薬膳料理屋・彩
男性が去った後、私は店の名前を考えていた。
うーん、薬膳料理屋だから~?
彩などはどうだろうか?
うん、彩、いいじゃないか?
私は布地に彩と書いた。
そして、それを暖簾状に切り、縫って、入り口に引っ掛けた。
これで完璧だ。
あと…
テーブルと椅子がもう少し欲しいものだが…
まぁ、おいおいで良いだろう…
私がキッチンで片付けをしていると…
ある男性が入ってきた。
黒髪に黒縁の眼鏡で顔立ちはややわかりにくいが、濃い顔の美形である。
目鼻立ちはくっきりとして、少し厚ぼったい唇が印象的であった。
「何か…
料理をください…」
彼はそう言うと、席に腰を下ろした。
「何か、と申されましても…」
「何でも良いんです。
これが、この後宮での最後の食事ですからね。」
「は、はぁ…?」
私は仕方ないので、はちみつ豆乳スープを作る事にした。
豆乳と蜂蜜、それから少しの味噌と黒胡椒を鍋に入れ温めるだけの簡単薬膳スープである。
でも、これが割とイケるのだ。
私はそのスープを彼に差し出した。
「おぉ…
さっきまでの痺れが取れていくようだ…」
「は?
痺れ、でございますか…?」
「あぁ…
実は…」
彼は語り出した。
「私は宮廷魔導士団の団長である、フィオ=ダーテルです。
先ほど、副団長のローから挑まれて、対戦をしました。
負けた方が魔導士団を去るという大事な賭けをして。
結果は私が負けました。
何故か、試合中に痺れが起こり…
しかし、今となってはそんなものは言い訳にもなりません。」
「はぁ…
試合中に急に痺れ…?
何か試合の前などに飲まれたり食べたりされましたか?」
「あぁ、今日は手合わせいただくから、と、紅茶をもらいました。
あぁ、残りがこの水筒に…」
「ちょっと失礼…!」
私は水筒を受け取ると、ぺろりと紅茶を舐めた。
「こ、こ、これは…
附子の毒でございます…!」
「えぇ!?
毒ですって!?」
フィオ様は驚く。
「えぇ、おそらくロー殿はあなたに毒を盛り、それで勝とうとしたのでしょう…」
「なんと!
魔導士の風上にもおけないではないか!」
「落ち着いてください。
この紅茶をロー殿が渡したという証拠が無い、今となっては…
いくら水筒に附子が入っていたとて…」
「そんな…
では、私はこのまま泣き寝入りか…?」
フィオ様はおっしゃる。
「うーん、私に少し案がございます。
向こうが正攻法では無いならば、こちらが礼儀正しく正攻法で挑む必要はございませんゆえ。」
「ほぉほぉ、して、その案とは?」
「まず…
最後の挨拶に来たと言って、彼の家に入り込みます。
そして、トイレを借りるふりをしてください。
さらに、その隙にどこでもいいので部屋に入り、王宮の宝石などを隠します。
これで、宝石泥棒の出来上がり、でございます。
ふふふ。」
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