エルドとルシア
ルシアは誘うように、挑むようにエルドを翻弄する。
そんな中エルドはついに……
(……面白い)
エルドの口元がわずかに歪む。
(これが……カルミナートの踊りか)
理性ではなく、本能に訴えかけてくる。
逃げるな、と。
見ろ、と。
感じろ、と。
ルシアはもう一歩踏み込み、エルドの体を引き寄せる。
音楽が激しくなる。
距離が消える。
視線が絡む。
観客の誰もが息を呑んでいた。目の前で行われているのが、ただの舞ではないと分かっていたからだ。
これは命そのものの踊りだと。
「……」
「ーーさあ」
ルシアは囁く。
「踊りましょう?」
その瞬間。
エルドの中で何かが切り替わった。
「……いいだろう」
エルドは低く答え、銀色の瞳にギラリと光が灯る。
次の一歩で。
主導権を奪い返し、ルシアの体をぐっと引き寄せる。
「ぁっ……!」
ルシアは小さな声をあげた。目の前の男がようやく本気を出したことを本能で悟る。
エルドの胸、腕、引き寄せる手……それらが全て熱く、ルシアを見つめる瞳は、逃がさないと言っているようだ。
だがルシアは、逃げない。
むしろーー
口端が弧を描き、楽しそうに笑う。
「そうでなくては」
その笑みは、どこまでも艶やかで。
どこまでも挑戦的な目で。
クライマックスではいつのまにか手拍子が巻き起こっていた。
二人には二人しか見えていない。
まるでエルドとルシアしかこの世界に存在しないかのように。
エルドが片手でルシアを軽々と抱き上げる。ルシアはそれに応えるようにエルドの目を見つめる。
姿勢は崩さず、脚元のステップはそのままに。真っ赤な薔薇はいつのまにかエルドの手に渡っていた。
エルドはルシアの腰を力強く引きつける。
視線はルシアから離さない。逃がさない。
「……ッ……」
息を乱さず踊っていたルシアが、思わず小さな吐息を漏らす。
音楽の最後にエルドはルシアを華麗に抱き上げたかと思うと、ルシアの腕を持ち上げ、ルシアはエルドを、エルドはルシアを見つめたままダンスが終わった。
割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こる中、二人は曲が終わったあとも見つめあっていた。
いつまでも、いつまでも……
最後まで読んで頂きありがとうございました。




