料理で治す
その日もいつも通りに彩の暖簾を掛け、営業を始めた。
相変わらずだあれも来ない。
客と言えば、ロイス様とフィオ様くらいだ。
その2人も毎日来る訳ではないから、結構暇だったりする。
私は冷蔵庫を開けた。
何か軽く食べようかな?
そう思った時、ドアがガラガラと開いた。
「あら、いらっしゃいませ。」
「ここかよ?
不思議な料理で身体を治すっていう店は?」
「は、はぁ…
あの、貴方様は…?」
「俺はゼンリ=ハルカス。
宮廷騎士隊の隊長だ。」
「それは、それは…
して、ゼンリ様、治して欲しい病があるのですか?」
「あるにはあるが…
俺はアンタを信用してない。
当ててみろよ、俺の病を。」
なんという挑戦だ。
しかし、ここで受けて立たねば、彩の暖簾に泥を塗る、というものだろう。
「分かりました。
少し手を出していただいても?
脈を見ますので。」
ゼンリ様は腕を差し出した。
脈はやや強く速め、か。
「では、舌を出して下さい。」
「こうか?」
舌の苔は白く分厚い。
「分かりました…」
「ほぉ?」
「貴方様は暑邪でございます。」
「しょじゃ…?」
「簡単に言うと、夏バテ、でございます。」
「ほぉぉ!
まさに!
分かるのか!?」
「汗が少し普通の人よりも多いようです。
それに顔が赤い。
それだけでも暑邪の症状と言えますが、さらに、脈が速く、舌の苔が白っぽく分厚めでございました。
これは、完全に気と水分を消耗している夏バテの症状でございます。」
私は説明する。
「おぉー!
素晴らしいな…!
宮廷医師でも当てられなかったものを…
して、治す方法はあるか?」
「ございます。
薬膳は即効性はございませんが、何日か通っていただければだいぶ改善するでしょう。」
「それはありがたい。」
「では、薬膳を作りますので、少々お待ちください。」
彼は頷いた。
エメラルドの瞳が印象的な好戦的な感じのする美形であった。
私は料理に集中する。
白出汁を水で割って、出汁汁を作る。
温めずに常温か冷たいままなのがポイントだ。
それから、梅をつぶして、紫蘇を刻み、茗荷を切る。
それらを、冷やご飯の上に載せて、最後に上からだし汁をたっぷりとかける。
出来上がりだ!
「お待たせしました。
梅しその冷やし茶漬け、でございます。」
「ほ、ほぉ…?
見た事も聞いた事もない料理だが…」
そう言ってゼンリ様はスプーンで梅と紫蘇とご飯をすくって食べた。
「んんん!!!
こ、こ、これは…!?
なんという爽やかな刺激!?
酸っぱさの中に出汁の香りが染み渡り…!
うまい、うまいぞぉぉ!
いくらでも食べられる!」
そして、ゼンリ様は金貨1枚を置いていかれた。
無銭飲食はロイス様だけか…
どうでも良い事が頭をよぎった…
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