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第一フェーズ前半

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

種子島宇宙センターでは、ジェミニ改初期型の打ち上げ準備が進んでいた。

10日間隔で二機を打ち上げる慌しいスケジュールとなっている。

その打ち上げの為に、バックアップ要員含めた8人の飛行士が宇宙センターに集まって、アメリカの情報を待つ。

そしてアメリカから、次期宇宙ステーション「こうのす」の最重要区画コアモジュール1、打ち上げ成功の報が届いた。

バトンは日本に回って来た。


フランス関係者も中継を見ている。

臨時生産されたH-2B有人機対応型が射場に立った。

日仏のチームという珍しい組み合わせが、エレベーターでロケット最上段に移動し、ハッチからジェミニ改に乗り込んだ。

それを外から閉めて、地上スタッフが安全最終確認する。

そして打ち上げられた。


今迄は訓練を兼ねて、悠長に地球を何周もしながら宇宙ステーションに向かっていた。

今回は、ジェミニ改と一緒に詰んでいた「のすり」多目的輸送機とドッキングし、早々にコアモジュールとのドッキングに向かう。


1970年代、アメリカはスカイラブという宇宙ステーションを打ち上げた。

スカイラブは左右の太陽電池パネルを展開する予定だった。

しかし、打ち上げ時の衝撃か何かで片側が展開出来なくなった。

その為、当初スカイラブは電力が予定量得られず、かつ放熱が上手くいかず、宇宙飛行士が乗り込んだ時には蒸し風呂のような温度になっていた。

宇宙飛行士は直ちに修理を行うも成功せず。

追加の太陽電池パネル(X字型のもの)を取り付け、放熱機能を回復させて室温を平常に戻した。


といった過去を踏まえて、予定として宇宙ステーション打ち上げ後に、即座に宇宙飛行士も搭乗し、長期生活に可能な環境になるか確認し、場合によっては早期修理をする。

現在のところ、地上からの指令コマンドは「全て良好(オールグリーン)」。

太陽電池パネル展開、正常。

放熱機能、正常。

室温、問題無し。


ジェミニ改はコアモジュールと同じ軌道に乗った。

そして軸線上のドッキングポートに結合する。

ここからは慌てず、宇宙ステーションとの気圧差や空気漏れの確認、コンピュータとの接続確認等をしっかり行う。

そしてハッチを開け、コアモジュールに乗り移る。

「広いなあ」

と感想が思わず漏れる。

広いのは良い事だけではない。

しっかり細部まで換気がされているか、確認しないとならない。

設置機器の問題で二酸化炭素溜まりとか、水滴が出来やすい箇所が電装系近くだったりする事がないように設計はしたが、物の設置等はその都度変わる訳で、実地で確認する必要もある。

毒ガス検知器とまでは言わないが、空気の異常を検知する機器が正常に機能しているか、確認する。


やがて、カナダアームことロボットアームが、ドッキングコースに入って来た。

大型なので、別なロケットで打ち上げられたのだ。

これが宇宙ステーションと同じ軌道に入り、ランデブーする。

ロボットアーム自体には姿勢制御エンジン等無い為、分解状態で運搬用無人機で運ばれて来る。

これを、まずは「のすり」の小型アームで把持して固定した後、船外活動で所定の位置に設置、組み立てる事になる。

船外活動で2人というのは、作業員とバックアップのギリギリの人数と言える。

最初の計画では、最大4人乗りのジェミニ改2と「こうのす」は同時期に運用開始となっていたが、諸種の事情でジェミニ改2は遅延(ペンディング)となっている。

2人作業は予定外の重労働である。

だが、このアームを設置しないと、今後のモジュールの結合が出来ない為、今の内に作業しておく必要がある。

幸い、今回の飛行士は船外活動の経験がある為、訓練と違って手こずる事も無い。

交替しながら、半日で組み立て終わり、動作確認も終えた。


カナダアームが動くとなると、様々な部品が送られて来る。

アメリカに発注したロケットから、拡張太陽電池パネルに、増設アンテナ等、円筒形のモジュールから外部に飛び出して取り付ける部品が、打ち上げ日中に到着する。

ロボットアームで掴み、所定の位置まで運び、船外活動で組み立てて、動作確認をする。

こういう作業が毎日繰り返されている。

船外活動服の酸素タンクも何度も交換される。

中々忙しい日々が続いているだけに、広さと、睡眠時のベッドを快適にしたのが功を奏している。

宇宙食も、専門料理人が調理しない、レトルトタイプのものとしては最高級品を持たせた。

ただし、労働の事を考えて、多少塩分多めになっている。

日本(ジャポン)の宇宙食はISSでも人気だからね」

とフランス人飛行士が言う。

そう褒めるフランスだが、フランスとて3つ星レストラン複数経営のカリスマシェフの協力を得て宇宙食を提供している為、余裕を持っての発言であった。

美味い食事と快適な寝床で疲労回復させながら、組み立てや船内調整を分単位のスケジュールでこなしていった。


コアモジュールのセットアップは、こうして完成しつつあった。

そして地上から連絡が入る。

「こうのとり改」の運搬要員を乗せたジェミニ改は予定通り打ち上げられると言う。

作業は増えるが、宇宙飛行士が4人になると大分負担も少なくなる。

「早く来て欲しいですね」

多忙なので、一刻も早くやって来てほしいところだ。


そして種子島宇宙センターから2機目のジェミニ改とのすりを搭載したH2Bロケットが打ち上げられた。

両機が軌道上で出会うまで、一週間を切った。

そしてフランスも自分の担当モジュールを打ち上げるべく、ギアナ高地の宇宙基地に指令を送る。

いよいよ「こうのす」が始動する。

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