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第一フェーズ中盤

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

コアモジュールへ行くジェミニ改打ち上げから10日後という短い間隔で、「こうのとり改」へ向かうジェミニ改が打ち上げられた。


この10日、準備が大変だった。

高熱を噴射された射場を調査、損傷が無いか確認する。

気象衛星からの情報かと、軌道要素から最適な打ち上げ時間を決める。

組み立て棟でロケットを組み立てて、液体燃料を注入する。

液体燃料は揮発するので、長い時間入れっぱなしには出来ない。

打ち上げ日時が確定してから逆算して、最適な時期から注入を行う。

とりあえず決まっている打ち上げクルーの健康状態を調べ、最終クルーを決定する。

「のすり」にも必要な物資を詰め込み、ジェミニ改と共にロケット最上部に設置する。

飛行士は無菌室で待機していて、最終ドクターチェックの後にエレベーターに乗ってロケット最上部に移動し、ジェミニ改に乗り込む。

リハーサル無しでこれらをこなし、ジェミニ改は打ち上げられた。


こちらも打ち上げ当日にドッキング可能となるSコースで「こうのとり改」に到着する。

先日の大掃除で、実験用パネルや観測用コンピュータパネルは撤去され、やや広くなった船内に荷物を運び込む。

コアモジュールとドッキングし「こうのす」を形成後は、倉庫兼予備居住区として使用される。

また、今ドッキングしている「のすり」は、コアモジュールに移動する操縦席となる。

現在の「こうのとり改」は宇宙滞在に必要最低限の機能しか持っていない。

だが、それ故に生活空間としては快適となった。


微妙に違う軌道のコアモジュールに、「こうのとり改」は速度を上げて追いつく。

両方とも高速で地球の周りを公転している為、追いかけっこは、3日時間をかけて、ちょっとずつ距離を詰めていく。

肉眼でお互いを確認出来るようになって半日、もうドッキング可能に見える位置に到達した。

ここからが本番である。

軸線上にドッキングするなら問題無い。

「こうのとり改」は、コアモジュールの下部(と言うのも無重力では相対的だが、今は地球側を向いている方)に接続される為、コアモジュールのロボットアームに把持された後に90度回転する。

それが上手くいけば良いが、上手くいかない場合、自分で姿勢制御をする必要がある。

その為、1人は操縦用に残る。

もう1人は、現在ドッキングしているジェミニ改に乗り、分離してコアモジュールの反対側に移動し、そちらにドッキングする。

「また会おう」

握手をして、2人の飛行士は別れる。

1人はジェミニ改に乗り、1人は「のすり」の操縦席に座る。

万が一の事態に備え、2人とも打ち上げ時と帰還時に着る与圧服に着替える。


ジェミニ改分離後、ロボットアームが「こうのとり改」を把持する。

この状態でしばらく待機。

その間に、「こうのとり改」の太陽電池パネルを一時畳む。

ロボットアームによる回転の際に、外れたり障害にならない為だ。

しばらく「こうのとり改」は内部電池のみで機能する。

やがてジェミニ改がコアモジュールの後部ドッキングポートに移動。

データリンクに成功、自動ドッキングに成功。

最低限の相互チェックをし、ハッチが開けられ、飛行士がコアモジュールに移動する。

「広っ!」

ちょっと前まで、やや広くなった「こうのとり改」に居たのだが、容積で10倍近く大きいと声が出てしまう。


コアモジュールに居る飛行士が3人になった。

握手をする3人。

残り1人とも再会すべく、ロボットアームが操作される。

操作するフランス人宇宙飛行士は、ISSでも「こうのとり」のドッキングをした事がある。

アームの操作で一日の長が有る為、任された。

既に把持しているから、それからは焦ったい感じであるが、ゆっくりと回転させてドッキング態勢にする。

余り速い回転だと、アームが壊れるし、トルクがつくと回転し過ぎてしまう。

じっくり90度回転させ、ドッキングポートに正対させると、またゆっくり引き寄せる。

ここまで来ると、「こうのとり」+「のすり」側の飛行士が操縦する余地は無いが、それでも汗をかきながら持ち場を離れず、ドッキングを見守る。

やがて位置測定機が0メートルを示す。

ドッキングポート同士が接したのだ。

そしてドッキングポートのステータスが「OPEN」から「LOCK」に変わる。

ドッキングリングのフックが噛み合い、完全に結合された。

さらに電源が外部供給されている事を示すアイコンが点灯する。

通信で太陽電池パネルの再展開許可と言われ、「こうのとり改」の太陽電池パネルが広がる。

大きな宇宙ステーションだから、電源は幾ら有っても良い。

ハッチを隔てて3時間、全てクリアとなり、やっと合流出来る。

ついにハッチ開放。

気圧差や温度差から風が起こる事も無く、2機の宇宙ステーションは連結された。

コアモジュールには4人の飛行士が集まった。

4人も居ると寂しいって感じは無くなる。

賑やかになったが、まだ作業は残っている。

ギアナから打ち上げられるフランスモジュールドッキングで、やっと「こうのす」として運用が始まるのだ。

到着は1週間後。

まだまだ仕事は続く。

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