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三茶浪漫  作者: たま


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肆拾陸

亡き夫の追悼公演がキャロットシアターで無事上演された。

子供達と亡き夫の演技やプライベートショットを見ながら涙したが、悲しいより楽しかった事ばかりが浮かぶ。

舞台に上がるのは控えさせて貰ってスポットを貰った時に子供達と一緒にお礼を言った。

帰り道、子供達はすでに明日の話をしてる。

子供はどんどん前を向き未来に進んでいく。

実相と三軒茶屋の三角地帯をめぐって大地主高嶺との係争が報道されると、人々は一連の生命保険殺人も土地絡みなのに気付き、

真相は、渋谷みたいなビルの街にしょうとする大企業と地元の路地文化を守ろうとする地主との土地を巡る戦いだと気付いてしまった。

夏の妖怪、八尺様のような美女は幻のように消えてしまった。


今夜もスナック「アクア」は賑わっている。

奥のソファ席にはゲームが軌道に乗ったクリエイターの大谷、刑事の黒田、大地主の高嶺が夜泣きが治らない我が子修斗をおんぶして楽しく酒を飲んでいる。

実相と戦うチームのような連帯感が生まれたようだ。

まだまだ係争は続くが、この三角地帯を愛する彼らはこの地を守るのだろう。

疲れたサラリーマンの男が入ってくる。

新規の客だ。

モヒートを飲みながら、ママの料理に驚いている。

食べつけないのか1個づつ名前を聞く。

なぜか杏は気になって近づく。そして脇の後ろと背中を肩甲骨の間を嗅ぐ。

「何ですか?お姉さん?僕、残業続きで風呂入ってないから臭いですよ。

やっと休みで久々家帰れるんですよ…」そう言いながら肩を落とす。

いつもはぶっきらぼうなママが優しく濡れたおしぼりを渡す。

それで顔と首におしぼりを当てる。少しサッパリしたようだ。

なぜか杏が自ら横に座った。

「!」驚く新規の客に新しいモヒートを渡しながら、

「アプローチされて好きになる事なんて無い!とか言ったけど、私が死にそうになってる時にトイレで膀胱をグリグリしながら、ションベン出せ!出さないと死ぬぞ!って必死で介抱してくれた人がいて…

朦朧としながらも、それだけ覚えてて嬉しかったな。」

と新規の客に身体を寄せた。

一瞬、男の目が泳ぐ。

「実は何にも覚えてないんだよね〜でも体臭だけは覚えてる。

特異体質でサプリとか薬とかプロテイン飲んだだけで死にかけるんだけど…極端に肝臓と腎臓が弱いみたいで。毒を分解する能力がほぼ無いんだよね〜」男の目が怒りに変わる。

「なんで、それを先に言わない!」モヒートのグラスをキツく握る。

「どのタイミングで言えば良いの?ミネラルウォーター飲んで

ミネラル中毒になるような人間なのに!

死んでも特異体質で、片付けられちゃうよ。」ママからアルコールは禁止されてるので、水を飲む。

アルコールもほとんど分解できない体質だ。

「薬の効きが半年飲み続けたくらいの状態でビビったじゃないか!」男が遠い目で呟く。

「心配して見に来てくれたの?大丈夫だよ。腎臓やっと綺麗に毒抜けたから。自分で排出出来ないから大変だったけど。」そう言いながら、そっと男の手に腕を伸ばす。

黒田が席を立って叫ぶ。

「危ないぞ!」

アクアに男の悲鳴が響いた。


ルブランのマスターのモデルのアクアのママが同じ境遇で。

お子さん3人紹介して下さって。

すっかり大人になり、もう家庭持ってて。

「安心して、ちゃんと育つから。」と背中を何度も撫でてくれた。

やっとウチの子も皆大人になって社会で働いてます。

見せに行かないといけないなあ〜

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