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その後

俺たちは町の宿屋に泊まった。代金は王宮が肩代わりしてくれた。一週間。俺たちはその時を静かに待った。その間にレジィに会いに下水道に行った。彼女はそこで待っていてくれていた。今までのやり直しのことを詳細に話し、レジィは俺の伴侶となることを受け入れてくれた。契約を交わして、彼女は俺から二度と離れることはないと誓った。枯れ井戸には何度か訪れたが、ノクスの姿はなかった。その間にプルと出会って連絡先をもらった。彼女とは追々絆を深めていこう。ムリエルは相変わらず、酒場で入り浸り、ワンナイトラブを提案したら乗ってくれた。レジィにとやかく言われながら、ムリエルとのひと時を過ごした。俺は彼女に俺の生い立ちを話した。孤児だったこと、ヘカテーに見つけてもらって、いろいろ教わったこと。それでも毎日が何だかさみしかったこと。ヘカテーが亡くなって、偽のヘカテーと暮らすようになって俺の心がやっと満たされるようになったこと。彼女はただ頷きながら聞いた。子供が出来た時、養育費が欲しかったら俺の家に来るように言った。詳細な地図も渡したが、後の事だが、彼女が俺の元を訪れることは二度となかった。英雄王が、聖女の神殿に行く日、人ごみに紛れ見送った。一般には、ご静養ということになっているらしい。最後まであの男は穏やかだったのが、少々悔しかった。ヘカテーを殺したことを、最後まで後悔させることはできなかった。四日後、英雄王マルスの死が城下町を駆け巡った。最後まで穏やかだったであろう。あの男の顔が浮かぶ。表向きには病死だが、俺たちは王宮に呼ばれ、赤く血の付いたあのナイフを受け取った。英雄王マルスは約束を果たし、このナイフで散ったのだ。それだけが多少の救いになった。ルーナは王宮に勤めることになった。英雄王マルスの最後の気遣いで、女神でない五年間をそこで過ごすこととなった。彼女を定期的に見に来るという約束をして、俺は荒野の住処に戻った。結局ノクスとは会えていない。


それから半年・・・。


俺は幻獣を狩っていた。ユニコーンの角は薬にもなり、高く売れる。乱獲しすぎない程度に狩る。それでも数十本の角が集まった。そろそろ家に戻ろうとした矢先、怪我をしたユニコーンに寄り添う一人の女性がいた。処女厨で有名なユニコーンだが、その女性が寄り添っても嫌がるそぶりは見せない。

「ノクス・・・。」

その言葉に女性が反応する。耳をピンと立て、俺の方に注目した。

「話したいことがたくさんある。時間はまだあるのか?」

「あとわずかよ。でも、聞いてあげるくらいなら惜しくないわ。」

俺は詳細に今回あった出来事のすべてを話した。レジィが紅茶を入れてくれた。彼女はノクスを偉く気に入り可愛がった。ノクスは俺から紡がれる言葉を信じてくれた。王に復讐は果たせなかったが、その罪が途切れたことを酷く喜んでいた。

「残りの余生ぐらいは静かに暮らしたい。」

彼女のその言葉で、一緒に暮らすことを提案した。最初はぎこちなかった共同生活も、半年が過ぎるころにはなじみ、俺はレジィとノクスと床を共にした。最初に身ごもったのはノクスだ。腹が臨月になり大きくなると、レジィが献身的に世話をして、無事に生まれた。それから少したって、レジィも懐妊した。彼女は手際よく自分の子を産んだ。ノクスは想像していたよりも生きられた。自分の子が三つになるまでその頭を撫で続けられた。その後はレジィがいい親となった。俺は不器用で、背中で語るぐらいしかしてやれなかった。プルとルーナとの交流も続いていた。家に呼んだこともある。プルは子供ができると、故郷に帰っていった。ルーナは王宮にこもりきりになったが、元気そうではある。俺はそんなに長く生きられなかった。一番上の子供が十二になったとき、病気にかかった。完治は絶望的と言われたので家で過ごすことに決めた。レジィは良妻だった。懸命に俺の世話をしたが、俺はこの世を去った。復讐を決めた者の運命は長くない。この世界でよく言われていることだ。それでも俺に後悔はなかった。最後にはマルスをこの手で直接殺すことはできなかったが、満足のいく復讐は果たせたのだと己を納得させた。少なくとも、マルスはまだ生きたかったはずだ。それをへし折った。本人が受け入れたとしても、それは俺の実績の一つのようなものだ。


最後に見た太陽はまぶしかった。俺が死んでも、この太陽は昇り続けるのだ。子供たちがこの世界に安寧をもたらしてくれるのが楽しみで仕方ない。俺は最後の息をそっと吐いた。

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