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再会

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

大気圏再突入実験で有翼型の喪失は、これまで有人飛行部門がして来た中で、初の失敗となった。

回収機としてはカプセル型が本命で、これは本実験及び、プラモデルやフィギュアやらコーヒーやら中に入れてパフォーマンスするサービスステージもクリアしている。

エキストラステージ、つまり本実験終了後の余事での失敗だけに、大問題とはならない。

だが、失敗こそ様々な貴重なデータを得られる。

だから、喪失海域でフライトレコーダー及びボイスレコーダーを回収して検証する。

所謂ブラックボックスだ。

玩具よりは大きなサイズの実験機だが、飛行して管制空域に進入する為、航空機に準ずる計器を搭載していた。

ボイスレコーダー、それは本来ならパイロットのやり取りを記録する目的で搭載されるが、それ以外でも機体が破損する音や、警報が鳴ったか鳴らなかったかを確認する等の情報が得られる為、無人実験機だが搭載した。



秋山は思う。

報告を聞いた上長も、アメリカのカウンターパートも総理も同じ事を思った。

「無人機の事故で良かった。

 人命が失われていたらとても言えないが、

 貴重な経験をしたと思い、再発防止をしよう」


事故調査委員会が開かれる。

無人実験機とは言え、航空機なので、各種官庁が関わる。

空域管制をしている国土交通省にも報告を上げないとならない。

通りますよ、と通達し、その時刻に民間機及び軍用機が通過コースに入らないよう、三次元で管理して貰っていたのだ。

同じように、日本の空の一部を管理している在日米軍へも報告を上げる。

第一報として事故当日、失敗した、どこの空域に逸れた、墜落した、と話したら、連絡を受けた士官及び司令官は非常に残念がっていた。

……パーフェクトグレードのプラモデルが失われた事に。

彼等も無人機の事故で、人命が失われていない為、そんな感じではあった。

なお、ジェニングス中尉が軌道上で

「空軍入隊以来最難関のミッション」

と称したパーフェクトグレードの可変型のプラモデル作成は、航空管制で話を通した基地で提案したものである。

基地司令官自身がノリが良く、俗な方の日本文化を愛する「この俗物が!」と言われたい側の人なので、本国の国防総省にまで提案書を出したようだ。

なんでもアメリカでは、長期宇宙飛行において退屈させないよう、遊びについても研究している。

テトリス等のゲームなんかがそうだ。

故に、嫌がらせに近いパーツ数のモデル製作も、テストの一環ではあった。

八割不器用無趣味なジェニングス中尉への嫌がらせ、二割テストであったが。



そのジェニングス中尉を乗せたジェミニ改は、無事太平洋のアメリカ管制区域に着水した。

カプセル内部は平温が維持された筈だが、中尉は真っ白に燃え尽きたまま降りて来た。

ただ、真っ白に燃え尽きた男は、このままお役御免とはならない。

事故調査委員会に報告を上げて貰う事になる。

嫌がらせぽく受け止められていたプラモデル組み立て動画撮影も証拠資料となる。

嫌々作って壊れやすい物になり、例えば旋回中に壊れて重心が変わる「荷崩れ」の原因となっていないか?等の調査に使える。


「まあ、日本まで行く必要は無いですが」

船長を務めた谷元飛行士とアメリカ駐在の小野が再会し、秋山からの伝言を伝える。

軌道要素とかは、日本の管制センターの記録した数値と、回収した宇宙船のブラックボックスのデータを照合し、答え合わせさえ済めば、あとは中の宇宙飛行士からは証言動画を送ってくれたら良い。

宇宙飛行士による作業で、影響がありそうなのは投下前のセッティングと、投下装置への装着時くらいであるし、それも動画記録が残っているから証言で良い。


「大気圏再突入という人命に関わる過程の実験で、

 皆が『人が乗っていなかったのが幸い』

 そう言ってますので、事故調査とは言っても雰囲気は明るいですね」

小野は日米地上での様子を谷元飛行士に伝える。

軌道上ではよく伝わらなかったであろう、地上での様子を伝えて安心させたのだ。

コミュ障気味ではあるが、こういう気遣いは出来る為、コミュ障「気味」である。

(用も無いのに話しかけられると、どう返したら良いか分からないタイプ)



日本では海洋研究所の海底探査ロボットが出動した。

ブラックボックスは玩具のような実験機用とは言え本格的で、墜落後2週間は自分を知らせる電波を出し続ける。

レーダーで墜落(自爆)直前まで追跡も出来ていた。

だから位置はすぐに分かったものの、だからといってすぐに見つけられるものでは無い。

本格的な機能を有していても、やはり玩具のような実験機に合わせて小型化している為、海底に沈むと探し難い。

すぐ近くで電波を出していても、潜水ロボットのカメラの視野で探すのは中々難しい。

しかし、以前にもH-2ロケットの事故で、海没した電波も発しない残骸を回収した海洋研究所、ノウハウはバッチリ残っている。

72時間で岩陰に落ち、縦になっていたブラックボックスを発見、回収した。


秋山は海洋研究所の協力に感謝の言葉を述べる。

ブラックボックスは、機能は本格的だが、耐久性だけはサイズ相応だ。

半導体技術が発展した現在、記録装置の小型軽量化はいくらでも出来るのに、航空機のブラックボックスがどうしてあんなに仰々しいかと言うと、爆発や墜落の衝撃に耐え、深海や泥の中に落ちてもデータを保持する為である。

今のところ、玩具サイズのブラックボックスも動作しているように見える。

しかし、実際開けてみたら、記録は壊れているなんてザラにある。


「よし、断片でもデータを残していてくれよ。

 徹底的に調べてやるからな」

秋山は再会したブラックボックスが開かれるのを見ながら、そう語りかけた。

ゼータガ◯ダム第10話と同じサブタイトルですが、わざとです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 》空域管制をしている‘運輸省’にも報告を上げないとならない 国土交通省でわ?
[一言] 海水に浸けてから真水に浸けないと……
[一言] ブラックボックス!? 真水に漬けないと...
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