29.ピンチの後にはチャンスあり。
開始から6日。
討伐イベントは予定通り完遂終了した。
他には特にバグ等は無かったらしい。
じゃあ一体アレはなんだったのだろうか。
運営は一連の事態を調査中とのことだったが
それからまだ連絡は来ていない。
ウェザー...いや、カレンはというと
もうすっかり体調は良くなり
ピッピィ達を実体化させて遊んで...っておい!
「ダメだって!まだ魔力は完全じゃないんだから」
「平気だよー。ねぇピッピィ?」
教授は控えるように言っていたが...まあ、いいか。
あんなに頑張ってくれたのだから
少しのワガママくらい聞いてあげたい。
ピッピィ...ピッピィ...ピッピィ...ピッピィ?
...カチャッ
ノックもなく部屋の扉が開く。
「やあ君たち。体調はどうかね?............はぁ!?」
(...ピッピィ達は空気を読んで、踊るのをやめた)
「君ねぇ!僕が言ったこと聞いてた?言ったよね?」
「病み上がりなのわかってるよねぇ!?」
大声に怖がるピッピィ達。
俺も怖い。
「まったく。今時の子供は人の言う事を聞かない...(ブツブツ)」
「そんなに魔力は食いませんし、別に良いのでは?」
ブルームがそう言って俺とカレンを庇うと
教授は渋々矛を収めた。
「それに残念ですが教授、教授も似たり寄ったりですよ」
「ブルー!君はボクの事を子供だというのか!」
「ええ、まあ、度々そう思います」
彼が「はぁ!?」って顔をしてブルームの方を見るが
そう答えた彼女の目はマジだった。
片手で軽く頭を掻くと、気まずそうに診察を始める。
精霊は曲がった事が嫌いな生き物なので
自分の意見を手加減なくズバッと言うタイプが多い。
ぐうの音が出ない程の正論に反論が出来ないから
教授も伯父も黙って従うしかないのだ。
「いいね。じゃあもう帰って」
診察が終わるとそう言い放ち部屋を出て行った。
「すみません...ああ見えて本心は違うので」
「大丈夫です。こっちが迷惑かけたのは確かだし...」
ブルームの分析によれば
彼は思考回路の殆どを研究に費やしているせいで
人と上手く接する事が出来ないらしい。
本当は何度も様子はどうだったか報告させたり
俺の事もずっと心配していたそうで
“悪気はないから誤解しないで”と言っていた。
なんだ、すごく良い人じゃん。
それから俺達は明日帰る為の準備を始めたのだが
急にカレンが変な事を言い出した。
「レオ、ガチャを回さないの?」
何故そんな事を言うのだろう。
あれからとてもそんな気分にはなれない。
「いいから回して!」
「ピンチの後にはチャンスありだよっ」
彼女はそう言ってニッコリと笑った。
とりあえずと運営がよこした“詫び石”があったので
1回分だけど試しに引いてみる。
“Grand Challenge System Assign”
ブウォン...
シュゥワァァァン...シュウィーン
青白い光の粒が高速回転しながら様々な色に変わり
最後にバチバチッと火花が散った。
フォウン... “純白のローブ“
「わぁ〜!すっごーくかわいい〜!」
ウェザ...いや、カレンが歓声を上げる。
綺麗な刺繍模様が入っているから女性用かな?
この前の戦闘で魔装束じゃない彼女の服は
ボロボロだったから丁度良い。
「着替えるからあっち向いてて」
(ってうわぁ...ここで着替えるのか...生々しいな...)
ガサゴソガサゴソ...
「はい!もういいよ〜」
振り返るとより女神っぽくなった彼女がいた。
魔術師系でガントレットとかは似合わないけど
これはこれで凄く強そうに見えた。
まさにピンチの後にはチャンスあり。
カレンの喜ぶ顔が今の俺には何よりも嬉しかった。




