43.感謝祭を楽しめない。
「じゃあそろそろ行くよ」
「今日もお祭りに行かれるのですね」
フィオは羨ましそうにそう言った。
今年も感謝祭には行けそうもないからだ。
「“報告・連絡・相談”といつも注意するのですが...」
自分で勝手に安請け合いした雑誌の連載を
彼女に伝えないまま自分も忘れてしまい
今週末までに提出しなければならないらしい。
他にも色々と仕事を抱えているのに...
「まぁ、よくあるミスってやつだよねぇ...」
「それが命取りになる事だってあるのですよっ!」
本気で怒られてる。大人なのに。
責任感の強い彼女は他人に迷惑をかける事が大嫌いだ。
親父の家系はこれだから...フィオが可哀想。
「ちゃっちゃと片付けて今年は連れてくからさぁ...」
「............(フィオ、疑いの目)」
「............(ウィンディ、真似して疑いの目)」
「なっ、なんだよぉ〜!そんな目するなって二人とも」
せっかくなので感謝祭最後の日曜日に
みんなで一緒に行こうと誘った。
「それまでには絶対に終わらせてよ」
「ハハッ。レオナルドも言うようになったなぁ〜」
俺は半分、今年も一緒には行けないだろうなと思った。
ガチャの召喚者から離れられる範囲はおよそ2km。
魔力の大きさや特殊なアイテム使用などで違いはあるが
基本的にはそんな感じ。
カレン曰く
大きな声で「コラッ!」って怒られた時みたいに
身体がビィーンと萎縮してしまうそうで
それ以上遠くへは行きたくなくなるのだという。
だから遠い所へ出かけるには必ず保護者同伴。
フィオだけを感謝祭に連れ出す事は出来ないのだ...残念。
「大丈夫です。必ず間に合わせますので!」
フィオが早速プラン立てて伯父に指示を出す。
(これじゃどっちがマスターかわからないよな...)
まるで夏休みの宿題が終わらない子供のように
ヒィヒィ泣き事を言いながら仕事を進めるのであった。
彼らを残して俺達は今日もお祭り会場へ。
今日は遊びに来たわけじゃなくて
頼まれ物とプレゼントを買いに来たのだ。
「えぇっと...ウミブドウのパウンドケーキと...」
「ホッキョクモグラの缶詰...(美味いのか?コレは)」
母さんから手紙が来ていた。
少し離れた村に住んでいる彼女は
毎年欲しい物を買ってきてと俺にお願いをする。
この街の感謝祭は規模が大きくて毎年大人気。
各地から珍しい食べ物や飲み物、雑貨などが多く集まる。
ケニーの店から送れば簡単だけれど
俺は顔を出しついでにいつも直接届けに行っている。
......お小遣いもくれるし。
「ウミブドウのケーキ、売り切れてる...」
悲しい。
毎年買っていたのにタルトしか残っていなかった。
「今年のブドウは特別甘くて美味しいよ〜!」
「ただ海水温が高いから収穫量が少なくてねぇ...」
そういえば難しいニュースで“ヒドラ”の大量発生による
温暖化が問題になってるとか言ってた。
竜というより蛇の見た目をした炎タイプの厄介な奴で
上級だから討伐は中々難しいのだ。
「じゃあ、タルトを貰うよ」
「はい、毎度ありぃ〜」
仕方がないので1ホール買って帰った。
日持ちするから初日に買っておけばよかったな...
家に戻って明日の準備。
カレンは“ボンゴリジャーキー”を急いで作っている。
初めて会うから贈り物をしたいのだという。
「喜んでくれるかなぁー?」
「きっと喜ぶと思うよ」
彼女によると明日の天気は晴れ。
午後から風が強く吹くというので早めに出かける予定。
ひさしぶりに会う母さんの喜ぶ顔を
ボンヤリと思い浮かべながら眠りについた。




