28.君の名前。
翌日の朝。
食事が喉を通らない。
まだあの時の精神的ダメージで
とても食べる気にはなれなかった。
そんな俺を見て心配したブルームが
シビレ草のお茶を出してくれた。
「これは野生のシビレ草だから」
「市販の物とは比べ物にならない位効くわよ」
...ゴクゴクと飲んでみせるブルーム。
飲み物ならなんとか口にできたので
美味しくないが栄養満点のそれを一気に飲みこむ。
「........ゴ、ゴァァァァァ!!!!」
まるで攻撃を受けた魔獣のような声が出た。
(ま、、、まずい!)
(俺がいつも飲んでるやつとは桁違いだ...)
「どう?もう一杯」
クスクス笑いながら勧めてくる。
とても二杯目は飲めない味であった。
野生を甘く見てはいけない。
「ちょっとは元気になったかしら?」
なんてヒドイ人(精霊)なのだと思ったが
ずっと自分の中で思い詰めていた事を
一瞬でも忘れさせようとした
彼女の優しさなのだと後から気付いた。
こんなに騒がしくしていても
ウェザーはまだ懇々と眠り続けている。
時々ブルームが様子を見たり
薬を飲ませたりと世話をしてくれているが
解毒にはもう少し時間がかかりそうだ。
何も出来ないまま時間が過ぎる。
戻らぬことを心配されないように
伯父と職場宛にはメールを送っておいた。
忙しい時期に無理して休みをくれたのに
ケニーには本当に申し訳がない。
“ゆっくり帰って来ればいいから”と返信が来た。
あと、“すごく心配している”とも。
まだ時々うなされているが
青白かった顔色は昨日より大分良くなっている。
(もう少し。もう少しだから.....)
聞こえているかは分からないけれど
ずっと隣で励ましていた。
........それから数日後、彼女は目を覚ました。
「おはようウェザー」
「おはようございます...レオ」
いつものように朝の挨拶を交わす。
何事もなかったかのように。
そして俺は “ありがとう” と彼女に言った。
それとー
「これからもよろしく。カレン」
そのブロンドの髪が
いつかのように朝日で輝いていた。
君の名前は “カレン”
異国の言葉で儚くて美しいという意味を持つ。
彼女は少し間を空けてから返事をした。
それが自分の名前なのだと。
綺麗なその瞳から大粒の涙が溢れる。
それはとても嬉しいからだと笑顔で言った。




