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訓練メニュー

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

いよいよ次期日本独立宇宙ステーション「こうのす」の建造が始まる。


第1フェーズは、コア1と呼ぶ中央生活スペース、コンピュータ室、生命維持装置等のモジュールに、現在運用中の「こうのとり改」とフランスモジュール「ビストロ・エール」、農業実験モジュール「かるがも」、そして補給がドッキングした形で運用スタートする。

「かるがも」の名称は、水田耕作でカルガモを使う農法がある事から取られた。

ジェミニ改はコア1に前後1機ずつドッキングし、長期滞在のみの4人で生活する。


第2フェーズは、コア2と呼ぶ、コア1と同じモジュールが接続され、そのドッキングポートに短期滞在者用の実験モジュールと、倉庫を兼ねた補給機がドッキングして運用する。

長期滞在者と短期滞在者が混在となる。

この頃から、最大4人乗りのジェミニ改2が運用開始となる為、常駐は6人、最大8人体制で運用する。


第3フェーズは、耐用期限を大分超過した「こうのとり改」を外し、代わりのモジュールを繋げる他、コア2側ドッキングポートの空いている2基にもモジュールを接続する。

このモジュールの中には、ロシア式ドッキングポートを備えたものも有り、最大3機の有人宇宙船がドッキング可能となる。

1機がソユーズで3人乗り、残り2機がアメリカ有人機(ジェミニ改とドッキングは同仕様)7人乗りとすれば、最大17人を一時的に滞在可能とする。


それぞれのフェーズで、必要な電力、酸素、二酸化炭素吸収能力、設備数が変わる為、都度強化作業を行う。


その中のまずは第1フェーズの構築作業を行う。

作業として、コアモジュールを単体でも使用可能なように立ち上げ作業を行い、ロボットアームを使って「こうのとり改」と「ビストロエール」を連結する。

こちらの作業は比較的簡単だが、このコアモジュールが動作していないと全ての作業が出来ない為、確認作業は重要となる。

ロボットアームは、「こうのとり改」の小型のものではなく、ISSでも使われている大型のものになる為、コアモジュールとは別のロケットで打ち上げられるアームを、ランデブーしながら受け取り、船外活動で接続も行う。

この作業用に、ついに外骨格型パワードスーツがデビューとなる。

例えば、回転が加わった時に、命綱を付けていても人間の力では制御出来なくなる可能性がある。

そこで、コアモジュール外周の一部に設けた足場を噛み、身体を固定させながら、重量物でも運搬可能な電気と油圧で人間の力を増幅する装置を使う。

外的な要因で身体が捻られたり、引っ張られたりしても、外骨格にあたるフレームが防いでくれる。

訓練では、このパワードスーツの習熟を行う。


一方、二番機組の訓練は厳しくなる。

やる事は、以下の通りである。

まず「のすり」とドッキングの後、「こうのとり改」ともドッキングし、3機連結状態になる。

3機態勢でコアモジュールとランデブーする。

1人を「こうのとり改」プラス「のすり」に残し、ジェミニ改は分離し、コアモジュールの別のドッキングポートにドッキングする。

「こうのとり改」「のすり」は、コアモジュールのロボットアームが把持キャプチャー出来るポジションに移動して静止する。

おそらく問題が無ければ、今回は軌道変更や位置調整を担当する「のすり」の自動航法ですんなりドッキングまで運ぶだろう。

しかし訓練は、上手くいかない場合を想定して行う。

パターンとして、「のすり」が不調の場合、自動航法のプログラムを「こうのとり改」にインストールし、こちらから行なったり、またはジェミニ改のエンジンを使う事を選択し、調整するというのがある。

コンピューターが不調なら、3機のどれかで手動マニュアル操縦もする。

重さも推進力も結合位置も異なる3機のどこで操縦するか。

重心も推進力も外の見え方も異なる為、それぞれの操縦をシミュレーターで覚える。

また、ジェミニ改も最終段階では一人乗りで、「こうのとり改」から離れてコアモジュールにドッキングし直す。

サポートするコ・パイロットのいない状態でのドッキング訓練も行う。

「こうのとり改」側に残った1人は、ドッキング位置まで場合によっては手動マニュアル誘導、ドッキング後に気圧や温度の調整を行う。

これを役割分担ではなく、どちらが担当しても良いように、ジェミニ改側、「こうのとり改」側それぞれを訓練する。


一番機、二番機それぞれのバックアップクルーも入れて8人で訓練する。

シミュレーターの数はそれ程多くないのが残念だ。

繰り返しになるが、おそらく二番機は本番では地上管制で自動航法が起動したら、宇宙飛行士の役割は数字の読み上げと、ジェミニ改への座席移動くらいになる。

万が一、億が一の為の訓練である。


そしてフランス人飛行士は、自国モジュール「ビストロエール」の立ち上げと、宇宙での実際の状況確認を兼ねた料理訓練を別メニューでしている。

「趣味以外で料理を振る舞う事になるとは思わなかった」

とCNESからNASAに派遣されて正規宇宙飛行士として働いていた者は苦笑いしていた。

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