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侯爵様の悪役令嬢(自称)  作者: 杉野みそら
第十四章

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侯爵様の抱擁

本気で怒ったエルドの心境は……

「帰れ」


 侯爵様のその一言で、令嬢は弾かれたように身を震わせた。その場に立っているのもやっとの様子で……


「も、申し訳……ありません……」


 そう言うと、令嬢はほとんど逃げるように去っていった。


 ぱたぱたと急いで遠ざかる足音と共に、中庭に再び静寂が訪れる。


「ッはーー!びっくりした!」


 私はやっとまともに呼吸(いき)ができた気がした。だって今の侯爵様、本当に怖かったんだもの!


「もう!侯爵様いきなり本気で怒らないでくださいよ!私はあんなことしょっちゅう言われてるし、慣れてるし……」


「……ルシア」


 侯爵様が言葉を遮るように私を呼び、あっという間にその腕の中に私を抱き込んでしまった。


 侯爵様相変わらずいいにおいがする……


「すまない。ルシアを悪く言われてカッとなった」


「……侯爵様ったらそんなことで怒らないでくださいよ。それにさっきも言った通り私は言われ慣れてーー」


 言いかけた途端ーー

 ぐい、と顎を掴まれて、唇を奪われた。まるでその先を聞きたくないかのように。


「んっ……」


 侯爵様……


「……私が、嫌なんだ。ルシアのことを悪く言われるのは……耐えられない」


 ぎゅっと、私を抱きしめる腕に力がこもる。


 ーー侯爵様、私のために本気で怒ってくれたの?本当に??


(……嬉しい、侯爵様……)


 今まで私のために本気で怒ってくれた人なんていなかった。だけど侯爵様は……


 ぎゅ……


「ッ、ルシア……」


 私はもう何も言わなかった。代わりにその大きな背中を抱きしめ返した。


 *


 数時間後、私たちは本邸の中庭でお茶とお菓子を嗜んでいた。


「ところで侯爵様!先程はご令嬢と何の話をしてらしたの??お二人とも神妙な面持ちだったけども」


「ゴファ!!」


 侯爵様はフウカが注いでくれた紅茶を盛大に吹いた。

 何故かフウカも一緒になってズッコケた!


「お、お嬢様……それはまたの機会にお話ししましょ?エルド様は大人なんですから色々とありますよ」


「私も大人よ!」


「あ、そういえば私は少し残していた仕事があったのだ」


「あっ、侯爵様!!」


 そう言って侯爵様は光の速さで逃げた。


 どさくさに紛れてフウカも居なくなってるし。


「もう!一体何なのよ!!このサンドイッチ私が食べちゃうわよ!!」


 エルド侯爵とご令嬢が何を話していたか。その内容はエルドによって箝口令(かんこうれい)を強いられ、ついぞルシアは知ることがなかったのである……

エルドと令嬢は一体なんの話をしていたんですかねぇ?(すっとぼけ)

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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