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組織改編後の職員たち

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

将来的に部門が統廃合決まった事を、秋山は部下たちに伝える。

秋山は部下たちの元に戻る前に、彼等のその後の事を考えて来た。


基本的には、ほとんどの部下は現ISSやHTV-Xの部門に入る。

ただ、本来のISSやHTV-Xの部門の人員と合わせて人数過剰になる為、アメリカ及び地方赴任となる。

地方は、回収基地や管制センター、種子島や内之浦に続く打ち上げ基地が今後作られる為、左遷という形にはならない。

官僚系の中央に居ないと出世が……というのとは違い、これから仕事が忙しくなる、ある意味花形部門ではある。

……まあ、仕事も給与も出世街道的にも良いのだが、地方自治体との折衝や筑波・ヒューストンとの連携等と技術以外の雑事も増える為、その基地版秋山の立場が大量生産される事になるのだが。

平職員として行くならともかく、所長や部局長に昇進「させられる」者は秋山の苦労を味わう事になる。

出世なんてそんなものだ。

技術だけやってたいのに、管理職に「急に」着かされると戸惑うが、それでもやって貰わないと。

(平安時代とか、位打ちといって分に合わない昇進で身を滅ぼさせるやり方が有ったそうだが、令和の現在でも覚悟が無い人には通用してしまう)


アメリカ勤務は、小野の苦労を味わう事になる。

これから次期宇宙ステーションだ、月基地だ、火星有人探査だと計画は多い。

まだ何も始まっていないから準備から関わる。

ただ、有人宇宙船購入が確定していた小野の時と違い、これからの計画は「NASAの中では承認済み、大統領もGOを出しているが、議会で予算が着いていない」不安定なもので、小野たち以上に放牧される危険性大である。

折角日本としての協力方針が決まり、その為の各種発注を日米の企業にしても、予算が下りず最終的に中止となる可能性もある。

かと思えば、予算が下りたら遅延なく動けるよう、手配は終わっている事を要求される。

以前、「こうのす」に先立って、ISSバックアップ機能機とロシア陣営使用可能機という2種の宇宙ステーション建造計画が持ち上がり、担当を決め、キックオフのパーティーまで開いた後で「やっぱり予算つかなかったし、今のを使い続けろって事で中止」となったりもした。

日本や一昔前のソ連のように、決めた以上無駄遣いになろうとも絶対実行する、というのはアメリカには無い。

しばらく連絡無し、日本側からも具体的な指示不能な状態で、自分から動き、自分で無駄になる可能性込みで動かないとならない。

放牧と呼ばれるのはそんな事からだ。

なお、いくら自分で考えて仕事しろ、と言っても枠を超えた独断専行もまた許されないのだ。


一部の職員は有翼機部門に入る。

宇宙から成果物を持ち帰る機体として、リフティングボディの計画が承認された。

故に、宇宙ステーション運用部門からも人が欲しい、という要望があった。

将来的には、「こうのす」程度の低軌道を周回する宇宙ステーションなら、滑走離陸で出発した有翼宇宙機で接続出来るようにしたいとの事だ。

現在研究中の極超音速旅客機だが、荷物と搭乗人数を減らし、エンジンを強化し、ブースターを付ければ、ギリギリ低軌道に届くというのだ。

無論、ほぼ片道分の燃料で、帰路は滑空飛行し、着陸時のみエンジンを使うからその分の燃料は残す事になる。

低軌道まで荷物を運べるリフティングボディーも視野に入れている。

「え? これサ〇ダーバ〇ド2号??」

秋山は以前構想図を見せられ、思わずそう漏らした。

「空想科学番組の小型ビー〇ルっぽいデザインじゃないんですか?」

「あれは小型のを持って行き、無人で降下させるからああいうデザインになったのです。

 人が乗り、大量に輸送する、そしてエンジンが有るならデザインは変わります」

「え? 人を乗せる気?」

「でなければ、有人宇宙飛行部門とこんなに接近しませんよ」

かつてこんなやり取りがあった。

こちらに回る職員(科学者、技術者)は、きっと楽しいだろうな。

……予算はあまりつかないが。



「……という訳で、3~5年後に組織改編があり、皆さんは異動となります。

 こういう事情がありますので、来年度以降は新人や中途は入りません。

 出向でどこかからこちらに来て貰う事はありますが、基本、今のメンバーが減る事はあっても、増える事は無いと思って下さい」

これが一番職員にはショックな事だった。

異動しても、全く別畑の仕事をする訳ではない。

そこに不満は無い。

仕事が増えるのも結構な事だ。

だが、人手があるというのが前提条件だ。

立ち上げ時より去年、去年より今年仕事が楽にこなせるのは、新規事業である有人宇宙飛行とその書類業務に慣れて来たのもあるが、人員が増えて手分け出来るようになったのが大きい。

「こうのす」を使った研究計画は、大体スケジュールが決まり、ミッションスペシャリストの選考と訓練等やる事も決まっている。

だが、それ以上が出来ない。


「宙の湯計画はどうなります?」

「天空リゾートは?」

「宇宙ホテルの実験も計画していましたよね?」

「宇宙ステーションで組み立てた探査機による深宇宙探査は?」

妄想も込みで、やりたい事は多数あった。


「やりたい?」

「やりたいです」

「やるなら、総理案件で予算が使え、審査も甘い、今の部門の内ですね」

「では!」

「今いる人員で、余暇を潰してやりましょうか」

職員はブラック化を宣言されたが、好きな事やるのにGOが出て、嬉しいやら厳しいやら。

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