151.塩漬け肉のスープ。
ヒク...ヒク...
カレンはもう一度両手で涙を拭ってから
俺を避けるように船内へと降りた。
原因はこれといって思い当たらないままだが
ひとまずカレンの後を追う。
スタスタ...
「どうしたのカレン」
「悩みがあるなら話聞くけど」
スタスタスタ...
「俺が原因なの?それとも他の誰かに何かー」
「・・・・・・」
バタンッ.....カチ...
内側から鍵をかけて部屋に篭るカレン。
(何か好きなものでも作ってあげよう)
これ以上深追いする訳にもいかず
俺は夕飯を作りに給仕室へと向かった。
♢飛空艇の厨房
「塩漬け肉があったよな...コレか」
ゴト...
カチチッ...ボゥ...
出発から数日。
食材も少なくなってきたが
缶詰や乾物などの保存食でやり繰りしている。
普段は食べないけれど時々食べると妙に美味い。
コトコトコト...
まずは大鍋に半分ほどのお湯を沸かしてから
前にバナナ売りから貰った高級塩漬け肉と
残った野菜を一緒に煮込むこと1時間。
旨味と塩分がスープに溶けて丁度いい具合に。
(視線を感じるのだが.....)
扉の丸窓からヒョコヒョコと見え隠れする金髪。
あれで様子を伺っているつもりなのだろうけれど
気配はダダ漏れである。
「ご飯にするよカレン。手伝ってくれる?」
「うんっ!お皿はこれでいいかな〜」
(さっきまでのアレはなんだったんだよ...)
特に変わった様子もないし
平然を装っているようにも見えない。
「どうかしたのレオ?」
「いや.....なんでもないよ」
「俺まだかかるから先にこれだけ出して」
ガッラガッラガッラ...
乗せた大鍋を波立たせぬよう
用心深く台車を押し進めるカレン。
(ゆっくりね!とは言ったけどさ...ふふっ)
女神らしからぬ几帳面さだが
その姿に俺は少しばかり安心して
残りの献立を仕上げに戻った。
...ただの杞憂なのだと
ダッダッダッ!
「おいレオナルドッ!」
「え...な...まだ作ってる途中だからー」
「いいから早く来い!なんとかしろっ!」
慌てた様子で現れたラファエル。
ガシッと腕を強く掴むと
引きずるような勢いで俺を連れ出した。
♢夕飯の並ぶダイニングテーブル
「連れてきたぞっ!」
「なんだよ急に...(腕痛いし)」
バンッ!
ラウンジの扉が開くと
塩漬け肉スープの良い香り
そして...なんだこの...
「おや、メインディッシュが来たではないか」
なんだこの状況は...
グシっと心臓に突き刺さるような
ズゥンと重力が部屋を包んでいるような
本能的にヤバさを感じる。
それを発しているのは他でもない
「カレン...どうしたんだよ...」
「聞かれておるぞ?余が応えてもよいが」
挑発するようにスープ匙を向ける女神と
燃えるような目で殺気を放つ女神。
後者は無言で睨み続けている。
「おおこわいこわい。親切心で言うたのに」
そうは見えない余裕を放ちながら
本日のスープに舌鼓を打つイルジオネ。
こいつだ...原因はこいつに違いない...
「ほう...それは言われなき中傷よのう」
彼女が目線だけ俺に向けて微笑むと
笑顔とは裏腹に殺気がヒシヒシと突き刺さった。
(ヤバイ筒抜けなの忘れてた...)
それを見たカレンが彼女に襲いかからんとしたが
最悪の事態は突拍子もなく断たれた。
バシャァァァ!!!
「落ち着きなさいウェザー」
「女神様も悪ふざけが過ぎますっ!」
この異様な重力に誰もが動けなくなる中
エマはテーブルに置かれた水差しを手に取ると
カレンの頭にぶちまけたのだ。
途端に張り詰めていた何かが解けていく。
それと同時に彼女はまた泣き出してしまい
俺は自分の至らなさに唇を噛んだ。
♢喧騒の後
「猫の喧嘩は水をかけろと祖母が」
「でもそれ猫の話だろ?」
ケタケタと笑うラファエル。
沈黙のまま座るカレンとイルジオネ。
床を拭くレイナとミッチェルさん。
俺は何をどうしたら...
「ご無礼を陳謝します」「よい」
水差しの水は女神にも幾分かかったが
彼女はエマを咎めることもなく
平然とコーヒーを片手に本を読み始めた。
...怒ってないみたいで良かった。
パタン
「余らに逆ろうて自身がどうなると構わぬと」
「お前とその娘とでは覚悟が違うわ」
俺の脳内考察は例のごとく筒抜けな訳で
不機嫌そうに口を挟んだイルジオネ。
止められなかったのは止められる自信のなさ故。
そもそも殺気を放っていたのはカレンであり
恐れは普段と違う彼女に対してである。
「最悪罰せられる覚悟ではありましたが...」
エマが女神の喧嘩を仲裁できたのは
それらを受け入れていたからだ。
「似た者同士よのう...好かぬ」
「もう云うても良いな?」
カレンは俯いたまま小さく頷くと
席を立ち部屋から出て行った。
更新が大幅に遅れてしまい...すまない...
いや、本当にすみませんでしたm(_ _)m
ジャンピングスライディング土下座で謝ります。
※追伸 剣アストルフォが来たぞ!ヒャッホウ!!
(すみません反省します反省します反省します反省しま)




