63.ちゃんと目を見て話そう。
翌日の朝稽古。
「もっと腰を低くですっ!」
「そんなこと言われても...うわぁっ(スルン)」
ヒューン...
「落ちるぅぅぅぅぅ(涙目)」
「旋風っ!」
ブウォン...スタン
「た、たすかったよ...ありがとうカレン」
「また落とされちゃったねー」
グリフォンに乗る訓練。
フィオも一緒に乗らないとご覧の通り。
「一緒に乗りましょうか?」
「い、いや大丈夫。もう少し頑張るよ」
一緒に乗ることを避けているのは
彼女の神技的な操縦が原因ではない。
一人乗りのサイズに二人で乗ること自体が
近過ぎるというか...掴まるところに困るというか...
色々と問題があるからである。
「ではもう一度。頑張ってください」
「行くぞっ!えいっ(ググッと手綱を引く)」
バサバサ...キ...キエェェェェ!!!
急発進するロングリフォン。
操縦が効かないし敷地の外まで出てしまった。
(ヤバい...落ちても助けてもらえないじゃん)
「おいっ!落ち着けロングリフォン!」
「やめろやめろやめ.....うわぁぁぁぁー!!!」
上空で大きく一回転。
もちろん俺はなす術もなく......
ヒュウーン
「誰かたすけてぇぇぇぇ!」
ヒュウー
「飛行魔術専攻すればよかったぁぁぁ!」
ヒュー
(終わった。俺...勇者になりたかったな......)
スタッ!
ピピッ...ピピィ...バサバサバサ
(テメェコノヤロウ...)
一瞬であったが走馬灯を見た気がする。
何事もなかったかのように背中でキャッチされ
その場に不時着した。
追いついたフィオとカレンが駆け寄る。
「レオ大丈夫だったー?」
「出る時に少し綱を引き過ぎましたね」
顔面蒼白。
絶対ワザと落としただろコイツは。
「それはわかりませんが大丈夫ですよ」
「ガチャの子は始めから契約されていますので」
契約された魔獣が襲いかからないのと同じで
飼い主に危機が迫ると身を呈して助けるらしい。
「でもさっきは助けに来なかったよー?」
「地面に落ちる寸前まで様子見していたのか...」
正直コイツのことが嫌いになりそうだ。
「もっとグリフォンのことを信頼してください」
「勿論あなたもですよ?ロングリフォン」
「ピピッ...ゴ...ゴキゲン...ヨ...」
気まずい空気を察したのか
最近覚えた“ゴキゲンヨウ”で誤魔化そうとしている。
「ちゃんと目を見て話しかけるようにしてください」
「それがコミュニケーションの基本ですから」
そういえば毎日“お話”しているカレンのことは
噛まないし比較的言う事を聞く。
俺は彼女に倣って言葉を教えてみることにした。
「今日から新しい言葉の勉強だぞ」
「こ、ん、に、ち、は。こんにちは」
これは語呂が良い。
オハヨウ...ゴ、ゴキゲン...ヨ、コンニチ...?
ほらイケそうな感じ。
「ピピッ...コ...コンニチ...ゴ...」
「コ...コハヨウ...ゴ...」
言えそうで言えない残念な感じが面白い。
それに俺の声を一生懸命聴き取ろうとしてくれて
なんだかアイツと少し打ち解けた気がした。
「さあ、そろそろ“ポッケ”に戻って」
ピピッ.....カプッ!
(痛ったぁぁぁぁ!.....くはないんだよね)
いまのはちょっとした甘噛みである。
加減が出来るようになったのはかなりの進歩で
トコトコトコ...シュポッ
“ポッケ”にも自分から入るようになった。
「レオなにみてるのー?」
「うーん...どうしようかなって」
この前買ったばかりなのに
もう使えなくなってしまった空の鳥かご。
嬉しいはずなのになぜだか少し寂しい気がして
子育てってこんな感じなんだろうなと思った。




