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宇宙ステーションも専門部署で取り扱う

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

秋山は宇宙飛行士訓練部門だけでなく、予想通り宇宙ステーション部門の責任者も兼任となった。

両者は隣接しているし、宇宙ステーションの船長はミッション・スペシャリストではなく宇宙飛行士がなるので、仕方ないと言えば仕方ない。


今までは、ジェミニ改に搭乗可能な2人が、訓練も兼ねて小型宇宙ステーション(ISS補給機の改造)で各種実験をしていたから、組織というものは考えていなかった。

次回から本格的に、研究専任のミッション・スペシャリストが滞在する為、役割分担も出来るし、宇宙ステーション内の組織を考える事となる。


船長は宇宙ステーションの機体管理に専念する。

最近まで4人滞在として来たが、計画変更で6人滞在と変わった為、副船長も置く事とした。

副船長の1人は、船長のバックアップで宇宙ステーションの機体管理を行う。

船長1人だと、通信や定時点検程度は他のミッション・スペシャリストに任せられても、例えば船外活動が必要な時のサポートだったり、非常時で脱出する際に船長自身が倒れてしまったら誰も対応出来ない、という問題が生じる。

交代出来る宇宙飛行士は必要なのだ、特に数ヶ月に及ぶ飛行計画なのだから。


もう一人の副船長は、某宇宙戦艦的に言うなら生活班長となる。

技師長・航海長・通信班長・艦載機乗組員を船長と船長寄りの副船長が交代で行うのだが、生活班長的な副船長は、船医、備蓄品管理、研究員の取りまとめを行う。

24時間仕事をする訳ではないので、1人で何とかなる。

その生活方副船長の下に、料理長が置かれる。

料理長が生活方副船長を兼任しても良い。

料理長はプロを持って来るので、替えのいない専門職だ。

宇宙ステーション内の生活を支える重要な役割で、かつ備蓄品の管理もまた宇宙生活を支える上で重要だ。


研究専門は2〜3人となる。

1人は農業関連、他方は工業、化学、物理学、天文学、気象学等ミッション毎に変わる。


役割は分けたが、専任ではなく、ローテーションを組んで補佐もして貰う。

生活は、休養・主任務・健康維持・自由時間を確保するが、他に当直と他者の補助も一日の中に入れる。

モニター監視、地球との通信係(話していない時は暇だが、いつ連絡が入るか分からない為、誰かには居て貰う必要がある)、実験や料理の手伝い、清掃等の「専門で無くても出来る仕事」はやって貰う。

というか、一つの仕事は2人以上が関わって、ミスを減らすのが目的だ。

如何にプロ、専門家と言えど、任せっきりだと思わぬヒューマンエラーをして気づかない場合がある。

防げない。

気をつけて下さいなんて注意したって、疲れていたり、作業がマンネリ化したり、やらかしてしまうのが人間だと管理職はいい加減学ぶべきなのだ。

だから1人に任せっきりにはしない。

ミッション・スペシャリストの訓練にもそれが取り込まれている。

だからこそ、他人の仕事にも気を配れるかどうかの人間性を見たり、チームの和が乱れないか、協調性が有るかを合宿審査で見るのだ。


「あの有名な宇宙戦艦みたいに、999人乗っていたら、仕事も楽なんでしょうけどね」

誰かがそう言ったが、あれの元々は114人乗りで、それでも生活班長がレーダー手をし、医療補助もする等複数の仕事をしていた。

新作では現状の船舶に倣い、三交代制としている。


宇宙ステーションの人員も、4人から6人と、3の倍数になった為、ローテーションを組み易くなったのも事実だ。


宇宙戦艦と宇宙ステーションの違い。

乗ったら後は人員の出入りが少ないものではなく、宇宙ステーションの場合は短期ミッション・スペシャリストと交代要員が来て、生活する場合がある。

2週間程度だが、最多で12人が宇宙ステーション内で生活する。

その場合の生活ローテーション、引き継ぎといった事も考えねばならない。




「……と言う訳で、地上スタッフの役割は更に重要になった。

 宇宙ステーションに着いたメンバーに、自分たちで決めろとか言っても時間の無駄なので、到着と同時に全員が自分の役割通りに仕事を出来るよう、タスクマネジメントを完璧に行う。

 体調管理をし、無理をさせない。

 その為の地上管理職です。

 単なる監視役じゃないので、誤解しないように」

秋山は、宇宙ステーション専任に割り振られたスタッフをそう指導した。

モニターを見て、通信機越しに指示を出して、偉そうに椅子に座っていてはいけない。


「……無人の観測機に対してすら、無駄の無いスケジュールを組み、故障は任務前になるべく見つけ、柔軟に計画変更して来ましたから、言われなくても分かってますよ」

と言い返されはしたが、たまに人間に指示を出す役割だと、相手より自分が偉いと錯覚し、サボらせずに無理をさせるのが自分の役割と勘違いする人が出る為、釘は刺しておくものだ。




と言う事で訓練部門と宇宙ステーション部門の方針の差がはっきりした。

訓練部門は、何が起きても対応出来るよう、なるべく無茶をさせる。

特に地上訓練において。

犠牲者が出てからでは遅いから、死ぬならシミュレーターで何度も死なせた上で、宇宙に送る。

宇宙ステーション部門は、無茶は絶対にさせない。

彼等は宇宙に行くという貴重な時間を過ごす訳で、その時間を目一杯実験・研究に費やして貰う。

故に、個人としてではなく、チームとして成果を出すように地上スタッフは気を使う。


「宇宙ステーションで実験・研究の成果を出すべく、ミッション・スペシャリストも訓練部門で訓練を受ける訳で、そこの扱いは微妙ですよね。

 彼等は宇宙飛行士じゃないから、心が折れても最適の行動を取れるようになる、必ず死ぬ条件での訓練とかは課しませんし、だからと言って必ず誰かが助けてくれる、なんて温い訓練では意味がない。

 訓練部門も頭が痛いでしょうな」

「一応日本で訓練はするが、外国人が乗り組む場合の生活管理も面倒だね。

 ムスリムの場合、礼拝の時間は確保してあげないと。

 方角は、まあ大雑把に地球のある方にしといて。

 宇宙ステーション部門はその辺しっかりね」


両部門を秋山が統括管理させられる訳である。

両方知ってないと難しいのだから。

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