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NASAに相談してみた

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

2ヶ月のミッションを終え、先にコアモジュールに乗り込んでいた二人の宇宙飛行士が帰還した。

残り二人は、最初のミッションスペシャリストが到着後、宇宙ステーションを引き継いでから帰還する。

二週間後にミッションスペシャリスト第一陣の半分、2人が任務に就く。

その一週間後に農場モジュールが打ち上げられ、ドッキング作業を行う。

これが済んだ後、地球に帰還する。

入れ替わりにミッションスペシャリスト第一陣の後半打ち上げの2人が到着し、4人体制での宇宙ステーション運用となる。


帰還した宇宙飛行士は、問題視する程ではないが、太っていた。

あえて制限をかけず、食べたい時に食べたいだけ食べて良いという、ストレスの無い食生活がモニターされていた。

その計算よりも、数値が悪い。

2ヶ月だから良いが、この宇宙ステーションは「長期宇宙飛行における自給自足」を視野に入れている為、その数値が約3年(火星を想定し、2年2ヶ月毎の最接近の前後に発進し、約半年×2の往復航行を想定)になるとどんな問題を引き起こすかを考える。

シミュレーションの結果は、非常によろしく無い。

食事制限をすれば問題は無いが、それは対症療法に過ぎない。

原因をまず特定しよう。


火星探査に一番積極的なのはアメリカである。

今回も今後も、アメリカはデータを注視している。

そのNASAにも意見を聞いたら、流石にデータが有った。


フランス人飛行士を除き、3人の宇宙飛行士は空自上がりで、途中民間航空会社を経由していたりする。

アメリカも空軍から宇宙に行ったりする。

彼等軍人上がり、または現役軍人は大食である。

我慢しろと命令されたら食べないが、それ以外は大食なのだ。

これは激しい訓練とセットである。

体を動かすから、その分の補充と対になる。

宇宙でのミッションも激務ではあるが、頭脳労働で糖分を求めてしまうのと、無重力での日常生活では筋肉を使わず、骨に負荷が掛からない。

骨と筋肉は弱りやすく、代謝が悪くなる中、食事量は変わらない。

アメリカでは食事量の制限の他に、軍人用には高負荷の運動を義務付けている。

軍人ならば激しい訓練にも耐えられる。

メニューが違うのだ。

更に、元々筋肉量が多い軍人は、減少しやすい為、サプリメントも処方する。


「それでも、今回のミッションでは足りない」

NASAの人間はそう言う。

宇宙食というのは効率の良い食べ物なのだ。

宇宙では、排泄物は少ない方が良い。

尿を少なく(水分は必要量)、屁を出さない(密閉施設で臭いが篭ってはならない)ように作る。

生鮮食料品を使う料理ではこの辺り、作る者の技量に頼らざるを得ない。


「軍人じゃない、普通のミッションスペシャリストならば?」

この疑問に対しては

「今回のミッションで課したメニューで十分。

 軍人用のメニューはあくまでも軍人用。

 飛行士が民間人ばかりで、軍人は知らなかった日本が知らないのは無理も無い。

 アメリカから情報提供しよう」

体格、性別、年代別のデータベースが提供された。

軍事機密の一部だが、総理の外交の成果で情報共有が許されたのもあって、貴重な情報が得られた。

だがそれ以上にNASAは、アメリカにも使用権が有るから、彼等は自分たちの問題として捉えていた。


身体に負荷をより大きくかける運動器具……、開発チームは直ちに設計を始めた。

重力が無い以上、骨や筋肉に圧を掛けるのは何か?

バネの戻ろうとする力。

腰や脛にハーネスを付け、ジャンプするとワイヤーが引っ張られ、それが戻る力で着地させるトレーニング器具。

これを改造しよう。

そして大◯ーグボール養成ギプスのような過負荷トレーニング装置が考え出された。

常にこれを着用しては? という意見も出たが、魔球投手でも飛天御◯流継承者でも、霊光◯導拳の修行でもないから

「日常からおかしな負荷を掛けると、かえって骨が歪んだ形に整形されるだろう」

と却下した。


二週間後に迫るミッションスペシャリストの打ち上げまでに、速成で栄養学の講習も行われる。

料理の腕や創意工夫では互角の3人の専門料理人だが、既に栄養学を仕事しながら専門学校で履修済みのフランス人シェフに一日の長があった。

その為、打ち上げチームは全く予想外の判定でフランス人シェフの居る組が一番手と決まった。


まだ軌道上にいる宇宙飛行士にも指示が飛ぶ。

現状のトレーニング器材の張力や荷重を増やし、トレーニング内容を変える。

バイク運動(自転車漕ぎ)の時間を減らし、バネ付きのバーベルを持ち上げるトレーニング時間を増やす。

栄養サプリメントの服用を義務付ける。

特にカルシウム錠剤である。

また、食事も小魚やレバー、ほうれん草を使う料理を推奨する。

フランス人飛行士が地球に帰還した為、残った日本人飛行士二名は、おひたしにパックシラスを乗せ、大根おろしと合わせて醤油で食べた。

日本人は世界基準では食べない、チーズを食べるように勧め、お菓子・甘いものはなるべく摂らないように指示。

この辺は元自衛官、命令には従う。

帰還までの約1ヶ月で数値が改善される事を期待したい。


そして、いよいよ長期滞在のミッションスペシャリスト第一陣打ち上げの日がやって来た。

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