる。


「基本はOK。

 ただ、アメリカが宇宙開発から除外している国もあるから、そこをどうするかも必要」

「どうなります?」

「宇宙行きをお断りするか、日本からアメリカに関わらない形で打ち上げるかの二択だね」

「……前者を総理が認める訳ないから、後者一択ですね」

「いや、両方追加。

 片方が物理的に無理となったら、断るしか無いというのを最初に言っておかないと」

「……了解しました」


この次には訓練計画の方も確認する。

こちらは付け足す部分が無かったので、製本を命じる。

製本と同時に、秋山の署名を電子版にして、それを官邸の担当官と総理宛てにメールする。


続いて28時、世間的には29日朝4時と言うが、この時間に宇宙船チャーターの方の第二稿が届く。

追加事項があるだけなので、差分を閲覧する。

OKとして、同様に印刷、製本させ、自身は電子署名でメールを送信する。


「アポは11時に取れた。

 10時半には官邸に入っておく必要がある。

 仮眠するから、8時半に私がまだ寝ていたら起こして下さい」

朝5時45分に、仮眠場所とするソファに向かいながら部下に頼む。


「シャワー浴びないんですか?」

「今から浴びたら目が冴えて眠れなくなる。

 起きてからシャワー浴びて新しいワイシャツに着替えるから、今むさくて臭いのは勘弁して下さい」

「いや、いいんですけどね」

「頑張れば、明日で仕事納め。

 以降は多少ゆっくり出来る筈だから、何とか今日をクリアしよう」

そう言って、明日に備えてソファの上で寝袋に入る秋山。


「仕事納めねえ。

 無事そうなるかなあ。

 秋山さんも休めない部署に引っ張られる気がするんだけど」

「余計なフラグ立ててないで、こっちも仕事仕上げて終わるぞ」


無事そうはならなかった。

それは後の話として、まずは官邸への説明へ向かうとしよう。

年末進行で、仕事納めも大晦日も関係なく仕事なのは、作者の現実と重ねています。

何だよ一体、年末に23時まで作業が残るブラック企業は!!

新作アイディアはあるけど、書き溜めが出来ん!


それはともあれ、皆様良いお年を。

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― 新着の感想 ―
[一言]  きっと、この人達には一日は24時間ぢゃなくて、30時間かそれ以上なんだな。  哀愁を込めて合掌。  今年も色々と楽しく読ませて頂きました。  良いお年を。  身体だけは御労わり下さい^…
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